“値上げしない”楽天モバイルが好調、楽天経済圏でのシナジーも発揮 第3四半期決算
楽天グループが11月13日、2025年度第3四半期の決算を発表した。楽天モバイルはNon-GAAP営業利益が37億円の赤字も、前年同期からは134億円の改善となった。ARPUや純増数も増加しており、楽天グループのサービス利用も増えている。
楽天グループが11月13日、2025年度第3四半期の決算を発表した。売り上げは6286億円で前年同期比10.9%増、Non-GAAP(非国際会計基準で独自算出した)営業利益は386億円で前年同期比212.8%増、IFRS(国際会計基準)営業利益は8億円で前年同期比1379.7%増となった。
インターネット、フィンテック、モバイルの全セグメントで2桁増収を果たしており、三木谷浩史会長は、各セグメントの主要事業が好調に推移していることをアピールした。Non-GAAP営業利益ではモバイル事業の赤字が続いているものの、グループ全体では黒字幅が拡大しており、Non-GAAPとIFRSの両方で2025年度通期の黒字化を目指す。
2025年度通期のEBITDA黒字化に向けて順調に進展
楽天モバイルについては、売り上げが950億円で前年同期比31.2%増、Non-GAAP営業利益が372億円の赤字も、前年同期からは134億円の改善となった。Non-GAAP営業利益に減価償却費等を加算したEBITDAは78億円で前年同期比175億円増となった。顧客獲得関連費用を除くPMCF(プレマーケティングキャッシュフロー)は243億円。期初に掲げていた、2025年度通期のEBITDA黒字化に向けて、着実に進展しているとした。
楽天カード効果で純増継続、MNP純増も2025年に増加傾向
MNOサービスの純増数は、前年同期比で21.9%増となる40.5万回線となった。第3四半期の7〜9月は例年閑散期だが、楽天カードと楽天モバイルを連動させた獲得施策が好調で、契約増に貢献したという。解約数は第2四半期から微増しているが、同月内解約回線の増加を除けば、減少トレンドが続いているとのこと。
楽天モバイルの総契約回線数は2025年10月時点で950万回線に達した。この数字はMVNOやBCP(法人の災害時向けプラン)も含む。三木谷氏は「今年(2025年)内の1000万回線に向けて取り組んでいく」と変わらぬ姿勢を示した。
他社から乗り換えたMNP純増数は9万5000回線となり、前年同期(11万9000回線)よりは減少したものの、第2四半期(5万6000回線)からは71.4%増となった。三木谷氏は「一部キャリアでプラン改定なども見られる中、楽天モバイルのMNP純増数は増加トレンドを維持している」と手応えを話す。また、MNPで移ってきたユーザーは、メイン回線で利用する人が多いことから、今後の解約率低減にも期待するとした。
MNOの解約率は1.33%。前年同期の1.12%よりも上がっているが、2025年度第1四半期の1.56%をピークに下降トレンドにはある。三木谷氏は「インフレが継続しているマクロ環境下で、楽天モバイルの相対的な魅力が向上していると推察される」とコメントした。
ARPUも増加、楽天経済圏への取り込みも成功
MNPのARPU(1ユーザーあたりの売り上げ)は2873円となり、前年同期比で72円増となった。楽天モバイルユーザーのグループサービス増収額を反映した「エコシステムARPU」は736円。ライトユーザーの新規契約が増えたことで横ばいが続いているが、契約1年後に限定して算出すると、エコシステムARPUは865円に増えるという。三木谷氏は「時間経過とともにロイヤル化が進んでいく」と期待を寄せた。
実際、楽天市場ユーザーに占める楽天モバイルユーザーの比率は増加傾向にある。2025年度第3四半期における、楽天市場の月間アクティブユーザーに占める楽天モバイルユーザーの割合は16.2%で、前年同期比で1.8ポイント増加している。また、楽天モバイルユーザーは、楽天モバイル非契約者よりも楽天市場の平均年間流通総額が48.5%多いという結果も出ている。楽天モバイルではSPUのポイントが+4倍アップする特典があり、楽天市場の利用増に貢献しているようだ。
また、楽天モバイルユーザーが新たに楽天市場を利用する流れも増えているようだ。楽天市場の新規ユーザーに占める楽天モバイルユーザーの割合は2025年度第3四半期に50.5%に達した。楽天モバイルを起点に、楽天経済圏に取り込む動きが進んでいるといえる。
コンシューマーのデータ利用量は増加が続いており、2025年第3四半期時点で月平均33.5GBに達した。10月1日からは映像配信サービスのU-NEXTをセットにした新料金プラン「Rakuten最強U-NEXT」の提供を開始しており、さらなるARPU増を目指す。
ネットワーク運用の効率化でRakuten最強プランも値上げせず
他キャリアが料金改定や値上げをする中、「Rakuten最強プランは引き続き料金を変えることなく提供していく」と三木谷氏は改めて説明する。基地局の運用にかかる電気代が高騰する中でも、AIや機械学習を用いてRAN(無線アクセスネットワーク)を管理することで、運用の効率化を図っている。
楽天モバイルでは、RIC(RAN Intelligent Controller)を活用することで、周波数の最適利用やエッジクラウドやネットワーク全体の省電力化を図り、低コストで運用できる。そこで浮いたコストを「月々の料金プランという形でお客さまに還元していきたい」と三木谷氏は説明する。
ネットワーク品質の安定化に向け、新規基地局の開設も増加しており、2025年9月時点で4611局(4G+5G)を新規で開設した。なお、2025年内の基地局設置のうち、一部は来期にずれ込む見込みとのこと。
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