LINEMO新料金プランは“楽天モバイル対抗”を強く意識 ただし経済圏やLINE連携には課題も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクは、オンライン専用ブランド「LINEMO」の料金プランを7月下旬に刷新し、「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を開始する。LINEMOをテコ入れし、他のブランドと差別化する狙いがある。同時に、楽天モバイル対抗も強く意識した料金体系に仕上げてきた。
経済圏をどう生かすか 課題が残るLINEMOのサービス連携
もっとも、楽天モバイルには、Rakuten Linkを介した音声通話やSMSが無料になるサービスがあり、この点を加味するとLINEMOベストプランの方が料金は高くなる。また、LINEMOベストプランには10GBを超える設定がない。LINEMOベストプランVを選ぶ手もあるが、こちらは少々割高。楽天モバイルの場合、20GBを超えると3278円で無制限になるため、LINEMOベストプランが全てのユーザーにピッタリとは言い切れない。
これに加え、楽天モバイルは、家族割引や若年層へのポイント還元プログラムを充実させている。「最強家族プログラム」を適用すると料金は各容量帯で110円下がり、LINEMOベストプランを下回る。LINEMOベストプランが“最安”になるのは、あくまで1人で契約した場合という限定条件がつく。逆に言えば、LINEMOは、単身で契約しており、かつ比較的データ使用量の少ないユーザーを奪おうとしていることが分かる。
通信以外では、SPU(スーパーポイントアッププログラム)で楽天市場のポイント還元率が4%上がる楽天モバイルに軍配が上がる。6月からは楽天ペイと連携した新規ユーザー向けのキャンペーンも展開するなど、さまざまな特典を多数用意している。楽天グループの巨大な経済圏を生かし、楽天モバイルの魅力を高めているといえる。
経済圏がないのは、LINEMOの弱点にもなっている。もともとLINEとの連携を売りにしていたLINEMOだが、先に挙げたように、LINEMOベストプランVではスタンプの特典もなくなってしまった。同じソフトバンクでも、ソフトバンクやY!mobileは「LYPプレミアム」が無料でつく。また、ソフトバンクではPayPayでお得になるクーポンが手に入ったり、PayPayの還元率が上がるペイトクを主力にしていたりと、自社グループのサービスを上手に連携させている。
LINEギガフリーや6カ月間のLINE MUSIC無料がこれに相当するものの、LINEらしさは希薄だ。グループであるYahoo!JAPANやPayPayなどとの連携もなく、LINEの名を冠しているのとは裏腹に、より“土管”に近い通信サービスになってしまっている。この点を問われた寺尾氏は、「LYPプレミアムをLINEMOに導入することを検討している」と語る。LINEスタンプ プレミアムをLINEMOベストプランVから外したのは、そのためだという。
LINEMOなどの通信サービスを通じて「LINEなり、PayPayなりにアクセスしていただくことは、われわれにとっても大きい」(同)。ただし、LYPプレミアムはまだ検討の段階。「そのまま(ソフトバンクやY!mobileと同じ形で)入れるかどうかは分からない」(同)とする。とはいえ、ソフトバンクやY!mobileと特典が同じでは、差別化にならない。LINEMOならではの、工夫したサービスが求められそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
LINEMOの新料金プランに「10GBまで」を加えた理由 20GBは値上げだが「ほとんどのお客さんには値下げになる」
ソフトバンクが、オンライン専用ブランド「LINEMO」の新料金プランを7月下旬以降に提供する。10GBまでの「LINEMOベストプラン」と30GBまでの「LINEMOベストプランV」の2つを用意。ソフトバンク 専務執行役員 コンシューマ事業推進統括の寺尾洋幸氏が、新料金プランの狙いを説明した。
LINEMOの新プラン、当月解約で990円の解除料、ソフトバンクやY!mobileへの導入も検討
ソフトバンクは、7月下旬以降に提供するLINEMOの新料金プラン「LINEMOベストプラン」にて、加入当月に解約した場合、契約解除料として990円(税込み)を設定する。「意図しない形での契約が増えている」ため。ソフトバンクやY!mobileでも同様になるよう検討しているという。
新料金「LINEMOベストプラン」発表 3GB以下で990円、3〜10GBで2090円 5分以内かけ放題とのセットプランも
ソフトバンクは6月6日、オンライン専用ブランドLINEMO(ラインモ)の新料金プランとして、「LINEMO ベストプラン」と「LINEMO ベストプラン V」を発表した。7月下旬以降から提供する。ベストプランは、データ使用量が10GBまでの場合で、最安をうたう料金プランだ。
Y!mobileも主戦場は20GB、楽天モバイル対抗の側面も 新料金プランの狙いを読み解く
Y!mobileの新料金プラン「シンプル2」は、S/M/Lの3本立てにした料金体系は変えず、トラフィックのトレンドに合わせてデータ容量を増加させた。実質値下げともいえるが、割引サービスへ依存度は増している。他社対抗の意味合いも強く、楽天モバイルも意識していることが分かる。
値上げだが、PayPayでお得になるソフトバンク新料金「ペイトク」 ただし“無制限”プランには疑問も
ソフトバンクが大容量を改定し、新たに「ペイトク」を提供する。選択したデータ容量に応じて、PayPay決済時の還元率が最大5%までアップ。一方で「無制限」と銘打つプラン名には疑問も残る。


