コラム
PS3発売延期で明らかになった次世代DVD両陣営の“脚質”(2/3 ページ)
当初から2006年春のBDプレーヤー発売は無理だった?
しかし、そもそも、BDプレーヤーを2006年春に市場投入することは困難ではないかという観測があったことも事実だ。筆者は2006年1月に米ラスベガスで開催されたInternational CES 2006のBDA(Blu-ray Disc Association)ブースで各社担当者に製品の発売時期を尋ねたが、積極的な姿勢を示すメーカーですら「発売時期は夏ごろ」としており、「2006年中」というニュアンスで語るメーカーが多かったことを記憶している。
米Sony Pictures Home Entertainment(SPHE)はBDソフトの市販を5月23日から開始すると発表し、韓Samsung Electronicsも同日からBDプレーヤーを発売するとしているが、「2006年春」と呼べる時期にアクションを起こすメーカーは今のところこの1社だけだ。
米Pioneer Electronicsや米Sony Electronics、蘭Philips ElectronicsもBDプレーヤーの発売を発表しているが、その時期は2006年6月(米Pioneer Electronics)や2006年夏(米Sony Electronics)、2006年後半(蘭Philips Electronics)であり、多くのメーカーは夏以降に焦点をあわせている。米SonyのBDプレーヤーもその発売は7月であることが先日明らかになっている。
これらのアナウンスが出されたのは2006年1月のこと(米Sonyのアナウンスは3月17日)。各社がAACSを含めたBD規格の進行状況を検討した上で、“BDプレーヤーの本格的な離陸は夏ごろ”と判断したことは想像に難くない。
一方のSCEは2005年5月に「PS3、2006年春に発売」という発表を行っている。発表に踏み切った背景には、前述した「2005年8月末にはBDに関する規格策定が終了すると信じていた」という読みがあったのは確かだが、久夛良木氏もここまでAACSの策定に時間がかかるとは想像していなかったに違いない。
急浮上する次世代HDMI、HDMIそのものを牽引するPS3
もうひとつ、久夛良木氏が遅れの理由として挙げたのが、次世代HDMIだ。知られているようにHDMIは音声と映像を非圧縮で再生機器から受像器(テレビ)へ伝達できるデジタルインタフェースで、制御信号をのせることによって接続機器間の連携を取ることも容易になる(制御部分の機能を独自拡張したのが、松下電器産業の「ビエラリンク」だ)。
PS3は2006年1月に発表された次世代HDMI(バージョン2.0という名称が予想されている)を搭載する。次世代HDMIは伝送方式を改め、帯域幅を広げることで、色深度を1ピクセルあたり最大48ビットまで拡張するほか、音声と映像のズレを解消するリップシンク機能の実装やDolby TrueHD、DTS-HDのサポートも行われる。
これまでのHDMIでは最大でも約1677万の表現にとどまったが、色深度の拡張によって次世代HDMIでは10億色以上の表現が可能になる。色表現の増大が視聴環境へもたらす影響はわずかなように見えて、じつは大きい。10億色といえば人間の目が認識できる限界を超えた色数だが、PS3をBDプレーヤーとして考えた場合、スタジオ編集レベルの映像をそのままリビングで再生できるようになるからだ。
受像器(テレビ)側がまだそこまで対応しておらず、BDビデオソフトがどこまで高いクオリティで登場するのかは未知数だ。当面は既存のHDMIでもまったく問題ないという事態は十分に想像できる。しかし、「PS3は毎年買い換えるものではない」という久夛良木氏のコメントは“BDプレーヤーとしてのPS3は少しぐらいオーバースペックでちょうどいい”というニュアンスを含んでいるように感じられる。
現在、HDMIは現在バージョン1.2aまで規格策定が完了しており、搭載機器もAVアンプやテレビ、DVD/HDDレコーダーなど、かなりバリエーションも豊富になっている。ただ、日本国内ではHDMIを利用しなくてはならないコンテンツがまだ少ないことから、搭載機器はまだ中~上位機種が主だ。
テレビに限れば、2005年夏以降に発表された多くの製品で搭載が進んでいるが、中型~大型クラスの製品までにとどまっており、20インチ以下のパーソナルユース製品はD端子までというケースが多い。しかし、各メーカーとも数百万台レベルで出荷される製品(しかも話題性も高い)の存在をおろそかにするとは考えにくく、PS3投入と時期を同じくしてHDMIの普及も加速されると予想される。
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