「Snapdragon 8 Elite Gen 5」で見えたAIスマホの未来 2026年以降は“先回りで提案”が定着するか:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
Qualcommが発表した最新のプロセッサ「Snapdragon 8 Elite Gen 5」は、さらに性能が引き上げられている。一方で、このチップセットの本質やQualcommが目指す方向性は、数値で表せる単純な進化ではない。個人に最適化されたAI機能の実装が期待される。
Qualcommは、9月23日から25日(現地時間)の3日間に渡って開催した「Snapdragon Summit 2025」で、ハイエンドスマートフォンなどに搭載される最新のチップセット「Snapdragon 8 Elite Gen 5」を発表した。同イベントは米国ハワイ州のマウイ島で行われたが、中国ではXiaomiが同チップを採用した「Xiaomi 17」シリーズを国内向けに披露しており、例年よりもその投入時期は早まっている。
Snapdragon 8 Elite Gen 5は、2024年登場した「Snapdragon 8 Elite」の後継に位置付けられるチップセット。Snapdragon 8 Eliteでは世代を示す「Gen 4」が省略されていたため少々分かりづらいが、Snapdragon 8シリーズにリニューアルしてから5世代目のチップセットになる。CPUには、同社が独自設計した第3世代Oryonを採用する。
初のOryon採用スマホ向けチップとして性能を大きく上げたSnapdragon 8 Eliteだが、Gen 5ではさらにそれが引き上げられている。一方で、このチップセットの本質やQualcommが目指す方向性は、数値で表せる単純な進化ではないという。同社CEOのクリスティアーノ・アモン氏らの基調講演や、幹部の取材から、その真価に迫っていきたい。
iPhone 17シリーズを超えたCPU性能、モバイル最速をうたうSnapdragon 8 Elite Gen 5
Snapdragon 8 Elite Gen 5は、第3世代のOryon CPUを搭載し、そのパフォーマンスを大きく上げている。CPUはプライムコアとパフォーマンスコアの2段構えになっており、前者は4.6GHz、後者は3.62Hzと高いクロック周波数で駆動する。Oryonは、省電力コアを廃しているが、第3世代でもその特徴は継承された。
CPUの性能を向上させたことで、その処理能力はシングルスレッドで20%、マルチスレッド17%ほど向上しているという。実際、Snapdragon 8 Elite Gen 5を内蔵したレファレンスモデルで「Geekbench 6」を使ってベンチマークテストを実施したところ、前モデル比でQualcommが示す程度の高い結果が出ていた。
CPU性能では、「A19 Pro」を搭載した最新のiPhoneをも上回っている。Qualcommが「世界最速のモバイルCPU」とうたっているのは、こうした数値を積み上げた客観的な結果があるからだ。また、総合得点を求める「AnTuTu Benchmark」では400万点超えのスコアを記録しており、前世代から大きく数値が上がっている。
同ベンチマークはCPU、GPU、NPUだけでなく、メモリやストレージの速度も影響するため、全部盛りにしたレファレンスモデルでは数値が高く出る傾向はあるが、これまでの端末が200万程度だったことを踏まえると、大きな躍進といえる。
CPUに加え、GPUやNPUも処理能力を向上させている。GPUは1.2GHzのスライス構造で、前世代比で23%程度、処理能力が上がっているという。AIの処理を担うNPUも、前世代比で37%のパフォーマンス改善が図られており、IPSと直結して、写真や動画撮影のクオリティーを上げる構造も引き継がれている。
スペックの向上ぶりが次々と発表されていったSnapdragon 8 Elite Gen 5だが、Qualcommのグループゼネラルマネージャー、アレックス・カトウジアン氏は、「単にスペックを上げているだけでなく、よりスマートでスムーズかつパーソナライズされたインタラクションが可能になる」点が重要だと語っている。それを分かりやすくユーザーメリットとして示しているのが、「エージェント型AI」の実現だ。
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