小寺信良
PSE問題報道の舞台裏に思う(3/3 ページ)
メディアの中で生きるとは何か
メディア人としてどうあるべきかというのは、なかなか学ぶのは難しい。現場ではもっとヒドイことをして取材する連中は大勢いるわけだし、そういう姿を見ていると、自分もそこまでやっていいのか、あるいはそこまでやらなければいけないんじゃないか、と錯覚してしまう。
筆者も記者発表会などで、多くの報道陣と同じ席に座ることも多いのだが、高慢な物言いで稚拙な質問を繰り出す大新聞の記者を見るたびに、恥ずかしい思いをする。また取材中の筆者の腕を無言で掴んで引き下がらせてまで、新製品の絵を撮ろうとするニュースカメラマンに出くわしたことも、1度や2度ではない。
ワンカット撮り直すぐらい、10秒程度のロスにしか過ぎない。カメラを止めて一言声をかけるぐらい、なんということもないだろう。このような、テレビカメラが一番エラい、新聞記者が一番エラいと思っている輩に出会うたびに、こいつは先輩から何を教わってきたのかと、ひどく残念に思う。
ここであえて自戒の念も込めて苦言を呈すれば、報道というメディアの中で生きる者は、自分達と接する人すべてが血の通った人間であり、敬意を払うことを忘れてしまってはいけない。目的の途中にある人間は自分の伝言を伝える電線ではないし、取材対象を挑発したり怒らせたりして、ほかのメディアよりちょっとでも面白い絵を撮ろうとか、そういう行為はメディア人として以前に、人間としてのモラルに反する。
報道の現場は1分1秒を争うなどというが、本来競争をする相手は、競合他社ではなかったはずだ。取材というのは、誰かに教えて貰うという行為である。どっちがエラいだの、どっちが金払ってるだのの問題ではなく、お互いが気持ちよく話ができたほうが、別の意味でメリットがあるのではないか。
ほかの人に言わせれば、40過ぎてもこんな青臭いことを言うから、筆者はジャーナリストとは言えないし、甘いのだそうである。だが筆者は、それならジャーナリストと呼ばれなくても結構だし、取材対象と一緒に問題を考えて記事を書くという現在のスタイルが、いつかなんとかいう名前の職業になるのではないかと夢想している。
マスコミという名称が嫌悪感を持って使われないよう、報道する側もできる限りの努力を惜しむべきではない。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
3
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
4
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
5
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
6
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
7
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
8
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
9
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
10
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR