麻倉怜士のデジタル閻魔帳
オーディオと音楽の本質(1/4 ページ)
近年、オーディオも機能/スペック偏重の傾向が強まり、アンプもマルチチャンネルのAVアンプ、CDプレーヤーもDVD/SACD/DVDオーディオなど多メディア対応のユニバーサルプレーヤーなど高機能/高付加価値商品が主流になっている。オーディオの評論も機能/スペックにフォーカスしたものが多い。
だが、本当にオーディオはそれでいいのだろうか?
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏による月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回は音楽理論も専門分野の1つで、大学(津田塾大学)で音楽の教べんもとっている麻倉氏に、“音”ではなく“音楽”という観点からみたオーディオのあり方――“オーディオと音楽の本質”について語ってもらった。
――自身のオーディオ論について聞かせてください。
麻倉氏: エジソンがレコードを作ってから以降、オーディオは“音のカンヅメ=パッケージメディア”をどう再生するかがポイントになっています。つまり「原音再生」が目標になっているのです。その究極の原音を求めた例としては、日本ビクターの「生演奏とのすり替え実験」などが有名ですね。でも、原音再生の“原音”って何でしょうか?
私が考えるオーディオは、“音楽”を再生する道具であるということ。音楽を聴くためにオーディオはあるのです。さてその“音楽”とは何かというと、演奏の状況/解釈/特徴にはじまり、さらにもう少し踏み込んで、音楽とはどういうもので、誰が作曲して、どういう思いで、どういうシチュエーションで、どういう技法で、何を訴えたいために作ったのか、というところまで追求してみるのです。
機器設計の立場では、音の原点ともいえるミキサールームの音のレベルにいかに近づけるかが大事ですが、われわれユーザーの立場からオーディオを楽しむときには、その先に「音楽そのもの」というものがあるのではないか。オーディオの論議で今まで欠けていたのはこの“音楽そのもの”ではないかと考えたのです。周波数特性が良い、ダイナミックレンジが広い……といった“音”そのものもの論議はあるのですが、作曲家のパッションやコンセプトがどのくらい感じられるかといった“音楽”そのものの論議はこれまであまりなされていませんでした。
SACDやDVDオーディオの登場で、演奏会場の“空気感”まで伝わるようになりました。そうなるとオーディオも、「いかに音楽の感動を伝えてくれるか」が、メルクマールになる時期がそろそろきているのではないでしょうか。
私がオーディオを選ぶ時は、クオリティもさることながら、その音に「音楽性」があるかどうかを、最大のポイントにしています。音楽性とはちょっとわかりにくい概念ですが、その音楽に込められた作曲者の思い、コンセプト、演奏家の解釈、音楽的意思……などをきちんと表現する力があるかということです。それが、「音楽再生装置」としてのオーディオではもっとも大切なことなんですね。単に周波数特性が良いとか、ダイナミックレンジが広いというだけでは、その目的には不十分なのですね。CDプレーヤーのソース機器、アンプの信号処理/増幅機器、スピーカーの電気/振動変換機器のそれぞれのステージで、「音楽性」が必要とされてきますね、
“音楽”とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
3
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
4
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
5
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
6
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
7
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
8
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
9
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
10
松本デジタル相、24.6万件漏えい可能性について説明 「既知の脆弱性を対応前に悪用」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR