ドコモが後れを取っている「光、電気、ガス」を一体営業で強化 激化する経済圏競争での勝算を聞く:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2025年7月の組織変更で、ドコモに「イエナカサービス部」が発足した。「ドコモ光」や「ドコモでんき」「ドコモガス」を1つの部門に集約し、モバイル回線以外の家の中で使うサービスをまとめて取り扱うのがその目的だ。周辺サービスをひもづけることによって、ドコモ経済圏での囲い込みを強化していく。
3サービスセットの販促を強化、ロイヤルカスタマーには大きな割引も
イエナカサービス部として強化しているのが、販売店での販促だ。特に、家電量販店での営業活動には積極的になっているという。「イエナカのサービスから入っていくこともやりたい」と考えているからだ。「量販店はもともと(モバイル回線の)ポートインの主戦場だったが、ポートインだけだとキャリアホッパーしか来ない」ため、すぐに他社に移り、解約率も上がってしまう。
ドコモ視点では、獲得コストの無駄使いになってしまうといえる。「であれば、そこで光や電気に加入していただく形にする。そこまで入るお客さまは、本気でキャリアを変更したいと思っている」ため、ユーザーとして定着しやすい。獲得時に複数のサービスを変更してもらうため、キャリアとユーザー双方のハードルは上がるものの、長期利用が見込みやすくなるというわけだ。
もちろん、その分「イエナカにも入っていただければ、還元を増やしていく」。現状では、電気通信事業法やその施行規則でスマホへの値引きは最大4万4000円まで、ミリ波対応モデルは特例として6万500円までに規制されている。一方で、これはあくまで回線契約にひもづいた形になる。光回線や電気、ガスに別途キャッシュバックを出すのは原資が異なるため、問題にならない。
そのキャッシュバックをスマホの本体代金に充てれば、従来よりも安価に購入できる形になる。現状では、「通常のポートイン特典をお渡ししているだけで、そこまではやっていない」というが、徐々にテストしながら還元方法は変え始めているという。小島氏は「一緒に電気もまとめて切り替えていただき、さらに光も変えていただければここまで出すということを試しながらやっている」と語る。
「ケータイには値引きのしっかりした規制があり、光も光で規制はあるが、それぞれの特典をうまく使って最大化して見せる」という手法が取りやすくなる。光回線や電気は、「一度契約したらかなり長く使っていただける」傾向がある。こうした事情もあり、「LTV(ライフタイムバリュー)を考えて、そこまで踏み込める」という。
また、量販店だけでなく、引越し業者や賃貸不動産業者との連携も視野に入れているという。「ライフラインの申し込みはどうするのかというと、必ずそこが選択肢に入っている」からだ。小島氏は「光では先行してやっていたが、電気も、ガスもという形にして、ロイヤルカスタマーを作り、さらにケータイに入ったら安くするという形にしたい」と語る。
引っ越しは、「オールドコモにしていただくきっかけになる」最適なタイミングと考えていることが分かる。また、引っ越し時の提案は、既存ユーザーの引き留めにもつながるという。「引っ越しで東京電力管内から関西電力管内に変わると、電力会社も変えなければいけないイメージが強いお客さまが多い」からだ。
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