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3キャリアの決算で浮き彫りになった“ドコモ一人負け”の状況 何が明暗を分けたのか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアの上期決算で浮き彫りになったのが、“ドコモ一人負け”の状況だ。KDDIとソフトバンクが増収増益だったのに対し、ドコモはMNPももマイナスに転じてしまった。親会社であるNTTから競争基盤であるシェア拡大を課されているドコモだが、「今年が正念場」(NTTの代表取締役社長 島田明氏)という、厳しい状況が続いている。

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減収減益のコンシューマー通信、競争激化に苦しんだドコモ

 これに対し、ドコモは3社で唯一、コンシューマー向け通信の売上高、営業利益が減収減益になった。新料金プランへの移行に伴う減収幅は徐々に小さくなっている一方、営業利益を大きく減らした。その原因になっているのが、販促強化の費用や、ネットワーク強化の対策費用だ。前者の影響は551億円、後者は148億円の増加になっており、スマートライフ事業の増益を打ち消す形になっている。

ドコモ
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コンシューマー通信は、営業収益(売上高)、営業利益ともに減少した

 販促費用を大きく積み増したのは、冒頭で述べたように事業基盤の強化、ありていに言えば、シェアを拡大するためだ。ただ、純増数やMNPの実績を見ると、その効果が十分出ているとは言いがたい。ドコモの代表取締役社長 前田義晃氏によると、「他社攻勢の強まりを受け、ハンドセット純増の対前年増減も悪化している」という。MNPでは「取られるところが、ものすごく多くなっている。ポートアウトが120%ぐらいのレベル」(同)だったという。

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第2四半期は、MNPでも苦戦を強いられたという

 特に、PixelシリーズやiPhoneシリーズが販売される一大商戦期の第2四半期には、MNPでの増減が対前年比で大きくマイナスになっている。NTTの島田社長によると、その原因は「irumoの0.5GBをやめたこと」だったという。 irumoの廃止に加え、「(他社が)販促の部分にかけるコストがかなり多くなっているのがベースだが、ネットワークのことでご不満に思われている方も一定数いるのが事実」(前田氏)だという。

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ドコモの状況を「正念場」と評したNTTの島田社長

 KDDIも同時期に料金プランを改定しているが、もともとirumoの0.5GBのような激安で維持できる料金プランがなかったことや、ネットワーク品質での不満が少なかったこともあり、明暗が分かれた格好だ。料金プランに関しては、「irumoの0.5GBで取った方は早期にやめられていくので、そういう意味では一過性のもの」(同)。一方で、後者のネットワーク品質は根が深い問題といえる。

 現状での課題は、「基本的に都市部の品質」(同)にある。そのため、ドコモは10月から始まった下期に、上期の3倍に及ぶ5G基地局の設置を行う。前田氏は「基地局建設は地権者との調整も含めて時間がかかるが、さまざまな調整をしながら、上期との比較で3倍はやり切る」(同)と宣言。「3倍超を構築するところは見えているが、このレベルでも他社に匹敵するレベルにはなる」と語った。

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下期は上期の3倍の基地局を新規で設置する予定だが、裏を返すとネットワーク品質は改善の途上にあるということだ。特に都市部の品質に課題があるという

 一人負けの様相を呈しているドコモだが、「ドコモMAX」をはじめとした新料金プラン導入の効果は出ている。第2四半期では、ARPUが3960円まで拡大。10月には、ドコモMAXの加入者が150万を突破し、移行率は58%まで伸長した。また、他社から獲得するポートインのユーザーが、中・大容量プランを契約する割合も高まっている。解約率が他社より低い0.69%にとどまっているのも、明るい材料といえる。

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ドコモMAXは150万契約を突破。ARPUも上昇しているのは、ドコモにとっての好材料といえる

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