IIJmio“長期優遇施策”の狙い 「新規ばかり優遇」からの脱却、旧プランからの移行は課題か:MVNOに聞く(3/3 ページ)
ガイドラインの改正に伴い、IIJmioで長期ユーザー向けの優遇施策を導入。端末割引や家族割引などを受けられる。既存ユーザーからは「新規ばかり優遇している」ように見えており、実際にそうした声が挙がっていたという。
ギガプランの方が安いのに、いまだ旧プランを使い続ける人も
―― ファミリーシェアからの移行を促進する狙いもありそうですが、今どのぐらい残っているのでしょうか。
亀井氏 プランごとの細かな内訳は出していませんが、旧プランがまだ10数万ほど残っています。その3割、4割ぐらいがファミリーシェアプランです。既に受注停止にはしていますが、SIMの追加やプラン変更はできます。クローズしたい気持ちはあるものの、ファンもいてそれもなかなか……。
―― でも、金額的にはギガプランを複数回線持った方が安いですよね。
亀井氏 安いです。ただ、お手続きが面倒というだけなのだと思います。実際、私の友人でもいますが、「何で変えてくれないの?」と聞いたら、最初に手続きしたときで十分安かったから……と言われてしまいました(苦笑)。
矢吹氏 自分自身もそうですが、電気が自由化したときに、調べれば調べるほどよく分からなくなってしまい、結局、今でも東京電力から変えていません(笑)。果たしてそれに変えると、自分の家の電気代が安くなるのかが分からなかったからです。多分、これは業界全体の問題なのかもしれませんが、携帯電話も結局どれだけ安くなるのかが、分かりづらいのではないでしょうか。MVNOの場合、昼の品質問題はありますが、料金は確実に安くはなります。その中での比較となると、結局どれがいいのとなってしまうのかもしれません。
家族での契約やSIM発行手数料の無料化で解約抑止につなげる
―― 最後の長期利用特典は、ガイドラインで昨年までできなかったことですね。
亀井氏 はい。ただ、ギガを配れと言っても、3GB、4GB、5GBと出すわけにはいかないので、ちょっと足りないときに使ってもらえるようなものを考えました。これをきっかけに上のプランにしてもらいたいと欲を出してもよかったのかもしれませんが、それはないかということで今の形になりました。
オプションサービスの割引も以前はありましたが、これも今回はなしにして、手数料の割引やギガの付与に絞っています。
―― 初期費用の割引というのは、これをフックにして家族での契約につなげるという狙いもあるのでしょうか。
亀井氏 はい。まだまだ複数回線契約は少ないですからね。契約を家族内で分けているのかもしれませんが、ギガプランの4分の1程度しかいません。ちょっとずつ増えてはいて、アプリでシェアしやすいようにもしていますが、長期利用特典が切り替えるきっかけになればと思っています。今後は、訴求の仕方も変えていきたいですね。
―― 大手3キャリアでは家族で契約があると解約を抑止できるという話がありますが、これはMVNOも同じでしょうか。
亀井氏 ありますね。IIJmioでも、光回線をご契約している方の解約率は低くなっています。
―― SIM交換や再発行手数料も無料ですが、これはeSIMへの機種変更を想定しているのでしょうか。
亀井氏 はい。再発行時のSIMプロファイルの発行手数料は220円や433円かかりますが、音声通話SIMから音声eSIMへ形状変更するようなときの2200円が無料になります。これがあると機種変更のときに、他社に行ってしまうきっかけになるからです。eSIMに変えたいという人から2200円取るのはちょっと違うのではないか。こういうものがあれば、長く使っていただけると思います。
―― 既に端末の優待は実施中ですが、家族割引は秋、長期利用特典は冬と、時期がずれています。これはどのような理由でしょうか。
亀井氏 家族割引は4月からキャンペーンをやっていたのですが、すぐに始めるとかぶってしまう人が出てきます。キャンペーンからサービスへと切れ目なく続くようにしたかったので秋になりました。これが家族割引の事情です。
手数料無料やギガの付与は、開発の順番的なことが関係しています。家族割をするにあたっては、矢吹が申し上げたように名義変更をきちんとできるようにしたいということもありましたが、プロモーションの観点で、先にお伝えしています。
矢吹氏 開発の関係もあってリリースのタイミングは異なりますが、お客さまにどう還元していくかをストーリーでしっかり見せたいことが背景にあります。長期特典は慎重に作らないと誤ったルールを適用してしまうミスもありうるので、そこはしっかり時間をかけて作ることにしました。
取材を終えて:解約抑止の効果は期待できるが、改善してほしい点も
既存契約者への優遇が可能になったことを受け、端末割引や家族割引を3点セットとして打ち出したのがIIJmioご愛顧感謝特典だ。端末割引や家族割引は以前のガイドラインでも実現可能だったが、あえて長期利用特典の再導入とタイミングを合わせて認知度向上を図っていることがうかがえる。新規契約の獲得を増やすほどの大きなメリットはないものの、ユーザーの定着を促進し、解約率を下げる効果はあるはずだ。
ただ、家族割引が同一支払いのグループだけという点はやや気になった。共働きの家庭などで、同居しながら携帯電話代の支払いを分けているケースもある。矢吹氏も話していたように、この点は課題の1つといえそうだ。クーポンに関しても、対象者のみで額も一般には公開されていないため、やや盛り上がりに欠ける印象を受けた。ユーザーに認知してもらうためには、プラスαの仕掛けも必要になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
IIJmioで“長期利用特典”を提供 「スマホ割引」「家族割引」「データ追加」を重視した狙い
IIJmioでは、長期利用者向け優待プログラム「IIJmioご愛顧感謝特典」を6月21日から提供する。「mio優待券」では、対象スマートフォンを単体購入する際に端末代を割り引く。複数回線を契約すると、1回線あたり100円割り引く「家族割引」も提供する。
IIJ×OPPO、Xiaomi、モトローラが語るスマホ戦術 おサイフケータイは「永遠の悩み」、IIJmioは「モバイル業界の宝石箱」
IIJが4年ぶりのリアルイベント「IIJmio meeting」を開催。OPPO、Xiaomi、モトローラの担当者が集まり、スマホのトレンドについてディスカッションを行った。スマホのラインアップが細分化され、トレンドが変わってきているという。
IIJmio「ギガプラン」の30/40/50GBはお得? 他社の大容量プランと比較してみた
IIJmioでは3月1日から「ギガプラン」で月30/40/50GBのプランを追加しました。ただし、場合によっては他社を選んだ方がお得な場合もあります。そこで今回は、IIJmioの30/40/50GBプランを他社と比較した上で、お得な活用方法を解説します。
IIJmioが“死角だった”30GB/40GB/50GBプランを投入する狙い 長期利用特典も検討中
IIJは、個人向けサービスのIIJmioの「ギガプラン」に、30GB/40GB/50GBの大容量プランを3月1日に追加した。電気通信事業法第27条3の規制が緩和されることで、さまざまな割引やキャンペーンを実施しやすくなった。IIJmioの2024年の戦略を聞いた。
IIJmio「ギガプラン」で4GBと8GBを増量した理由 競合に比べてどれだけ安い?
「IIJmio」の「ギガプラン」で、一部データ増量をする。対象となるのは4ギガプランと8ギガプランで、月間のデータ容量を4ギガプランは4GBから5GBに、8ギガプランは8GBから10GBに増量する。IIJmioでは中容量帯の利用が増えているという。

