YouTubeで政見放送する「日本メガネ党」とは
自民党総裁選が安倍晋三氏の圧勝に終わり、新内閣に注目が集まる裏で、じわりと支持者を増やしている党がある。その名も「日本メガネ党」。メガネへの愛とこだわりを訴える組織だ。
日本メガネ党の政見放送は、動画共有サイトのYouTubeで見られる。「構造改革の次はメガネ改革」「メガネを含めて、この国が好きです」――メガネの漫才コンビ・おぎやはぎさんが、メガネへの愛をひたすら熱く語る。
実はこれ、アイ・トピア(東京都町田市)が運営するメガネ店・メガネストアーのプロモーション企画。有名タレントを起用したプロモーション映像を、企業が自らYouTubeに流したのは、これがおそらく日本初だ。
「映像をYouTubeで公開することには、賛否両論ありました」――同社販促企画部の本多宏哉次長は言う。YouTubeは著作権を侵害した映像も多く掲載され、権利者を悩ませているサービス。そんな場所でプロモーションできない、という意見も多かった。だが本多さんは、YouTubeの圧倒的なユーザー数がプロモーション効果を高めると考え、関係者を説得した。
政見放送にはメガネストアーの名も出てこない。ただメガネへの愛を面白おかしく語っている。広告らしくない内容が、全国の“メガネ党員”に支持されているようだ。
YouTube用にあえて“劣化”
第1回の「ご挨拶」に始まり、「しなやかな政治」「マニフェスト」「国民に仕える身」「国民との対話」と5回分公開。それぞれ3分程度で、日本メガネ党Webサイトで公開している。第4回まではYouTubeにも上がっており、1回あたり1万回近く視聴されている。
実は、同社が自らYouTubeに掲載したのは「ティザー編」と呼ぶ1分弱の予告コンテンツだけ。本編もユーザーの手によりYouTubeに転載されてしまったが、もともとの狙いは、ティザー編でネットユーザーの興味を喚起し、メガネ党のサイトに来てもらう――というものだった。
ティザー編は、YouTubeによくある素人動画のような雰囲気を出そうと、映像を一度VHSに落とし、劣化させてから掲載した。7月下旬の掲載から2カ月で、視聴数は3万以上。掲載開始以来、同社サイトへの訪問者数は3倍に跳ね上がったという。「ここまで注目してもらえるとは思わなかった」――本多さんは予想以上の反響に驚く。
メガネ党員、10万人に迫る
同時期に公開した日本メガネ党のWebサイトも、政見放送同様、企業色を感じさせない。メガネストアーの名は、ページの隅などに小さく書いてあるだけで、9割以上はメガネへの愛を語るコンテンツで埋め尽くされている。
サイトには、メガネ党の党是や機構図、党歌の歌詞などを掲載した。党是は「メガネは、偉大だ。メガネをかけた瞬間、人は皆、『メガネの人』になる」などといった内容で、機構図は「くもり防止局」「メガネロック認定評議会」などさまざまな部署を紹介。党歌はメガネへの愛を歌い上げる。
メガネ関連のクイズ「入党試験」も掲載した。受験すると、AからDまで4段階の“メガネランク”が表示され、ブログに張れる「党員証」のソースコードが表示される。これまで8万人以上が受験した。政見放送と連動しており、受験者が一定数に達すると、新しい政見放送が追加される。
“政党”らしいイベントとしては、10月7日まで「総裁選」を実施中。おぎやはぎ2人のどちらを総裁にするか、ユーザー投票で決める。総裁が決まった後は、毎月8の付く日に「党大会」を実施。「ラーメンを食べるときにメガネははずすべきか否か」などといった議題を議論していく計画だ。
「メガネへの愛情とこだわり」でブランド強化を
同社が日本メガネ党の企画を通じて伝えたいのは“メガネへの愛情とこだわり”。「物を売ることを前面に出すと、メガネへの愛情やこだわりを表現できない」ため、あえて企業色を薄め、作る側も見る側も楽しめるコンテンツを目指した。
プロモーションの目的は「メガネストアー」ブランドの再構築だ。「メガネ○○」という名のメガネ店は多く、創業30年経つメガネストアーも、消費者にその名が浸透し切っていないという。同社の売りである「メガネへの愛情とこだわり」を表現することで、イメージを構築していく。
企業色が薄い企画ではあるが、メガネ党Webサイトの隅に「メガネストアーは日本メガネ党を応援しています」などと書いたり、党員試験に「メガネストアー」と答えさせる問題を入れ込み、さりげなくアピールしている。
おぎやはぎさんが出演するテレビCMも同時に展開しているが、テレビCMに耐えるクオリティーの映像を製作するには、製作費が莫大にかかる上、CM枠も買わなくてはならずコストがかさむ。だがネットCMなら、テレビより荒い画質や音質でもOK。設置スペースとサーバさえ用意すれば、CMではまず不可能な、数分間の長時間動画も掲載できる。YouTubeを使えば、サーバを自前で用意する必要すらない。
テレビCMが数百・数千万人単位の広範囲の消費者にリーチするのに対して、ネットのリーチは数万人単位と小規模だが、メガネに興味のある人限定でアプローチでき、費用対効果は高いという。
ユーザー参加型のネットプロモーションは、方向を間違えると「炎上」につながる危険性もある。日本メガネ党は、露骨な企業色を出さず、参加する人に楽しんでもらえるよう配慮。「制作側も楽しんで作っており、楽しめなくなったらやめよう、と話している」という。「今後もいろいろな仕掛けを用意しているので、楽しんでほしい」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
日本人の大腸がん、約半数に“腸内細菌の毒素”が関与 40歳以下の発症は7割 東大・阪大が200人を全ゲノム解析
-
2
「コミューン」不正アクセスでLINEヤフー、Sansan、パナソニックでも会員情報漏えいの可能性
-
3
MicrosoftのナデラCEO、「SIモデルは“内部リスク”として扱うべき」とXに投稿 統制はモデルの外に置くよう提言
-
4
「お前たちのクラウドはわれわれのもの」 IDCFクラウドの管理画面に出た攻撃者のメッセージ 内容に運営元は
-
5
「男は狩り、女は採集」はどこまで本当? 約8割で女性も狩り、乳児連れの例も 過去100年の狩猟採集社会を調査
-
6
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
7
JR東日本、「えきねっと」「ビューカード」などで漏えいか メルアドなど最大609万件 IDCFへの不正アクセスで【追記あり】
-
8
新作映画「バイオハザード」公開で原作ゲームも大盛り上がり? 劇場でマンガ家が頷いた、その理由とは
-
9
AnthropicのAI、未解決殺人事件で警察に虚偽の情報提供 米政権は「通知と是正は義務」と警告
-
10
OpenAI、安全性研究者3人を解雇 本人らは「安全性を優先したため」と主張、同社は「機密情報の扱いに関する規定違反」と説明
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR