IPソリューションフロンティア:技術
IPネットワークの進化の展望
高まる「信頼性」への要求
現在、時間や場所、状況に制限されず、利用したいサービスをストレスなく利用できる“ユビキタスネットワーク”実現への取り組みが盛んに行われている。その根幹となるIP ネットワークは、「高速化」「入り口の多様化」といった伝送技術の分野では、基本的なものは、ほぼ出尽くした(図1参照)。
「高速化」については、ADSLなどブロードバンドアクセス技術が普及し、バックボーン回線もイーサネットの伝送速度が10ギガビット/秒まで向上した。「入り口の多様化」についても、無線LANが普及し、第3世代携帯電話通信が実用レベルにまで達した。
こうしたIPネットワーク技術の進歩は、ユーザーのネットワーク活用法にも、質的な変化をもたらした。電子メールやWebといった従来からの活用法だけでなく、IP電話など「高い信頼性」を要求する活用法が普及してきているのである。
従来のままでは、IPネットワークは、信頼性の面では問題がある。このため、品質保証やセキュリティ対策に対するソフトウェア機能が新たに開発され、実装されている。
ソフトウェア機能の多様化
品質保証やセキュリティ対策は、IPネットワークにとって重要なソフトウェア機能である。しかし今日、さらに多様なソフトウェア機能が求められている。
たとえば、昨今、無線LAN上でIP電話が利用できるようになった。これにともない、IPネットワークには、ユーザーが有線端末と無線LAN端末を手軽に使い分けられるソフトウェア機能が必要となる。今後、デジタル情報家電による放送と通信の融合や、機器と機器の通信が加わることで、この傾向は一層強くなると考えられる。また、最近では、認証機能の応用によってユーザー識別が可能になり、ユーザーごとにIPネットワーク構成を最適化できるソフトウェア機能が実現しつつある。こうしたソフトウェア機能の例は、枚挙に暇がない。
現状においては、ネットワークエンジニアが、手作業でこれらのソフトウェア機能の実装を行うのが一般的である。しかし、今後、取り扱うソフトウェア機能が増えることによって、IPネットワークはますます複雑化していく。ネットワーク設定の自動化の要求は、オペレーションの簡易化のために、ますます強くなっていくはずである。
このため将来的には、装置自身が、個別のユーザーやアプリケーションに必要な機能を把握し、装置どうしが必要な情報を交換することで、設定を自動更新することになるであろう。たとえば、違反行為や遅延を発見した場合、サービスを継続的に利用するために、IPネットワークは、まるで生き物のように自律的に設定を切り替えるようになるはずである。
こうしたIPネットワークの「インテリジェント化」については、NTTグループが、次世代ネットワークのコンセプトとして、「レゾナントコミュニケーション※」を掲げ、ソフトウェア機能の開発に取り組んでいる。
ネットワークサービスのユーティリティ化
IPネットワークのインテリジェント化は、ネットワークサービスを提供する事業者に変化をもたらすことになる。
まず、ネットワークエンジニアに必要なスキルとして、ソフトウェアの知識が求められ、その比重はさらに大きくなっていく。
次に、提供するネットワークサービスは今日とは違う形態になる。あらゆるソフトウェア機能を備えた万能なサービスは、一部の大手事業者に限られ、事業者は得意分野のソフトウェア機能に特化し、個性とも言える特徴をもつことによって、他社と差別化を図るようになるであろう。これにより、ユーザー企業は、個別のアプリケーションに最適なセキュリティ、品質、帯域のサービスを選択して利用できるようになる。たとえば、金融サービスなどミッションクリティカルなアプリケーションの場合は「高価だが信頼性あるIPネットワーク」、データ転送など高い信頼性を必要としないアプリケーションの場合は「信頼性は低いが安価なIPネットワーク」といった使い分けがなされるようになるであろう。
こうして、ユーザー企業は、今後、必要十分なネットワークリソースや機能に見合った対価を支払うようになる。IPネットワークはユーティリティ化の方向に向かっていくことになると思われる。
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