「Apple Intelligence」の日本語解禁で“スマホのAI競争”が激化 Android陣営とは何が違うのか:石野純也のMobile Eye(1/4 ページ)
Apple Intelligenceが日本語に対応したことで、スマートフォンのAI競争が激化しつつある。AIエージェント化ではAndroidが一歩リードしているが、雌雄を決するほどの差にはなっていない。AIスマホがユーザーの買い替えを促進していることを示唆するデータも出ている。
4月1日に、Apple Intelligenceの日本語版がついにスタートした。同機能はiPhone、iPad、Macにまたがって展開されるものだが、iPhoneの場合は、同日から配信を開始した「iOS 18.4」を対象のiPhoneにインストールすると利用可能になる。「iPhone 16e」を含むiPhone 16シリーズ5機種の他、メモリが多い「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」もその対象に含まれている。
Apple Intelligenceは、チャットbot型の生成AIサービスとは異なり、iPhoneやiPad、Macのユーザーインタフェースに深く組み込まれており、さまざまなアプリから自然に呼び出せるのが魅力だ。Appleが社是として掲げるプライバシー重視も徹底しており、オンデバイスとセキュアなクラウドをハイブリッドで利用する。一方で、AIを端末に深く組み込む動きにはAndroid勢も対抗。スマホの新たな競争軸になりつつある。
OSやアプリに深く組み込まれたApple Intelligence、チャット型とは一線を画す
Appleは、1日にiOS 18.4の配信を開始した。これにより、Apple Intelligenceが日本語環境で利用できるようになっている。同機能に対応することを売りにしているiPhone 16シリーズは「Apple Intelligenceの設計された史上初のiPhone」をうたう一方で、これまでは英語だけに機能が限定されていた。地域設定も当初は米国への変更が必須になっており、日本で日常利用するハードルは非常に高く、実用性も低かった。
その意味では、iOS 18.4の登場で、ついにiPhone 16シリーズが“真の実力”を発揮するときが来たといえる。2月に発売されたばかりの廉価版iPhone 16ことiPhone 16eも、その価値が高まることになる。生成AIというと、ChatGPTやGeminiのように、対話型かつチャット形式で文章や画像を生み出すようなものが頭に浮かぶ向きもあるだろう。一方で、Apple Intelligenceはそれらとは大きく方向性が異なる。
どちらかといえば、iPhoneの操作をより簡便しつつ、氾濫する情報を自動で整理してくれるためのツールという色合いが濃い。この目的を達成するため、Apple IntelligenceやiOSの至るところに組み込まれており、必要なときに呼び出すことが可能だ。文章のトーンを変えたり、文章を生成したりする際に活用する「作文ツール」は、その代表例といえる。
作文ツールという名称だが、同機能はアプリとして呼び出すのではなく、文章作成が必要な各アプリに組み込まれている。例えば、「メール」ではキーボードの上に作文ツールのボタンが表示される。これを押すと、メールアプリに重なる形で作文ツールが起動。書いた文章のテイストを変えるといったことができる他、ChatGPTと連携し、メールの本文執筆を生成AIに委ねることも可能だ。
フリック入力で快適に文字が打てるとはいえ、タッチパネルで長文を入力するのはやはり骨が折れる。作文ツールを使えば、簡単な指示(プロンプト)を出すだけで、きちんとした文面を考えてくれる。送られてきたメールを踏まえた返信を書くといったこともできる。ChatGPTが書くなら、最初からそれを使えばいいのでは……と思われるかもしれないが、メールから直接呼び出せて、かつワンタッチで文面を本文欄に反映できるのはApple Intelligenceならでは。生成AIをUIに溶け込ませている利点だ。
同様に、「メモ」や「Pages」といったアプリからも、ワンタッチで作文ツールを呼び出せる。サードパーティーが開発したアプリでも呼び出せるため、メールではなくGmailを使っていたり、「メッセージ」の代わりにLINEでメッセージを送ったりしたいときにも便利だ。FacebookのMessengerのように、作文ツールの選択肢が出なかったアプリもあるため、全てというわけではないようだが、アプリを問わず、シームレスに活用できる使い勝手は、プラットフォームを手掛けているAppleだからこそ実現できたことといえる。
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