ドコモ前田社長が語る「通信品質1位」への道筋 銀行業でd経済圏を加速、新AIエージェントも提供へ(2/2 ページ)
NTTドコモの前田義晃社長に、銀行連動サービス、通信品質、AIサービスについて聞いた。通信品質は2025年度に他社と並び、2026年度に1位を目指す。住信SBIネット銀行を子会社化したことで「融資」を軸とした金融サービスを強化する。
通信品質は「2025年度末には差がない状況に」「2026年度に1位を目指す」
―― 前田社長が就任されてから、2024年度内にOpensignalの「一貫した品質」で1位を目指すと宣言されてきました。2024年度最後の調査では一貫した品質の調査が省かれたため(関連記事)、2025年度以降に持ち越しとなりましたが、ネットワーク対策の進捗(しんちょく)状況を教えてください。
前田氏 会見でもお話しさせていただきましたが、進捗は着実にしています。就任時に申し上げた通り、都市部を中心にSub6の増設を進めており、全国レベルで見ると5G基地局数は20%増加しています。人口集中地域に絞って見ると、70%程度の増加になっています。増設はもちろん、チューニングなども行ってきましたので、ダウンロード速度自体は確実に上がっています。全国平均で見ても20%程度の上昇です。Opensignalの別の指標では、5Gが1位になっているという結果も出てきています。カバレッジが1位なのは、もともとそういう打ち方をしているためです。
申し上げているCQ値(Consistent Quality=一貫した品質)については、ずっと取り組んできていますが、Opensignalさんのデータでは、比較が難しいところはあります。ドコモの場合、3Gのデータも入っています。irumoの0.5GBの通信速度(最大3Mbps)も入っていますが、他社さんはサブブランドが入っていない場合もあります。全部合わせていくと、それほど差がないレベルに来ていると思いますが、分かりやすく今トップの状態になっているかというと、必ずしもそうではありません。近づいてはきているとは思います。
5Gの基地局数、特にSub6の基地局数は、今年度(2025年度)でほぼ他社さんと変わらない数になる予定です。あとは4G周波数帯の転用も、今年度もしっかり取り組んでいますし、来年度はさらに増やしていきます。その結果、来年度(2026年度)には確実に1位に持っていけると考えています。今年度末には、ほとんど差がない状況に持っていけるのではないでしょうか。進捗はしっかりしています。
―― 一貫した品質1位を達成する目標は変わらず、来年度までにそれを達成するということですね。
前田氏 はい、来年度までには達成できると思っています。今年度でも相当良いところまで来ていると自負しています。
AIエージェントサービスを2026年度提供に向けて開発中 ドコモが持つ「データ」が強みに
―― スマホの競争力がAIへと移りつつあるように感じます。メーカーが主導でGoogleやOpenAIの技術を活用し、AIサービスを構築していますが、キャリアとしてこのAIをどのように捉え、取り組んでいかれるのでしょうか。
前田氏 キャリア側の話になりますが、お客さまへ提供するAIという点では、スマートフォンも含めて、究極の「パーソナルエージェント」が目標だと考えています。これは、20年以上前からわれわれが追求してきたコンセプトです。
現在の生成AIを含めたAIの進展により、これまでやりたかったけれど技術的な制約でできなかったことが、劇的に環境が整備され、実現可能になってきています。お客さまにさまざまな設定をしていただくことでエージェント的な機能を提供してきましたが、その技術進展を生かし、パーソナルエージェントのサービスをしっかり提供したいと考えています。
具体的にどう進めるかというと、GoogleさんやOpenAIさんなどのLLM(大規模言語モデル)は、それを磨き上げてさまざまなアプリで利用できる状態にしています。私も使っていますが、現時点のサービスは、どちらかというとインタラクティブなやりとりの中で自分を理解してもらい、問われたことに対して返すというエージェントスタイルだと感じています。
しかし、これだと入力が前提となります。私自身の人となりや生活スタイル、何をしているかといったことを全て入力しなければならないのか、という話になってしまいます。さすがにそのような使い方は難しいでしょう。そこで生きてくるのが、先ほど申し上げた、さまざまなサービスをご利用いただく中で蓄積されている、お客さまを理解するためのデータです。これをどう連動・連携させるか。いちいち自分で入力しなくても、自分に合ったエージェントが振る舞ってくれるようになるか。ここがデータを持つわれわれの強みだと考えています。
まさにそのようなサービスを作り上げたいと考えており、現在検討を進めているところです。できれば今年度中に作り上げたいと思っています。LLMとの連携が不可欠ですので、LLMについては外部の企業とのアライアンスを組むのがいいと考えています。また、生活のさまざまな場面でエージェントとして振る舞うためには、さまざまなコンテンツやアプリケーションとの連携が必要です。APIを通じて他事業者さんと連携できるような、プラットフォーム的な振る舞いができるAIエージェントサービスを、今、開発・構築を進めているところです。
―― ドコモでは「my daiz」というAIエージェントサービスがありますが、それとは別のサービスになるのでしょうか? それともmy daizを発展させるようなイメージでしょうか。
前田氏 今作ろうとしているものは、少し別の形です。ただし、my daizやその前のiコンシェルといったサービスの考え方や経験を生かして、今回のサービス開発を進めているのは事実です。新しいサービスを始めれば、古いサービスは必ずしも提供し続けることにはならないと思いますので、ある種入れ替わることになるかもしれません。
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