News 2002年2月19日 08:49 PM 更新

次世代大容量光ディスク規格「Blu-ray Disc」――その中身は?(2)

 映像の記録には,デジタル放送との親和性が高い「MPEG2トランスポートストリーム」を採用。デジタルハイビジョン放送を高画質のまま記録したり,映像とともに受信する他のデータを同時に記録することも可能になる。 また,ディスクに書き込まれたIDによって高度な著作権保護機能を付加することができる。データ転送レートは36Mbpsと高速で,高画質映像を高品質で記録することができる。「デジタルハイビジョン放送は24Mbpsなので,十分対応できる」(三木氏)。

 Blu-ray Discの主な仕様は以下の通り。

規格名称 Blu-ray Disc
記録容量 23.3/25/27Gバイト
レーザー波長 405ナノメートル(青紫色レーザー)
レンズ開口数 0.85
データ転送レート 36Mbps
ディスク直径 120ミリ
ディスク厚 1.2ミリ(光透過保護層厚:0.1ミリ)
記録方式 相変化記録
トラック方式 グループ記録
映像記録方式 MPEG2
音声記録方式 AC3,MPEG1 Layer2,ほか
映像音声多重化方式 MPEG2トランスポートストリーム

 今回の規格は,405ナノメートルという青紫色レーザーの波長やカートリッジ方式のメディア,27Gバイトという記録容量をみても分かるように,ソニーがパイオニアやPhilipsなどと共同で開発していた「DVR-Blue」方式がベースとなっている。つまり,次世代大容量光ディスクではソニー陣営が一歩リードしたということになるのだ。この件についてソニーは「Blu-ray Disc規格は,あくまでも各社による話し合いによって決められた仕様で,どこが主導権を握っているということはない」と否定する。

 さて,この次世代大容量光ディスクビデオレコーダーだが,商品化はいつ頃になるのだろうか。これまで青色レーザーを使ったビデオレコーダーの製品化は,各社とも地上波デジタル放送が開始される2003年を目標に開発が進められてきた。しかし,今回の発表会での商品化について各社のコメントは「昨年のCEATECでレコーダーを参考展示したが,今日やっと規格が決まった段階。商品化の時期は決まっていない」(ソニー)。「規格が次のバージョンになったら,商品化を本格的に検討。現在のところ未定」(パイオニア)。「全くノーコメント」(松下電器)と,各社とも明確な時期を明らかにしていない。

 製品化に向けての最大の課題は,青色レーザーの開発が遅れていることだ。以前より,青色レーザーは寿命の短さが指摘されていた。昨年10月のCEATECで関連各社に聞いても,その寿命はまだ数百時間というレベルという状況だった。また,本格普及が始まったときに,青色レーザーの特許を持つ日亜化学だけの生産で果たして間に合うのかという点も懸念されるところだ。

 この点についてソニー執行役員常務の西谷清氏に尋ねたところ「青色レーザーの寿命は,昨年末に6000時間以上を達成するなど問題ないところまできている。また,日亜化学では月産50万個の生産体制を持つと聞く」と,青色レーザー生産に関する懸念を一蹴した。

 さらに西谷氏によると,Blu-ray Disc規格ではレーザーの波長が405ナノメートルならば,ピックアップ部はどんな方式でもかまわないという。つまり,松下電気産業が開発したSHG(second harmonic generation)方式の青紫色レーザーでも,405ナノメートルという波長さえクリアできれば,採用できるというわけだ。赤色レーザーの波長を半分にして青紫レーザーを実現するSHG方式は,日亜化学の特許にも抵触しないため生産コストを抑えることもできる。「ソニーも独自に青色レーザーの開発を行っている。本格普及時も生産面の不安は少ない」(西谷氏)。

東芝は独自規格で先行?

 ところで,今回のメンバーには東芝の姿が見当たらない。青色レーザーを利用した大容量光ディスク分野に力をいれいていた企業の1社だけに,気になるところだ。

 先月,米国ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)2002では,東芝が片面1層で30Gバイトの容量を持つ青色レーザー利用のDVDビデオレコーダ試作機を展示していた(1月10日の記事参照)。同社は2月にもDVD ForumにDVD-Blue(仮称)の東芝案として提案を行う。

 今回の新規格に東芝が参加していない件についソニーの西谷氏は「Blu-ray Disc規格は,DVD Forum内での話し合いではなく,学会の中で各社の技術者同士が話し合って徐々に決まっていった。今日出席している9社はDVD Forumの会員でもあるので,技術面だけでなく,普及活動などもあわせて話し合っていきたい。もちろん,DVD Forumのメンバーである東芝にも声をかけることになるだろう」と話している。

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[西坂真人, ITmedia]