ソフトバンクの5G戦略 あらゆる周波数を最大限活用、SAエリアも拡大して体感速度を上げる(1/2 ページ)
ソフトバンクは5G SAの拡大に注力しており、東名阪の中心部だけでなく、その周辺も広範囲でSA化を進めている。TDDやFDDの周波数を特性に応じて活用し、ユーザーの体感速度を上げていく。対応機種の少ないミリ波については、バックホールの回線としても活用していく。
ソフトバンクが12月10日、5Gネットワーク拡大の進展について、報道陣に説明した。
スマートフォンのトラフィックは毎年増加傾向にあり、快適な通信を実現するために通信キャリアは日々、さまざまなチューニングを行っている。5Gのエリア拡大は当然として、コアネットワークにLTEではなく5Gを用いるSA(スタンドアロン)や、高周波数で大容量の通信を可能にするミリ波の運用も重要になる。
5Gの端末比率や接続率は右肩上がりに 実効速度30Mbps以上の比率もアップ
ソフトバンクの5G人口カバー率は2025年3月時点で96%を超え、5G基地局数は10万局超に及ぶ。周波数の使い分けについては、LTEと5GのFDD(上りと下りで異なる周波数を使う方式)でカバレッジを確保し、大容量の通信は5GのTDD(上りも下りも同じ周波数を使う方式)で通信速度の向上を図っている。
5Gの端末比率や接続率は年々上昇しており、5G通信のデータ量は2024年10月から2025年10月にかけて約1.5倍に上昇しているという。ソフトバンク 執行役員 テクノロジーユニット統括 モバイル&ネットワーク本部 本部長の大矢晃之氏によると、ソフトバンクでは5Gを使ってもらえるようネットワークをチューニングしており、都心部では接続率40〜50%という箇所も出ているという。増えているトラフィックはほぼ全て5Gで吸収している一方で、LTEはほとんどトラフィックが伸びておらず、むしろ減少傾向にある。
接続率やエリアだけでなく、実効速度も重視する。Agoopの調査によると、下り速度で30Mbps以上を出せる比率は、2025年10月時点で、4キャリアの中でソフトバンクが69.6%で最も高いという結果が出ている。一方、下り速度の3Mbps未満率は、2025年10月時点でソフトバンクが1.9%で最も低かった。パケ詰まりの指標となるE2E応答完了時間では、ソフトバンクは63.5%が300ms以下となっており、他2キャリアよりも好結果を残した。
5G SA対応エリアも拡大 2025年度末めどにエリアマップへ反映予定
ソフトバンクは5G SAの拡大にも注力している。その前提として、帯域幅が比較的狭いFDDにおける5Gエリア化を積極展開しており、途切れずに5G通信できるよう努めている。そして、より帯域幅の広いTDDと組み合わせながら、最終的に5G SAとして運用する。
ソフトバンクが「SoftBank Air」で提供中の据え置き型ルーター「Airターミナル5」と「Airターミナル6」は5G SAに対応しており、5G導入初期からSA対応デバイスを展開している。大矢氏によると、5G対応のSoftBank Air端末は7〜8割に達しているという。
5G SAエリアは順調に拡大しており、5G SAエリアの100mメッシュ数は、2024年3月比で約13倍に拡大したとのこと。同じくAgoop調べではあるが、これは他の3キャリアを大きく引き離している。特に2025年上期にエリアを大幅に拡大しており、東名阪の中心部だけでなく、その周辺も広範囲でSA化を進めている。
ただしソフトバンクは5G SAのカバー率を公表していない。その理由について大矢氏は「広げようと思えば広げられるが、端末の浸透率や周波数のバランスがある。ユーザー体感と端末の浸透率、アプリの使い勝手などの基準を決めて段階的に拡大している。ある程度ネットワークの整備が済み、チャレンジしても大丈夫なところから攻めている」と話す。
では、ソフトバンクの5G SAはどこで使えるのか。現状、5G SA対応エリアは、ソフトバンク公開している住所一覧で公開されているが、エリアマップ上では確認できない。この住所リストはPDFで2671ページもあり(2025年12月時点)、ファイル上で文字列を検索しないとスムーズに確認できない。大矢氏によると、5G SA開始当初は狭い範囲だったのでマップに載せるに及ばなかったが、マップで見せる価値が出てきたタイミングで反映するという。その時期は「2025年度末」を想定しているとのこと。
5G SAを活用して舞浜エリアの通信品質が改善
5G SAのメリットとして、大矢氏は通信品質の向上を挙げる。LTEや5G NSAに比べて、実効速度や応答完了時間が向上したデータも出ている。5G SAを活用したスポット対策の一例として、大矢氏は舞浜エリアの改善を挙げる。東京ディズニーランドや東京ディズニーシーなどでにぎわう舞浜エリアでは、パケ詰まりの対策で苦労していたが、5G SAを導入したことで、SAの通信ログが2025年10月から12月にかけて10倍伸び、応答完了時間も速くなったという。「局地的に人がものすごく集まる場所でも、5G SAを活用することで体感が上がっていく」と大矢氏は手応えを話す。
ただし5G SAに接続していたとしても、それが分かる表示はなく、ユーザー側はSAなのかNSAなのかを判断することはできない。5G用の周波数で通信する場合は「5G+」とピクトエリアに表示されるが、他の表示でSAと示すことはあり得るのか。大矢氏は「(表示が)増えすぎても混乱するので、意味のある見せ方にする必要がある」と話す。端末への実装も含め、ソフトバンクが単独で決められるものではなく、他キャリアとの連携が必要であることも示唆した。
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