3キャリアの決算で浮き彫りになった“ドコモ一人負け”の状況 何が明暗を分けたのか:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアの上期決算で浮き彫りになったのが、“ドコモ一人負け”の状況だ。KDDIとソフトバンクが増収増益だったのに対し、ドコモはMNPももマイナスに転じてしまった。親会社であるNTTから競争基盤であるシェア拡大を課されているドコモだが、「今年が正念場」(NTTの代表取締役社長 島田明氏)という、厳しい状況が続いている。
セット契約、長期利用を重視するKDDIとソフトバンク 獲得重視から転換へ
もっとも、KDDIやソフトバンクも新規契約の獲得を重視する戦略から、徐々に脱却しつつある。現状よりも、守りをより固める方向にかじを切りつつあるといえる。ソフトバンクの宮川氏は、「獲得の数にこだわって業績に影響がないのは、あまり意味がない気がしてきた」としながら、「ファンのユーザーが一番ARPUも高いし、継続する期間が長いのも大事なユーザー。その方々にお金をかけるべきじゃないかと考えている」と話す。
ソフトバンクは、事業基盤としてスマホの累計契約者数で純増を重視していたが、「少し数が減ったぐらいでは、慌てない構造を作る」(同)といい、その方針を転換する。実際、9月に導入されたY!mobileの「シンプル3」では、割引適用前の料金を値上げし、PayPayカードやPayPayカード ゴールドとの連動を強化。データ容量の最も少ないSプランは、光回線とのセット割の比重も高まっている。
結果として、割引が適用されたユーザーは「シンプル2」のときよりも料金が下がるケースもある。ソフトバンク内で複数のサービスを使い、より長期間契約する見込みの高いユーザーの還元を手厚くする方向になりつつあるといえる。メインブランドの料金改定には慎重なソフトバンクだが、宮川氏は「どこかで行動に移す」と語る。その際には、こうしたY!mobileでの実績を応用してくる可能性が高い。
ソフトバンク同様、KDDIの松田氏も、「他社の過熱気味な販促コストを使う形の競争に、真っ向から対抗している意識はない」としながら、「販促費を多額にかけてというところから、構造改革で一歩引いた形」と語った。宮川氏と同様、松田氏も「ID(数)が少し弱くなるが、そこは覚悟を持った上でやっている」としており、契約者数だけを追い求めない姿勢を明確にした。
6月からの新料金プランや、付加価値となるサービスをつけた上での値上げは、その構造改革の一環。割引などの一時的なコストをかけるのではなく、「通信品質もそうだし、au Starlink Directもそうだが、商品力での勝負」(同)になるとした。一方で、KDDIも長期契約につながりやすい「auマネ活バリューリンクプラン」などの獲得が鈍りつつある。
9月末時点での契約者数は170万。2024年11月時点の140万契約から30万契約ほど積み上げているが、松田氏は「この領域の先駆者として、もう一度ビジネスを巻き直していきたい」との認識を示す。KDDIの取締役執行役員常務、勝木朋彦氏は「満足度向上に向け、新たなプランの検討を進めている」と語り、料金改定が近づいていることを示唆した。一足先に守備固めに入ったKDDIとソフトバンクだが、その武器として、金融・決済連携の料金プランにはさらに磨きをかけていくことになりそうだ。
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