Digg炎上でHD DVD業界に波紋
これをインターネット版の無血革命と呼ぼう。Digg.comのユーザーによる暴動が、HD DVDのデジタル権利管理(DRM)を回避するコードが含まれた書き込みを削除するというDigg.comの決断を翻させた。
だが、Digg.comのこの方向転換は何の解決にもなっていない。それどころか、いまや悪名高いこのコードに関する炎上は、HD DVD技術とインターネット自身が直面する法的およびセキュリティ的問題を浮き彫りにしている。
書き込みを削除するという当初のDigg.comの決定は、ライセンス管理団体のAACS LA(Advanced Access Content System License Administrator)が先週Digg.comに送った警告の書簡に刺激されてのものだった。
AACS LAは、HD DVDを違法コピーから守るための暗号化技術をライセンスしている。Digg.comが書き込みを削除した行為は多くのユーザーの怒りを買い、怒ったユーザーは書き込みをサイトに復活させるキャンペーンを即座に立ち上げた。圧倒的な反対の前に同社は屈服し、反対したユーザーが勝利を収めた。
だが書き込みを削除しないというDigg.comの決定は、米デジタルミレニアム著作権法(DMCA)違反の可能性でAACS LAによる法的行為を引き起こす可能性がある。DMCAは、DRMを回避する技術の生成と配布を禁止する著作権保護法だ。
シリコンバレーの法律事務所Greenberg Traurig所属の知的財産担当弁護士、イアン・C・バロン氏は、この問題の判例は明らかだと語った。
「偉大な文学作品の話をしているわけではない。コピープロテクトを外すためだけに使われる短いコードだ」とバロン氏は言う。
バロン氏は、DeCSS(DVDの暗号を解読するプログラム)のコードを自分のサイトに掲載したエリック・コーリー氏がUniversal City Studiosに提訴された裁判を例に挙げた。連邦裁判所はコーリー氏の行為は憲法修正第1条(言論の自由)の保護下にはないとの判決を下した。
サンフランシスコの法律事務所Howreyのベン・ライリー弁護士は、この状況には多くの重要な問題が含まれていると言う。例えば、削除すべきコンテンツに関するDigg.comの責任はどの程度かという問題がある。特に今回、同社はコードに関する書き込みを何度も削除しようとし、屈服した。
また、コードを単に投稿するという行為が違法かどうかという問題もある。プロテクトを破るには、さらにソフトウェアと技術的知識も必要だからだ、とライリー氏。
「誰かがわたしにコードをくれても、どうしたらいいか分からない」(ライリー氏)
バロン氏によると、問題は法律が何を提供するかについての都市伝説にもあるという。
バロン氏は、自由主義者の多くは、自分たちが守られるはずだと信じているだけである種の行為が擁護されると信じていると言う。Digg.comはユーザーに降参し、譲歩するのではなく、これをユーザー教育の機会ととらえるべきだったと同氏は指摘する。
Digg.comのジェイ・アデルソンCEOは、AACS LAからはさらなる連絡は来ておらず、心配していないと語った。
「リスクはあるが、今現在はそれほど火急ではないと言える」(アデルソン氏)
アデルソン氏は、この出来事は著作権侵害に関するものではないと言い、問題のコードは数カ月前に最初に発見されたときからパブリックドメインだったと付け加えた。
だがそれは要点ではない、とバロン氏は反論する。
「インターネット上の複数の場所で入手できるからといって合法だということにはならない」(バロン氏)
AACS LAは今後の行動を計画しているかどうかについてコメントしようとしなかった。
調査会社Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・マキビー氏は、プロテクト解除の難易度を考えると、多くの人がこのコードを使うとは思えないと語る。だが、著作権侵害の観点からは、コンテンツ所有者が恐れるようなダメージを与えるには、ファイル共有サイトに掲載されたDRM解除済みコンテンツが1本あれば事足りるとマキビー氏は付け加えた。
セキュリティベンダーのCloakwareでCTO(最高技術責任者)を務めるアレク・メイン氏は、ハッカーを阻止するために、HD DVD業者にはやるべき事がもっと多くなるだろうと言う。
「HD DVD製造業者は、暗号鍵コードがメモリに取り込まれてないこと、デバイスからコピーされていないこと、ファームウェアにパッチが当てられていないことを確認することで、ハッキングを防止しなければならない」(メイン氏)
「このライセンス条件に業者はサインしている。業者がこの条件を守らなければ――われわれは業者の一部はそもそも守るつもりがないか、守るために必要な専門知識を持っていないと考えるが――これらのデバイスは新しいHD DVDディスクではもう動作しないため、破棄されることになる」
「これは、ビジネスを成功させ、ブランドを守りたいと考えるディスク業者やソフトウェア開発者にとって、ライセンス条件を守る強力なインセンティブになるだろう」とメイン氏は主張する。
とはいえ結局、どんなコンテンツ保護技術であろうとハッキングは可能だとマキビー氏は言う。
「映画会社側の希望は、高精細ビデオにより、デジタルダウンロードが従来のDVDの店頭購入やレンタルまでをも侵食することでDVD市場が干上がるのを見なくて済むようになることだ」(マキビー氏)
「だが、HD DVDのフォーマットがこれだけ早く侵害されるとなると、映画会社は安心してコンテンツをHDにできなくなり、ひいてはHD販売が減速し、著作権侵害の増加につながる」
マキビー氏によると、こうしたハッキングへの唯一の長期的な対抗手段は、コンテンツをコンシューマーが使いたがるあらゆるフォーマットに広く対応させることだという。
「コンテンツがPSPでも、ディスクでも、オンラインでも、Xboxでも、ビデオ・オン・デマンドでも、つまりどんな手段ででも見られるようになれば、筋金入りの著作権侵害者以外はコンテンツを盗みたいという欲望を持たなくなるだろう」(マキビー氏)
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