ドコモが“料金プラン+AIのセット割”を提供する狙い なぜahamoやeximoが割引対象でirumoは対象外なのか:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
NTTドコモが、生成AIサービスを1年間無料で使える「Stella AIセット割」を12月1日から提供する。Stella AIとは、スタートアップ企業SUPERNOVAが開発した生成AIのフロントエンドといえるサービス。ドコモのStella AIセット割は、特定の料金プランを契約している場合、その利用料が11カ月間、最大で2728円割り引かれる。
ドコモの料金とセットで1年割引、料金プラン限定の理由は?
現状できるのは、各AIモデルを呼び出し、それぞれに質問をして回答なり画像なりを得るというものだが、12月中にはPC用のChrome拡張機能を導入する予定。Webサイトの文章をドラッグして、メニューから要約を呼び出したり、メールを書いた際の文章のトーンを調整したりといったことが、ワンタッチで行えるようになる。AIモデルそのものではなく、それをどうユースケースに落とし込むかで差別化を図っている企業といえる。
ドコモは、このStella AIとスマホの料金プランをセットで提供し、割引も行う。Stella AI割というのが、それだ。割引額は、最大2728円。月3000回までAIモデルを利用可能なプレミアムモデルが、丸ごと無料になる格好だ。SUPERNOVAが展開する初月無料キャンペーンと合わせて、1年間、Stella AIの利用料が不要になる。2年目以降は料金が発生するものの、生成AIをじっくり試してみたいユーザーにはいい割引といえそうだ。
同様の生成AIサービスを組み合わせた割引は、先に挙げたソフトバンクとPerplexityが導入しており、こちらも、1年間、Perplexity Proの利用料である2950円が無料になる。ソフトバンクであればブランドも問わない。ソフトバンクやY!mobileはもちろん、Perplexity Proの料金よりも安い月額990円からの「LINEMOベストプラン」にもこのキャンペーンが適用されるため、非常にお得なサービスとして一部の利用者からは絶大な支持を得ている。
一方で、ドコモのStella AI割は、対象となる料金プランに制限がある点には注意が必要だ。具体的には、「eximo」「eximo ポイ活」「ahamo」の3プランのうち、どれか1つを契約していなければならない。料金水準の低い「irumo」は対象外。「ギガホ」や「ギガライト」といった旧料金プランにも、Stella AI割は適用されない。ソフトバンクの場合、Perplexity ProのためにLINEMOを契約するユーザーまでいたようだが、Stella AI割だと、このような回線がオマケになってしまう“逆転現象”は起こりにくい。
もともと、この割引はSUPERNOVA側からの提案で実現したというが、「ドコモ側の戦略も十分理解いただいた上での提案だった」(ドコモ 経営企画部 事業開発室 docomo STARTUP担当 担当部長 東哲平氏)という。SUPERNOVAの木本氏も、「ドコモの決算内容を踏まえた上で、上位プランにつけることになった」と語る。
ドコモは、eximoやahamoといった上位プランにユーザーが移行させていくことで、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)を上げる戦略を取っている。旧料金プランのユーザーがeximoに変更する割合は第2四半期に60%まで上がり、平均単金は上昇した。低料金プランのirumoを2023年に導入したばかりのため、ここでのAPRUは下がるが、eximoやahamoへの移行が増えた結果、全体のAPRUは横ばいで推移している。
irumoへの移行が加速してしまうのを防ぎつつ、上位プランの販売を促進していくことが今のドコモには必要というわけだ。Stella AIを1年無料にする割引は、上位プランをより魅力的にするための施策といえる。この点は、料金プラン値下げの影響を脱し、既にARPUが上昇傾向にあるソフトバンクとの違いになる。
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