麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
「液晶」「プラズマ」どちらを選ぶ?(3/4 ページ)
――確かに最近のパイオニア製品は、以前の“高画質のイメージ”を取り戻した感がありますね。
麻倉氏: ええ。昨年秋の時点で、今年春のフルHD投入は分かっていましたので「WXGAでこの高画質なら、フルHDになったらどんなことになるだろう」と期待していたのですが、私の予想をはるかに上回る高画質にあらためて驚きました。これは“フルHD"がすごいのではなくて、コントラストや階調などを一緒に高めたトータルな“フル画質”がすごいのです。
ここで示唆的なのは、フルHDはもともと、来る信号に対してすべて出していこうというスタンスなので、素直に作るとモニター的なものになってしまう。ただし放送やパッケージメディアには、いい情報だけではなく、ノイズやあいまいな映像といった悪い情報もあるわけで、モニター的な表現をしてしまうとそうした“放送のアラ”も一緒に見えてしまうのです。だが我々一般ユーザーが使うテレビでは、いいとこだけ見せてもらいたい。
今回のパイオニアの50V型フルHDプラズマは、モードによって、画質設定がかなり違うのが特徴です。リビングモードでは明るい室内でもクッキリでデジタルハイビジョンの爽快感が楽しめる設定になっているのですが、映画モードは“精密なマッタリさ”があるのです。フルHD映像の中のボケたところを、くっきりさせるのではなくボケたまま出すという表現がしっかりとできている。「高精細にボケている」という感じですね。家庭内における“ディスプレイと我々の関係意識”の中で革命的な製品に仕上がっていると思います。ここまで表現力のあるディスプレイは初めてですし、それが、ちょうどフルハイビジョンのショールームともいうべき、次世代DVDの登場とともにデビューしたことは、何とタイミングが良いのだろうと思いました。
――昨年後半からプラズマで絶好調の松下はどうでしょうか。
麻倉氏: 液晶がまだ“表示”の段階にあるのに対して、プラズマは表示から“表現”のディスプレイへと進化しつつあるのですが、それを明確に打ち出していたのが、昨年から「VIERAで映画で観よう」とアピールし続けていた松下ですね。
今春の新しいVIERAは、従来から好評だった高画質はキープしつつ、HDMIを活用したビエラリンクで新しい提案を行っています。スパゲッティ状態の配線や山積みのリモコンを解消し、1本のケーブル、1つのリモコンですべてできるというのは、AV製品が求めていた理想的な使いやすさです。問題点は自社の製品としかリンクできないところですけどね。
――プラズマ市場を創造してきた日立の動向は?
麻倉氏: 一昨年ぐらいまではプラズマをリードしていたのが日立です。日立がプラズマ市場を作ってきたといっても過言ではなく、2001年段階で、32V型で60万円の製品など日本のユーザーに合った新提案なども含めてユーザーにも評価されてきました。松下のVIERAが登場してきた時あたりから日立の存在感が薄れてきたのですが、その原因は垂直統合がうまく機能していなかった点にあると、私は思っています。
ソリューション(問題解決)は、手段が多ければ多いほど良いわけで、デバイスの問題解決、セットの問題解決などがそれぞれ最適に進むことで良い製品が生まれてきます。いままでの日立は完全な垂直構造とはいえなかったのですが、ようやく最近になっては垂直統合が進んできたなという印象ですね。今春の新製品では、タテ方向の解像度を1024本から1080本にに増やしてきました。独自のALIS方式は、明るいけどいまひとつ黒の再現性に弱いという特徴がありましたが、デバイス側からコントラスト改善に工夫してトータルでの映像向上に結び付けています。新製品を見ると、ある意味で日立の復活かなと感じさせます。昨年秋のパイオニアの復活ストーリーとかぶる部分がありますね。
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