「DRMあれば録音録画補償金は不要では」――JEITAが立場を説明
「DRMでコンテンツを管理できる時代に、私的録音録画補償金は本当に必要なのか」――エレクトロニクスメーカーの業界団体・電子情報技術産業協会(JEITA)が、私的録音録画補償金制度の必要性について、改めて抜本的な議論をすべきと呼びかけている。
MDやCD-Rなどデジタルメディアの販売価格に上乗せして徴収される補償金について、文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」で見直しが議論されてきた。
同委員会では制度の廃止を含めて抜本的な議論を行う予定だったが、最終的には補償金制度の維持を前提とした議論に終始。「補償金の課金対象をiPodやPCにまで広げるべき」といった意見も出た。議論は10月12日に発表された「中間整理」に議論がまとめられ、11月15日までパブリックコメントが募集されている。
JEITAは中間整理の内容について10月16日、(1)補償の必要性に関する議論が尽くされていないいまま、制度の維持・対象機器の拡大を前提とした議論が行われている、(2)DRMなどでコピー制限されているコンテンツが増えており、補償の対象とする必要がない――などする見解を公表。補償金制度の必要性について、一般ユーザーを巻き込んだ抜本的な議論が必要と主張する。
デジタルコピーは「重大な経済的不利益」か
JEITAの見解によると補償金は「デジタル環境下のコピーで重大な経済的不利益が権利者に発生している」ため必要とされてきた。CDをコピーした海賊版CDや、テレビ番組をデジタルコピーしたDVDが出回ればCDやDVDが売れなくなるため、その不利益分を補償するために補償金が必要――というロジックだ。
だが「補償金制度は、アナログテレビ放送など、権利者側がコピーコントロールできないアナログ媒体のデジタルコピーを前提に作られたもの」とJEITAの半田力専務理事は言い、技術の発達やメディアのデジタル化によって、補償が不要なコピー形態が増えているとする。
例えば(1)DRMなどでコピーが制限されている場合や、(2)自分で購入したCDを携帯プレーヤーに取り込んで聴く「プレイスシフト」、(3)放送を録画して自由な時間に見る「タイムシフト」――などは、権利者の経済的不利益にはつながらないとする。
DRM付きコンテンツのコピー回数などは権利者のコントロール下にあるため、「DRMで利用制限された上に補償金まで取られるのは二重取りではないか」という主張だ。特にテレビ放送の録画については、2011年の完全デジタル放送化で全放送コンテンツにDRMがかけられれば、補償金は不要になるはずと説く。
タイムシフトやプレイスシフトのためのコピーも、権利者の経済的損失にはつながらないとの立場だ。「購入したCDの楽曲をコピーしてiPodに入れるプレイスシフトを考えてみると、もしコピーができない仕様だったとして、ユーザーはiPodに入れるためだけにCDをもう1枚買うだろうか。買うならば重大な損害と言えるかもしれないが、それはないだろう」(JEITA著作権専門委員会の亀井正博委員長)
ただ音楽については、DRMフリーのCDからのコピーが広く行われているほか、DRMフリー配信も始まっており、権利者がすべてコピーコントロールできる状況にはなっていない。「(DRMフリーの)CDを売り続けるなら補償金撤廃は難しいだろう。『補償金は何が何でも撤廃』と訴えているのではなく、必要かどうかを改めて議論し、必要ならばCDのみ補償金を残すといった選択肢もあると思う」(亀井委員長)
JEITAはなぜ、補償金制度に反対するのか
エレクトロニクスメーカーの業界団体が、補償金制度撤廃を訴えるのは、そもそもなぜだろうか。亀井委員長は「補償金制度があるせいで、DRMを活用した契約ベースのコンテンツ配信市場が広がらず、DRMに対応したハード市場も広げられない」と話す。
機器メーカーはDRM開発に多大な資金を投入している上、メディアを販売している場合は、メディアに上乗せした補償金の回収にもコストを支払っている。「DRMに対する投資と、補償金に対する投資、二重の投資を余儀なくされている」(JEITA専門委員会の河野智子副委員長)のが現状だ。
グローバルに事業展開しているメーカーにとって、補償金とDRMが併存している国内向け機器と、DRMだけでコンテンツ管理している米国など海外向け機器とで、それぞれで別仕様で開発しなくてはならない状況は、コストアップ要因になる――という事情もある。
加えて私的録音録画小委員会では、補償金をメーカーに負担させるべきでは、という意見も出ている。そうなった場合、メーカーのコスト負担がさらに高まる可能性もある。
2年前から進まぬ議論 打開策は「ユーザーの声」?
補償金制度についてJEITAは、文化庁で見直し議論が始まった2005年から一貫して反対してきたが、権利者側との意見の調整が付かず、議論はこう着状態が続いている。
亀井委員長は「この問題を一歩進めるためには、補償金制度によって大きな影響を受ける一般ユーザーにもっと理解してもらい、大きな声にしていく必要があるかもしれない」とし、今後は一般ユーザーに情報発信していく機会を増やしていきたいという。
「2年前の小委員会では、iPodなどにも補償金を課金しようという方向で議論がまとまったが、パブリックコメントで反対意見が多く、見送られた」(亀井委員長)――JEITAは私的録音録画小委員会が募集しているパブリックコメントで協会の意見を提出するほか、一般ユーザーに対しても、パブリックコメント提出も呼びかけていく。
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