楽天モバイルは「MNP純増」に 他社プランの「値上げ」などが寄与
楽天モバイルは2025年7〜9月期にMNP純増9万5000件を記録し、契約数は950万回線に到達した。楽天カードとの連携施策が開通数を押し上げ、他社の料金プラン改定もMNP流入の追い風となった。一方で通信3社は短期解約の抑制を重視し、MNP競争は「数」から「質」へと軸足を移しつつある。
楽天グループは11月13日に開催した決算説明会で、MNPが純増であると発表した。第3四半期(7〜9月期)のMNO回線純増数は40万5000回線に達し、MNPによる純増は9万5000回線と前四半期比71.4%増を記録した。
同社によると、楽天カードとの連携施策などが開通数を押し上げ、他社プラン改定の影響も追い風となったという。MNPでの流入が増加する一方で、契約当月内の解約を除けば解約率は減少傾向にあり、調整後のMNO解約率は1.33%。MNPユーザーはメイン回線としての利用が多く、解約率の低下にもつながるとみている。
楽天モバイルの契約者純増数は、前年同期と比べて21.9%増加し、好調を維持している。特に、閑散期とされる夏場(7-9月)においても、楽天カードとの連携などで開通数を伸ばすことに成功した点が強調されている
他社から楽天モバイルに番号そのままで乗り換えてくるMNPでの純増数が、前の四半期(Q2/25)と比べて71.4%と大幅に増加している。2025年度第1四半期(Q1/25、純増3.8万)を底にV字回復している。楽天グループは、これを「メイン回線としての利用者が増えている証拠であり、解約率の低下にもつながっている」と分析している
「短期解約」や「質の低い転入」の抑制に舵を切る他社
楽天モバイルがMNP純増を大きく伸ばす一方で、他の通信3社は「短期解約」や「質の低い転入」の抑制に舵を切っている。MNPの数字だけを追うのではなく、どのような顧客を維持・獲得していくかを重視しているようだ。
NTTドコモはMNPに関する課題を整理する段階にある。前田義晃社長は11月4日の決算説明会で、「10月はMNPが純増に転じたものの、トータルではまだマイナス」であることを示した。特に「irumo(イルモ)」の0.5GBプランがMNP転出入に多く利用され、短期解約が相次いでいたという。そのため同プランを廃止し、「顧客基盤の質を高める取り組みとしてポジティブに捉えている」と述べた。数よりも持続的な契約を重視する姿勢が鮮明だ。
KDDIも同様に、短期的な契約獲得競争からの脱却を進めている。松田浩路社長は11月6日の決算説明会で、「一部の特定目的の短期解約を誘発するようなプランや売り方を見直した」と述べ、低容量プランを中心にMNPによる転入出を繰り返す利用を排除したことを明らかにした。そのうえで「長く利用していなかった人が解約に至るケースもあるが、長期的に見れば筋肉質な事業基盤を築けた」とし、収益の安定化を優先する考えを示している。
ソフトバンクの宮川潤一社長も、MNPの「質」に言及した。11月5日の決算説明会では「キャリア同士の行ってこいは順調」としつつも、短期解約となる契約が課題と語った。「意図せぬ契約になってしまうお客さまを、同じような獲得インセンティブで取ってしまうのはおかしい」とし、販売現場での実態を是正する方針を示した。
MNPは従来、通信会社間の「契約奪い合い」を象徴する指標だった。しかし、通信3社がこぞって「質」や「長期利用」を重視する発言を行うなかで、楽天モバイルだけが純増数で存在感を強めている。各社がMNPを“選別の時代”へと移行させる中、楽天モバイルは依然として「攻勢の指標」として活用しており、通信市場の構図を静かに変えつつある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
3キャリアの決算で浮き彫りになった“ドコモ一人負け”の状況 何が明暗を分けたのか
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアの上期決算で浮き彫りになったのが、“ドコモ一人負け”の状況だ。KDDIとソフトバンクが増収増益だったのに対し、ドコモはMNPももマイナスに転じてしまった。親会社であるNTTから競争基盤であるシェア拡大を課されているドコモだが、「今年が正念場」(NTTの代表取締役社長 島田明氏)という、厳しい状況が続いている。
ドコモは「通信品質」「ネット銀行」でナンバーワンを目指す 販促費も拡大してMNPプラス成長を
NTTドコモが11月4日、2025年第2四半期の連結決算を発表した。モバイル事業は競争が激化しており、販促費やネットワークの強化でプラス成長を目指す。既存プランから新料金プランへの移行が6割に達し、エンタメコンテンツも特典に追加する。
5Gが好調のau、料金値上げが好循環に 課題の金融事業は「マネ活プラン」強化でてこ入れ 決算会見で語られたこと
KDDIは11月6日、2026年3月期第2四半期の連結決算を発表した。松田浩路社長は、モバイル事業が順調に拡大し、期初の想定通りの進展であることをアピール。KDDI全体の通期目標では、注力領域における金融とビジネスセグメントのDX分野の成長が課題だと松田氏は指摘する。
ソフトバンクは「純増にこだわらない」と宮川社長、長期利用者を重視 決算会見で語られたこと
ソフトバンクが2025年度上期決算で過去最高の売上高3兆4008億円を記録する一方、モバイル戦略を大転換。宮川社長は「純増にこだわらない」と明言し、短期解約者より長期利用者を重視する方針を表明した。
楽天モバイルの契約数が「950万回線」に 目標の1000万回線は目前
楽天グループは2025年11月13日に開催した決算会見で、楽天モバイルの契約数が950万回線に達したと発表した。MNOとMVNOを合わせた合計で、同年7月末時点の908万回線(8月8日の決算会見で発表)から、約3カ月半で40万回線以上増加したことになる。目標まであと少しだ。
