誰がキラーコンテンツを“殺して”いるのか?
第6回 コンテンツ論から見る「放送」と「通信」(1)
ニッポン放送問題と「コンテンツ」
世間の話題を集めていたニッポン放送株買収劇は、フジテレビとライブドアが和解に達してほぼ決着し、日々のメディアで騒がれることも徐々に少なくなってきた。今回の一件は、企業の買収・合併(M&A)のあり方について様々な議論を巻き起こしたが、その一方で、メディア、コンテンツ・ビジネスに関しても様々な課題・問題点を浮き彫りにした。
ライブドアの堀江社長は、フジテレビとの提携に関して「コンテンツ配信などで放送局と協業したい」と語っていた。ところが、和解後の4月23日付けの産経新聞での取材に対して、堀江社長は「コンテンツをネットで流そうなんて別に思っていない。著作権がそんなに面倒くさいんだったら、やりたくないですよ」と発言している。
「コンテンツ」における、放送局の2つの機能
ネット上でのコンテンツ配信に関しては、著作権以外にも様々なビジネス上の課題がある。逆に、これまでの放送局のビジネスを見れば、その課題がより明確になるだろう。
コンテンツに関して放送局が担っている機能を大きく分けると、下記の2点である。
1.良質なコンテンツを生産する機能
2.コンテンツを多くの人々(視聴者)に到達させ、世間の話題を喚起していく機能
上の2つの要素は異なっているように見えて、実は不可分のものである。過去に論じてきたように、コンテンツの価値はその「質」のみによって決まるのではなく、「いかに社会的に話題になるか」、「いかに多くの人が見たい(聴きたい)と思うか」によって決まる。
「良質なコンテンツを集めてくれば、おのずと客は集まってくるに違いない」という発想は、圧倒的に供給が不足していた時代ならば成立したかもしれない。しかしながら、現在のような供給過剰の時代には、コンテンツをいくら集めたところで、ユーザーはその存在に気づきさえしない、ということも往々にして起こりうる。さらに、ユーザーに魅力を感じさせ、「お金を払おう」という気持ちにさせるのは意外に難しいことである。
ブロードバンドによる映像配信サービスの多くがユーザー獲得に苦戦しているのは、こうしたことが要因として考えられる。
重要なのは「いかにコンテンツの存在を人々に気付かせるのか」、「いかにコンテンツに関心を抱かせる(見たいと思わせる)のか」という点である。こうした点に関しては、いまだマスメディア(特にテレビ)に一日の長がある。
コンテンツにおける「放送・通信の融合」
次回に詳しく述べたいが、コンテンツは「キラー化」した時点ですでに価格は高騰してしまっており、それを購入する側はなかなか美味しい思いをすることはできない。メディア・ビジネスにおいては「キラーコンテンツを集めること」ではなく、「コンテンツをキラー化する」ことこそに利益の源泉がある。
現在、映像コンテンツ配信市場は急激な成長を遂げてはいるが、その市場規模はフジテレビ1社の売上高の10分の1に満たない(下図)。
今後、フジテレビとライブドアは「放送・通信融合領域での業務提携に向け、ニッポン放送を含めた友好的な協議を開始する」という。
コンテンツ・ビジネスにおいて、いかなる「放送と通信の融合」の形が考えられるのか。「放送」の持つ、多くの人(=マス)への到達力と話題喚起力を有効活用することができなければ「通信」は成功することはできない。一方で、「通信」と連動して「放送」側がいかに利益を上げていくのかに関しても、いまだ明確ではない。
どのようなビジネスモデルがありうるのか、両社の今後の動きは、これまで以上に注目に値する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
6
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR