「Galaxy S25」シリーズが“Androidを再構築”したといえるワケ GoogleとAI強化も差別化には課題も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
「Galaxy S25」シリーズのハードウェアや外観は2024年に発売された「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」から大きな変更はない。一方で、サムスン電子がUnpackedで全面に打ち出したのは、「Galaxy AI」や「Gemini」の進化だった。こうした点から、サムスン電子の新たなAIスマホ戦略が垣間見える。
AIを支えるために最適化したプロセッサ AIエージェントには課題も
もう1つのAIを使った機能が「Now brief」。AIを使い、ユーザーが必要とするであろう情報をまとめて表示する機能だ。これをロック画面上に表示する「Now bar」も搭載される。こちらは、例えば朝だとニュースや天気予報、通勤経路といった情報を表示、夜は1日のまとめとして、活動量や次の日の天気などを表示する。AIは、ユーザーの好みや行動パターンを学習するところに使われているという。
こうしたユーザーの個人情報は、端末上の「Knox Vault」で保護され、一部を除き、処理はオンデバイスで行われる。Unpackedでも「われわれは多くの人がプライバシーとセキュリティを気に掛けていることを理解しており、この問題を真剣に受け止めている」と語られた。また、サムスン電子によると、クラウドAIを使うときも、パーソナルデータにアクセスするのは必要最小限に抑えられており、リクエストを処理した後、即座にデータが消去されるという。
こうしたオンデバイスの処理を可能にしているのが、Galaxy S25シリーズに搭載されたプロセッサの「Snapdragon 8 Elite for Galaxy」だ。同チップは、NPU(Neural Processing Unit)の性能が40%向上している他、CPUにも高性能なOryon(オライオン)を採用しており、GPUも含め、トータルでAIの処理能力を向上させている。Galaxy AIはオンデバイスのものが多く、これによってよりスムーズなレスポンスが期待できるようになる。
Snapdragon 8 Elite for Galaxyは、Galaxy S25に最適化されている。Qualcommのモバイル端末担当上級副社長であるクリス・パトリック氏は、Unpacked後に開催されたイベントで、サムスン電子向けにチューニングを加えた理由として、AIモデルを挙げ「携帯電話のメモリやバッテリーには限りがあるので、この素晴らしい体験を普及させるためには、3社(Qualcomm、サムスン電子、Google)による非常に慎重な共同エンジアリングが必要になる」と語る。
ディスプレイやカメラ、デザインなど、表面的なデバイスの進化は少ないように見えるGalaxy S25シリーズだが、その中身は別物に仕上がっているというわけだ。Galaxy AIやGemini、そしてそれを駆動させるために必要なプロセッサを最適化することで、前モデルや他社との差別化を図っているといえる。AIスマホの時代に突入し、競争軸が変わりつつあることがうかがえる。
もっとも、AIエージェントを志向したGalaxy AIも、まだまだ万能ではない。Geminiのアプリをシームレスに連携させる機能も、対応するアプリがまだまだ少なく、できることは限定的だ。サードパーティーアプリがSpotifyやWhatsAppだけというのも少々さみしい。ユーザーが自然に使うには、サムスン電子やGoogleが、より多くの開発者を巻き込んでいく必要がありそうだ。
また、AndroidやGeminiの機能は、他社にも開放される。かこって検索がGalaxyやPixelに搭載された後、1年かけてさまざまなメーカーの端末に広がったように、アプリ連携も同じ道をたどる可能性がある。Googleとの密接な協業は差別化にはつながっているものの、その賞味期限は短い。エクスクルーシブな取り組みをいかに増やしていけるかは、今後の課題といえそうだ。
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