DRM対ハッカー、もはや業界は降伏するしかない?
米SlySoftのツールを使えば、著作権保護のための最新の暗号化規格「Advanced Access Content System」(AACS)のプロテクトを解除できるという最近のニュースは、デジタル権利管理(DRM)技術にとって最新の打撃となっている。そして、この事態を「もはやDRM技術には変化か死滅か、どちらかの道しか残されていないことの証拠」ととらえる向きも一部にはある。
「解除が簡単だったとは思わない。だが、それでも現にAACSは破られている。しかも、HD DVDドライブのファームウェアに対するハッキングもあったとはいえ、今回はソフトウェアの実装のせいでだ」とセキュリティベンダーCloakwareのCTO(最高技術責任者)、アレック・メイン氏は指摘している。「こうしたソフトウェア実装が、ハッキング攻撃に対してもっとしっかりした予防措置を取る必要があることは明白だ」と同氏。
SlySoftが最近リリースした「AnyDVD HD」は確かに、AACS LA(Advanced Access Content System Licensing Administrator)にとって頭痛の種となっている。AACS LAは、HD DVDとBlu-rayのディスクを違法コピーから保護するための暗号化技術をライセンスしている団体だ。AACS LAは最近、AACSのプロテクト解除コードが含まれる書き込みの許可をめぐり、WebサイトのDigg.comとの間でも論争に直面している(5月7日の記事参照)。
「DRMは後手に回っている。常に問題への対処を迫られている状態だ」とYankee Groupのアナリスト、マイク・グッドマン氏は指摘している。
同氏によると、そうした意味では、DRM技術はもはや機能不全も同然で、時間の無駄にほかならない。また同氏は、DRMのセキュリティを強化すれば、使い勝手で犠牲を強いることになるとし、従来より使いづらくなった製品を購入したいと思う人は少ないと指摘する。
「根本的に、DRMは単なるセキュリティの問題ではない。DRMは市場にビジネスモデルを強要しようとしているのだ」とグッドマン氏。
同氏によると、音楽業界は、デジタルの世界には通用しないビジネスモデルを推進しようとしている。デジタルの世界では、楽曲はWebを介して迅速かつ容易に広範なユーザーに配信できる。DRMは違法コピーの抑制に役立つとされているが、グッドマン氏のほか、同じくYankee Groupのアナリストであるアンドリュー・ジャクイス氏とジョシュ・マーティン氏は、「Kill DRM, Vol. 1: EMI's Move Underscores the Power of the Anywhere Consumer」(DRMに終止符? ――EMIの動きはインターネット時代の消費者の力を強調)と題した4月の報告書において、「DRMは有能なハッカーに対する効果的な防御壁を提供できずにいる」と指摘している。
「CSS(Content Scrambling System)からAppleのFairPlay、AACSの高精細DVDフォーマットまで、主要なDRM技術の実装はいずれも破られている」と同報告書には記されている。
Cloakwareのメイン氏によると、問題の一部は、メモリダンプすれば、ランダムな16バイトキーを非常に容易に見つけられる点にある(大半のデータやコードと比べて明らかに目立っているため)。
「ソフトウェア開発者はホワイトボックス化された暗号化手法のように、もっと高度な技術を用いる必要がある。メモリからでは暗号鍵を把握できないようにするのだ。それでも依然として、ハッキングは可能だろう。だが、そうした手法を破るためには、コンピュータ科学やハッキング、数学、暗号化について、それなりの経験を積んだ非常に有能なハッカー、あるいはおそらくハッカー集団が必要となるはずだ」と同氏。
物理メディアでのセキュリティ保護には、「メディアが製造され出荷される段階までしか、セキュリティを管理できない」という独特の難しさがある。つまり、セキュリティ機能をアップデートする必要が生じたとしても、そうしたアップデートはそれ以降に生産するディスクにしか適用できないということだ、とForrester Researchのアナリスト、ジェームズ・マクベイ氏は指摘している。
「出荷されてしまえば、ソフトウェアメーカーには対処のしようがない。結局のところは、デジタル配信に移行して、セキュリティ機能を即座にアップデートできるようにするほかないのだろう。すぐには実現しないだろうが、DVDの売り上げが年間230億ドルにも上ることを考えれば、業界がその保護に躍起となるのも当然だ」と同氏。
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