非通信事業者の格安SIM参入を支援する「ミークモバイル」誕生 最短3カ月で開発、あらゆる経済圏でモバイルを(2/2 ページ)
ミークは2025年10月30日、非通信事業者が自社のブランドでモバイルサービスを手軽に展開できる新サービス「MVNO as a Service」の提供を開始することを発表した。通信事業に関する専門的な知見や大規模なシステム開発を必要とせず、既存の顧客基盤を持つ事業者が新たな価値提供と収益機会を創出することを目的としている。ミークモバイルの誕生背景や狙いは何か。
MVNO最大の障壁が「モバイルシステム開発」 初期構築費用と開発期間がネックに
MVNO as a Serviceは、従来のMVNO参入モデルと何が決定的に違うのか。小林氏は、ミークがこれまでに提供してきた「Self-Operated MVNO」(事業者が自ら運営するモデル)との比較を挙げて、その優位性を強調した。
実は最大の障壁が「モバイルシステム開発」にあった。例えば、Self-Operated MVNOを選択した場合、事業者が自ら申し込みページ、本人確認(eKYC)の仕組み、顧客管理システム、月額課金システム、そして MVNE(ミーク)とオーダーをやりとりする API 連携などを開発する必要があった。これには 2000万〜3000万円程度の初期構築費用と、6カ月以上の開発期間を要するのが一般的だったそうだ。
さらに、サービス開始後の「運営体制」の構築も課題となる。24時間365日の顧客サポートを整備するだけでも、内製・外注を問わず人員が必要であり、課金管理やサービス企画なども含めると、10人以上の専門知識を持った体制が必要だった。
一方、今回のMVNO as a Serviceでは、これらのモバイルシステム開発は一切不要となる。ミークモバイルが提供する共通基盤を利用するため、開発期間は最短3カ月程度に短縮される。モバイルサービスの運営体制も不要だ。非通信事業者が唯一対応するのは、自社の既存システム(顧客IDなど)と連携し、ポイント還元などを実現するための接続開発のみとなる。
もちろん、トレードオフも存在する。ミークが提供しているMVNEサービス「Self-Operated MVNO」はオーダーメイドで柔軟性が高く、売上や利益も高くなる可能性がある。対してMVNO as a Serviceはパッケージ型で柔軟性は低く、収益は販売手数料がベースとなる。
ミークの「Self-Operated MVNO」はオーダーメイドで柔軟性が高く、高収益の可能性がある。一方、「MVNO as a Service」はパッケージ型で柔軟性は低く、収益は販売手数料がベースとなる
小林氏は、自社で開発を行い、高い売上と利益を狙う事業者は引き続き Self-Operated MVNOが適しているとし、今回の新サービスは「非通信事業者が、もっとライトにモバイルサービスを始めたい」というニーズに応えるものだと明確に位置付けた。
ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアに対応 料金は小・中・大の3種類
ミークモバイルは、この新サービスを通じて3つの具体的な価値を提供する。1点目は、ミークが 10年以上にわたり培ってきた MVNE としての実績と、現在80万回線以上が利用する「実績のあるネットワーク運営能力」。
2点目は、消費者が現在の利用環境から移行しやすいよう、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの3キャリアのネットワークに全て対応し、どのキャリアを選んでも同一プラン・同一料金で提供する「3キャリア対応のネットワーク」だ。
最後の3点目は、プラットフォーム型でサービスを構築することで、販売手数料を支払いながらも市場で遜色のない「納得の料金プラン」だ。
発表会で示された料金プランは、スタート時点では小・中・大の3カテゴリーで提供される。小容量プランは、一般的な利用者の平均利用量から 4GBで1000円を切る価格帯を設定するなど、利用者が移行しやすい設定を意識したという。具体的には、小容量(10GB以下)が4GBが980円、中容量(10〜30GB)の12GBが1780円、22GBが1980円、37GBが2580円、大容量(30GB以降)の57GBが3980円となっている。
これらは音声通話、SMS、データ通信を含む料金で、3キャリア共通という。今後、楽天モバイルも選択肢に加わるそうだが、詳細は明かされなかった。
ミークモバイルは、この仕組みを共通基盤として、A社向けには「A社モバイル」専用の申し込みページやマイページを用意し、B社向けには「B社モバイル」として提供する。今後はミークと協力し、AIチャットbotの導入などによって業務効率を上げ、コスト効率を高めていく方針だ。
具体的なユースケースとしては、自社アプリやポイントサービスと連携する「小売業」、チケットやグッズ購入にポイントを活用できる「ファンクラブ」(スポーツクラブなど)、ガス・水道・電気といった「インフラ」、新たな旅行体験につなげる「旅行業界」などを想定している。
小林氏は、「MVNO as a Serviceで、全ての“ブランド”にモバイルサービスを」という目標を強調し、「消費者がお気に入りの経済圏でモバイルサービスを利用できるようにし、事業者がブランド戦略を一層進められるよう、多くの企業にこのサービスを提案していきたい」としている。
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