「Xperia 1 VII」から見えるソニーのスマホ戦略 Xperia 10シリーズをあえて同時期に発売しないワケ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソニーの最新スマートフォン「Xperia 1 VII」は、前モデルから超広角カメラを強化し、これとAIを組み合わせた「AIカメラワーク」や「オートフレーミング」といった新しい動画撮影機能を搭載した。ソニーはXperiaのラインアップを整理し、より利益率を高める方向にかじを切っている。ここでは、Xperia 1 VIIや秋の投入が予告されている「Xperia 10 VII」から見えてきた、ソニーのスマホ戦略を読み解いていきたい。
過去モデルを引きずらない利益重視の販売戦略、2機種の好調を維持できるか
シェアが低下した大きな要因の1つが、過去モデルの値引き販売を抑えたことだ。大澤氏は、「2025年度は商品ミックスを大きく改善して、ほぼ新商品の販売だけにシフトできた」と語る。コストをかけて開発した製品が、当初の価格で販売できれば、そのぶん利益率は高まる。「新商品を(型落ちのモデルより)数多く販売した方が、利益重視の方針に近いアウトプットを出せる」(同)というわけだ。
大澤氏は、「絶対数だけで見るとシェアが落ちたように見えるが、構成比が変わっているので、利益という意味では大きく改善できた」と語る。Xperia 5シリーズの投入をやめ、ハイエンドモデルをXperia 1 VIに集約したことも、利益率を上げる上で効果があったはずだ。Xperia 1と5では、共通する仕様も多いが、筐体や基板などの設計は大きく異なる。ゼロから2台のハイエンドモデルを開発し、売れ行きが分散してしまうのは効率が悪い。その意味では、ソニーのスマホ事業がより筋肉質になったと捉えることができる。
とはいえ、あまり生産台数が少なすぎると、部材などの調達コストなども上がってしまい、価格の上昇によって販売台数のさらなる低下を招くという悪循環に陥りかねない。先に挙げたMM総研のデータを見ると、6位でシェア1.4%の京セラですら、1年間の出荷台数は133.5万台にとどまる。ソニーの場合、中国・香港や台湾などを中心に海外でもXperiaを販売しているため、国内だけの数字では判断できないものの、最も比率の高い日本市場でこれ以上販売数が落ちるのは避けたいはずだ。
その意味では、Xperia 1 VIで販売台数が2割増しになったことはソニーにとって朗報といえるが、ラインアップを2機種絞った2年目にこの勢いを維持できるかどうかが今後の焦点になる。Xperia 1 VIと同程度か、販売数を拡大できれば成功と見ていいだろう。また、販売台数を稼ぐのと同時に、Xperia 1シリーズにステップアップしてもらうユーザーを増やすという点では、今後投入されるXperia 10 VII(仮)の重要性も高い。
2機種に絞り、それぞれ販売を伸ばしているXperia 1 VI(右)とXperia 10 VI(左)。新たに投入するXperia 1 VIIと、秋発売のXperia 1 VIIでこの勢いを拡大できるかどうかが、今後の焦点になる
ソニーは、2024年9月に開催した説明会で、Xperia 10 VIが前モデル比で130%と売れ行きが伸びていることを明かしているが、Xperia 10 VIは直近の販売動向でも、好調さを維持している。オンラインショップかつ1キャリア限定だが、ドコモの販売ランキングではトップ10の常連。4月28日〜5月4日の期間は、セールの影響で順位が2位に浮上した。秋に投入すると予告しているXperia 10 VII(仮)が、これを上回れるのか。その動向にも、注目が集まる。
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