値上げのソフトバンクが仕掛ける「PayPayカード ゴールド」シフト、新プラン移行の障壁になる懸念も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクは新料金プラン「ペイトク2」など3種を発表し、既存プランも7月1日から値上げを行う。値上げの背景には原価高騰があるが、衛星通信対応や海外ローミング無料化などの付加価値で納得感を図る。新プランはPayPayカードゴールド保有者の優遇を鮮明にしており、経済圏への囲い込みを加速させる狙いだ。
強まるゴールドカード推し、契約者獲得は維持できるか?
ネットワーク品質を武器に値上げに踏み切ったソフトバンクだが、新料金プランにはもう1つの狙いがある。それが経済圏との親和性だ。中でも、現在急速に契約数を伸ばし、先行する楽天カードやdカードへのキャッチアップを図るPayPayカードとの連携が強化されている。その特徴は、現行のペイトクとペイトク2を比較すると分かりやすい。
ペイトク無制限では「PayPayカード割」が設けられていたが、その額は187円と少額だった。これに対し、ペイトク2ではPayPayカード割がノーマルカードとゴールドカードに分かれ、前者は330円、後者は550円と割引幅が拡大している。先に述べたように、ペイトク2の基本料である1万538円は値上げ後のペイトク無制限の1万175円よりも高いが、ゴールドカード契約者であれば、割引適用後は同額の9988円になる。
その上で、ペイトク2ではゴールドカードをひも付けている場合、PayPayでの支払いに対して現状の2倍である10%還元を受けられる。上限額は4000円と変わらないものの、より少ない利用でそこに到達可能になる。
既にゴールドカードを契約しているペイトクの契約者には還元率アップやローミングの無料日数が増えるだけでメリットがあるため、「すぐに移られた方がいい」(同)。値上げはしたものの、ゴールドカードを利用すれば、その影響を最小限に抑えられるように設計されているというわけだ。ただし、ペイトク2、テイガク無制限、ミニフィット2では、PayPayカード ゴールドでソフトバンクの通信料を支払った際に還元されるPayPayポイントが、従来の10%から1%に変更される。
一方、ペイトク2はゴールドカードがないとPayPayの還元上限額が3000円まで下がる。ゴールドカードがない利用者がペイトクから移行すると、値上げ幅が大きくなる上に還元額も下がるというわけだ。
「ゴールドカードに寄せたか」という質問に対し、寺尾氏は「はい」とコメント。「通常のカードよりもゴールドカードの方が決済単価も高くなるため、少しゴールドカードに寄せた」とその理由を話す。ゴールドカード獲得の仕掛けは、2025年に導入されたY!mobileのシンプル3でも導入されていたが、それをソフトバンクに拡大し、なおかつPayPay利用時の還元率や還元額と連携させた格好だ。
ただ、既存のペイトクやメリハリ無制限+のユーザーが、ゴールドカードを作ってまで料金プランを変更するかは未知数といえる。料金プランの導入に合わせ、年間100万円の利用で1万1000ポイント還元を受けられる新たな特典でゴールドカード契約のハードルは下げるものの、既存のペイトク利用者がペイトク2のために契約するメリットは少ない。還元率は10%に上がるが上限額自体は変わらないため、PayPayでの決済額が大きいペイトクユーザーにとっての大きな差が海外ローミングの無料日数の違いにとどまるからだ。
新料金プランが導入される6月2日に合わせ、PayPayカードもゴールドカードの特典を変更する。年間1000万円以上の決済で年会費相当の1万1000ポイントを還元するが、新料金プランでは通信料の10%還元が1%に下がる
寺尾氏が「(現行のペイトク利用者は料金プランを)ステイしてもそれほど問題はない」(同)と語るように、移行が進まない可能性もある。2023年のサービス開始から約2年半で200万契約を突破したペイトクは、ソフトバンクブランドの契約者を増やす起爆剤にもなっていた。新たに加わるゴールドカードという条件は、経済圏拡大の効果がある一方で、ユーザー獲得の勢いを落とすもろ刃の剣になってしまうかもしれない。
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