特集:サーバー型放送で何ができる?(前編)
WOWOWのVoDは“富山の置き薬”(1/2 ページ)
最近、イベントなどで頻繁に耳にするようになった「サーバー型放送」。2005年ーーつまり来年には一部でサービスが開始される予定になっているものの、その姿はなかなか見えにくい。よく知られているものは、大容量ストレージを搭載したチューナーが自動的に番組を録画し、番組に付加されたメタデータを使って何か便利なことができる。そんなところだろうか。
今回の特集では、デジタル放送の新しい挑戦といわれるサーバー型放送に焦点をあて、想定されるサービスの姿と進捗状況をレポートする。前編、中編の2回では商用サービスへの適応を進めるWOWOWのアプローチ、後編はNHKと民放各局が取り組むメタデータの活用法を紹介する予定だ。
| 第1回 | WOWOWのVoDは“富山の置き薬” |
|---|---|
| 第2回 | “パッケージ配信サービス”でDVDを作る |
| 第3回 | メタデータの使い道、使い方 |
サーバー型放送の概要
サーバー型放送を一言で説明すると、大容量ストレージを統合した受信機を使う新しいデジタル放送サービスだ。通信メディアとの連動による課金やメタデータの利用、それに伴う著作権保護方式といった新しい試みが多く盛り込まれ、1セグメント放送と並ぶ、次世代の放送サービスとして期待されている。
サーバー型放送は、もともと米国「TV-Anytime Forum」に対する日本側のアプローチとしてARIBが検討をはじめたが、情報通信審議会の答申を経て、2003年9月には放送局やメーカーなど66社からなる「サーバー型放送運用規定作成プロジェクト」(通称:サーバーP)が発足。2005年の放送開始を目指して本格的な検討が行われている。
サーバーPの役割は、各デジタル放送で横断的に利用できる運用規定、著作権保護方策、受信機の仕様などを策定すること。2004年秋をメドに最初の運用規定(フェーズ1)を提出し、それに沿った受信機が2005年中に出荷できる体制を整える方針だ。
一方、WOWOWはサーバー型放送方式を利用した商用サービスの計画を他局に先駆けて発表した。これは、2003年8月29日に行われた「BS放送のデジタル化に関する検討会」で明らかにしたもの。SDクオリティのVoD(ビデオ・オン・デマンド)放送と、HDTVによる本格サービスを段階的に提供するという。
ファイル型サービスのメリット
WOWOW経営企画部の柳川良文参事は、いちはやくサーバー型放送のビジネスモデル構築に着手した理由を“ニーズ”という言葉で示した。「放送は、1つのものを多数の人に配信することには適しているが、個人のニッチな嗜好に合わせるのは適さないメディアだ。ニッチな嗜好をくみ取るため、スカパー!をはじめBS/CSデジタル放送など多チャンネル放送が浸透してきたわけだが、時間に縛られている点は変わらない」。
HDDレコーダーなどの普及などにより、個人的なタイムシフト再生は当たり前になったものの、デジタル放送への要望を尋ねたアンケート調査では、84%の人が“好きな時間に、好きな番組を見たい”と答えているという。サーバー型放送なら、こうしたニーズを満たすことができるというのがWOWOWの考えだ。
サーバー型放送では、伝送方法により大きく2つの方式に分けられる。それは、リアルタイム視聴可能な“ストリーム型サービス”と、HDDなどの大容量メディアに蓄積して初めて視聴可能になる“ファイル型サービス”。とくに、民放各局やWOWOWが注目しているのが後者。ユーザーは、知らないうちに蓄積された番組を、好きな時間に視聴できる。
また、ファイル型サービスには、放送局側にも見逃せないメリットがある。その仕組みは、PCのファイルダウンロードを思い浮かべるとイメージしやすい。たとえば、64KbpsのISDNでは120Kbpsのストリーミング番組を視聴することはできないが、時間さえかければ、10Mバイトの番組ファイルでもダウンロードすることは可能だ。ファイル型サービスも考え方は同じ。番組を1つの大容量ファイルとして扱うため、夜中のうちに少しずつダウンロードを行うなど、帯域幅や時間に縛られない番組配信が可能になる。
裏を返せば、従来のストリーム型ではSD番組1つも流せないような狭い帯域も、ファイル型サービスなら有効活用できるわけで、周波数利用の逼迫が問題視されている放送業界に歓迎されるのはよく分かる。地上デジタル放送によって電波の効率的な利用が可能になるとはいえ、余裕が出るのはまだ先の話。たとえばWOWOWでは、デジタル放送、データ放送、ラジオ放送の3種で「割り当てられた周波数には、全く余裕のない状態」だ。
そこで同社は、「まず、既存放送をなんとか工面し、狭いながらもファイル型サービスの伝送帯域を確保する」。もちろん、中長期的には新しい周波数帯の追加を求めていく考えだが、まず既存の割り当て周波数帯を活かし、2005年秋をめどにSD画質の“VoD(ビデオ・オン・デマンド)”サービスを開始する計画だ。
オンデマンド放送は“新作コーナー”
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