ソフトバンクが“1年で実質12円”の購入プログラムを作った背景 約1年前から入念に準備も、厳密な運用は困難:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2023年12月27日に電気通信事業法のガイドラインが改正されたことに伴い、ソフトバンクが新たな端末購入プログラムを導入した。「新トクするサポート(バリュー)」は、1年で端末を下取りに出すことで実質価格を抑えることが可能になるプログラム。同社がこのプログラムの仕組みを検討し始めたのは、1年前にさかのぼるという。
10万円前後の端末を買いやすく、対象モデルは入れ替えも
新トクするサポート(バリュー)に指定する端末は、本体価格が10万円前後のものが多い。これは、「端末価格と最大4万円の割引を最大化できるのが、そのライン」だからだという。郷司氏によると、「8万円以上から10万円近辺の端末は、バリューの設定がしやすい」という。下取り価格に最大4万円の割引を載せると、実質価格が1万円以内に収まりやすいということだ。
逆に、20万円を超えるような最上位モデルに関しては、「4万円の規制がある中でバリューにすると、かえって割高になってしまう構造がある」。これは、「スタンダードで販売するより、最初の1年の価格が上がってしまう」からだ。「ProシリーズのiPhoneはなんとかバリューに近づけたい」としているが、現状の本体価格では、なかなか実現が難しいという。
また、1年後に後継モデルが出ないと、ユーザーが不本意な機種変更をせざるをえなくなる。こうした事情もあり、新トクするサポート(バリュー)には、コンスタントにモデルチェンジする端末を意識して選定したという。ただし、新トクするサポート(バリュー)に指定する機種は、「試行錯誤しながら変えている」という。実際、開始直後は1年前のモデルになるiPhone 14(128GB)が対象だったが、1月にこれを最新のiPhone 15(128GB)に変更した。これは、「お客さまのニーズを聞き、やはりiPhone 15のようなヒーローモデルの方がいいと判断した」からだ。
逆に、iPhone 14のような「N-1(1年前に発売されて現役のモデルを意味する業界用語)と呼ばれるモデルは、スタンダードの方がなじみやすい」という。先に述べたように、Xiaomi 13T ProやPixel 8などのモデルも、現在は新トクするサポート(バリュー)から外れている。
実質価格をほぼ維持できたとはいえ、ユーザーは機種変更のサイクルを1年に早める必要が生じる。一方で、端末の買い替えは「長期化しているトレンド」だ。短期での機種変更が必要なことが、「ネガに映るお客さまもいる」。全機種を新トクするサポート(バリュー)にせず、「バリューとスタンダードを分けて投入したのは、そのため」だ。郷司氏は、「今までプロモーションも含め2年でやってきたこともあり、15〜20%ぐらいのお客さまは早すぎると思わないのではないか」と語る。
新トクするサポート(バリュー)導入後の動向として、「8割ぐらいのお客さまには、抵抗なくご購入いただけていると聞いている」。郷司氏は「円安の影響もあり、端末の価格がどうしても上がってしまう傾向があり、ある程度のハイエンドモデルだと10万円を超えてしまう。その中でも、(購入の)障壁を下げる効果がある」と語っており、ユーザーからも一定の評価はされているようだ。
とはいえ、これでガイドライン改正前の売れ行きを維持できるかは未知数。郷司氏は、「現時点では判断が難しい」という。2023年12月に、ガイドライン改正が大々的に報じられ、「駆け込み需要が結構なボリュームであった」からだ。「その反動が1月から出ており、現時点でも影響が残っている」という。その一方で、「当初、このぐらいまで落ちるかもしれないと見ていたラインよりはポジティブな結果が出ている」としており、新トクするサポート(バリュー)を導入した成果が出ていることもうかがえた。
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