DTMブーム再来!? 「初音ミク」が掘り起こす“名なしの才能”(2/2 ページ)
ブームはニコニコ動画の外にも波及している。mixiには「初音ミクを描いてみよう」コミュが誕生したほか、ある同人漫画家は「初音ミクがかわいすぎるので」と初音ミクをテーマにした同人誌を作成。「オンリーイベント」と呼ばれる、初音ミク関連の同人作品限定の同人誌即売会もすでに企画されている。関連ニュースをまとめた「初音ミクニュース」というサイトも登場した。
「楽曲だけアップしたい」「著作権侵害が心配」という声も
「楽曲をアップしてみたいと思うけど、動画を作れないから……」と、冒頭の48歳男性は言う。ニコニコ動画はもともと、動画をアップするためのサイト。初音ミクの楽曲は、静止画と組み合わせてアップされていることが多いが、「『絵心がないから』と楽曲アップをためらっている人も多いのでは」。
著作権の問題で、既存楽曲のカバー曲を合法的にアップできないのも残念という。彼が解決策として期待するのは、かつてのNIFTY-ServeのMIDIフォーラムのような仕組みだ。DTMブームのころのMIDIフォーラムは、ニフティが著作権処理を行うことでカバー曲を合法的にアップでき、これがMIDI文化発展を下支えした(関連記事参照)。
「同じような仕組みで、初音ミク楽曲を権利侵害の心配なくアップできるコミュニティーのようなものがあれば、ぜひ公開してみたいのだが……」。彼は弁理士の栗原潔さんが企画している、カバー曲を合法的にアップロードできるサイトに期待をかけている。
ミクにハマる“2世代”
ニコニコ動画で初音ミク楽曲を聴いて触発され、楽曲作成を始めるユーザーも多い。ただ初心者には操作が難しいようで、2ちゃんねるには「初音ミク買ったはいいけど使えない奴」というスレッドも。mixiの初音ミクコミュニティーでDTMのベテランに操作法を聞く初心者ユーザーは多い。DTM経験ゼロのユーザーが勢いで初音ミクを手に入れ、作曲に四苦八苦する様子を公開しているブログもある。
初音ミクをきっかけにDTMに“回帰”する人もいる。かつてのDTMブームで熱狂し、最近はDTMから離れていた30~50代だ。「初音ミクのクオリティに感動し、久々にDTM機材に火を入れた」――30代のある男性はブログにこう書き込み、楽曲作りを始めた。冒頭の48歳男性は「ニコニコ動画にアップされるミクの曲には『岬めぐり』(1974年発表)など懐メロも目に付く。初音ミクブームは、わたしたちのような世代と若年層とで二極化しているように感じる」と話す。
初音ミクを企画・販売するクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さんも、高年齢層の購入が徐々に増えてきたと話す。「発売当初は、予約して購入する若いニコニコ動画ファンの購入が多かったようだが、最近はDTMを一度やめてしまった高年齢層の方がニュースなどでミクを知り、購入するケースが増えてきたようだ」
CD化、アニメ化、ゲーム化は……?
「初音ミクオリジナル楽曲を集めてCDにしてほしい」という声が、ユーザー間で盛り上がっている。CDやアニメ化、ゲーム化……佐々木さんは「みなさんが考え付く展開についてあらゆるオファーを、さまざまな企業からいただいている」というが、対応は慎重に検討していく方針だ。
「初音ミクは、色づいていないところがいいと言って下さるユーザーも多い。アニメなどになると、イメージが付いてしまう恐れもある。じっくり話し合いを持たせていただき、いい企画があれば実現させたい」
初音ミク発売以来、佐々木さんはミク関連の打ち合わせや取材に引っ張りだこ。急に多忙になったという。「初音ミクが支持をいただいているのはとてもうれしいが、この“熱”がどういう性質のものかは分からなくて。ブームなのかどうかすら……」と懐疑的に見ている面もあるようだ。
デビューから1カ月も経たない新人アーティストのミクだが、歌い、描かれ、アニメになり、踊り……猛スピードで多方面に成長中。個々のユーザーがスキルを発揮して自分なりのミクを作り、他ユーザーと一緒にその成長を楽しんでいる。
「今回のヒットは、電子楽器の新しい時代の幕開けだと考えている。新しいユーザーがDTMに興味をもってくれるのでは」――DTMマガジンを発行する寺島情報企画の藤田靖スーパーバイザーは期待する。
「1983年にヤマハが発売して一時代を築いたDX7というシンセサイザーがあったが、その音色に触発されて曲を作ったミュージシャンが世界中にいた。初音ミクには、DX7の当時の魅力に通じる、楽器としての力がある」(藤田スーパーバイザー)
DX7は、初音ミクの服装デザインのモチーフにもなっている。「最新技術による最先端のサウンドとして広く認知されて欲しいとの願いを込め、ヤマハの担当者を説得して使わせてもらった」という佐々木さんの思いは、早くも現実になりつつある。
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