区域外再送信問題、いよいよ決着へ(2/2 ページ)
そう考えれば、加入者への配慮という事情を理由として、区域外再送信を止めることはできないという論法は成り立たなくなる。
一方、サンテレビが放送しているのは阪神戦だけではないので、阪神戦以外の番組を見たい人はどうすれば良いかということになるのだが、そういう要望が多ければ、サンテレビから番組を買ってきて流すしかないだろう。
その理由は、区域外再送信が認められなくなることと同様で、デジタル放送になると、違法コピーへの警戒感も含め、権利者団体が非常に厳しい対応を取ることが予想されるからである。
サンテレビの区域外再送信を例に挙げると、権利者団体からの著作権料の支払いは、デジタルになって初めて請求されたわけではなく、アナログ放送の段階でも問題にはなっていたのである。区域外再送信が行われるということは、サンテレビを視聴している世帯が免許上よりも多くなるので、権利者団体へ支払う著作権料も増えることになるからだ。
サンテレビが放送する番組についての権利者である阪神球団や俳優、脚本家、音楽家たちからすれば、サンテレビと、もしくは不同意のまま再送信しているケーブルテレビ局と、どちらに請求すべきなのか明らかにしてほしいとの声は多かったという。
サンテレビからすれば、不同意なのに再送信しているケーブルテレビ局の分まで払う必要はないということになる。一方のケーブルテレビ局は、サンテレビの放送が区域外でも流れることによりサンテレビの広告収入が増えるはずなので、サンテレビが支払うべきだと主張した。
アナログ放送の段階では、両者の言い分の是非を見極めるのに時間をかけることもできたが、放送がデジタル化されることになると悠長なことは言っていられなくなる。権利者団体からの支払い請求は相当厳しくなることが明らかだからだ。また、そうした姿勢を見せることは、権利者団体としては当然の対応であると思われる。
地上波民放が区域外再送信を認めないと主張している以上、今後は不同意のまま再送信しているケーブルテレビ局に対して、権利者団体からの支払い請求がなされることになるだろう。訴訟問題に発展していく事例も増える可能性が高い。
ケーブルテレビの加入者に対して配慮するというのならば、そうした事態に発展させない形で番組を用意するように心がけるべきであろう。自分が加入しているケーブルテレビ局が訴えられているなどと聞くことは、決して快いこととは言えない。有料で加入しているのだから、その金額の範囲で正当なサービスを享受したいと考えるのが一般的だろうと思われるからである。
前述したように、阪神戦以外のサンテレビの放送番組を見たいという声が多く寄せられるのならば、ケーブルテレビ局としては、それをサンテレビから買ってきて流すべきだと述べた理由もそこにある。
本来、地上波民放とケーブルテレビ局は、お互いに協力し合うことにより、NHKに限らず民放をもあまねく視聴できる環境を構築してきた関係にある。そうした相互補完関係は、デジタル化になっても決して変わることのないものだ。区域外再送信の取扱いについても、それぞれの言い分が食い違うケースがあることは分かる。だが、デジタル化というエポックを機に、両者の新たな関係を構築し直すことの意義は大きいと思う。
西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。
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