「ネットにイラスト、こんなにあるとは」――10万ユーザー突破したイラストSNS「pixiv」の“想定外”
「最高で1000人くらいしか集まらないだろう」――開発者の当初の予想は大きく外れた。
自分で描いたイラストを投稿したり、投稿されたイラストに評価・コメントを付けられるイラストSNS「pixiv」が人気だ。
イラスト専門の同人作家で、プログラマーの上谷隆宏さん(27)が「Flickrのイラスト版を作れば、みんなのイラストを探すのが楽」と考え、昨年9月に開設。予想をはるかに超えるペースでユーザーが増え続け、3月18日に10万をユーザーを突破した。投稿作品数は40万以上に上る。
イラストを楽して探したい
上谷さんは、19歳のときイラストを描くようになり、同人サークルにも参加。自身のサイトで公開していたという。pixivの開発を思い立ったのは、「イラストを見るために、いろんなサイトにアクセスするのが面倒くさかった」からだ。
当初は上谷さんが個人で運営。知り合いの片桐孝憲さんが社長を務めるWebサイト受託開発企業・クルークに、サーバを1台借りて始めた。だがユーザー数は公開初日に1000人を突破。1台ではまかない切れなくなり、インフラ増設に追われた。
「サーバ負荷は半端じゃなかった。サイトのインフラを増強するため、2カ月間ほとんど寝られなかった。何より、ネットの世界にこんなにイラストがあるのかと驚いた」(片桐社長)
初音ミクのイラストを手がけるKEIさんなど、レベルの高いユーザーが集まったことがユーザー急増に拍車をかけたといい、開始から20日間で1万ユーザーを突破。このタイミングでクルークのサービスとして運営することを決め、上谷さんもクルークに入社した。
ユーザー同士がタグを付け合う
pixivは、1ファイル当たり8Mバイトまでのイラストを、容量無制限で投稿できる。画像の公開・非公開が選べ、友達登録したユーザーのみに見せることも可能だ。
「イラスト仲間は10人くらいしかいなかった」という上谷さん。サイトでイラストを公開していた時、閲覧者からの反応は全くなかったといい、pixivにはイラストにコメントや評価を付ける機能を付けた。ユーザーからは「反応が返ってくるのが楽しい」といった声が届くという。
イラストごとに10件までタグを付けられる。「イラストはジャンルで分けられない。ニコニコ動画のタグ機能によって、ユーザーがタグの使い方を分かってきた」(上谷さん)と考え、タグを導入したという。
投稿者以外のユーザーがタグを付け加えたり、削除することも可能だ。黒く塗りつぶしたイラストに「松崎しげる」のタグが、上谷さんのイラストに「pixiv 最古絵」のタグが付く――など、「投稿者が思いつかない意外なタグが付いて面白い」(上谷さん)。イラストには、140文字までのコメントや、1~10の点数を付けられるようにした。
サイトは白を基調にしたシンプルなデザインだ。「“萌え”っぽさがなかったから、いろんなユーザーが使いやすかったのかも。今は萌えっぽい作品が全体の2割しかなく、イラストのジャンルが偏っていないのが、pixivの特徴」(上谷さん)
アダルト作品も、規約に違反していないものなら投稿可能だ。18歳以上のユーザーだけが閲覧できる。
著作者に無断でアップロードされた作品への対応「すごく悩んでいる」
pixivには、著作者に無断で、他人の作品を投稿するユーザーもいるという。通報を受け、無断投稿と確認できれば削除している。商用作品なら権利侵害の確認もしやすいが、同人作品の場合は確認が難しいという(関連記事:ニコ動に同人作品無断アップ みんなが作る時代の“削除対応”は)。
「個人の著作者の作品が無断投稿された場合、作品の権利者を確認するのは難しく、あいまいなものは放置するしかない状況。対応にすごく悩んでいる。対策としては、クレジットカードの情報を登録してもらい、ユーザー認証を強化する――といったものしか思いつかない」と片桐社長は話す。
商用作品の2次創作については「作品のファンがやっているのだと思う。ファンを訴えるような現在の著作権法やビジネスモデルはかなり疑問がある。2次創作が無くなったら、同人は終わりだ」(片桐社長)と話す。
宇宙に衝撃を与えたい
pixivは今後、ビジネス化を検討していく。広告から収益を得る予定だが「すぐには収益化を考えていない。良いサービスを提供すればいつかお金になるんじゃないか」と片桐社長は話す。
機能も追加していく。4月末までに携帯サイトを開設する予定だ。外国人のユーザーが約5%いるといい、多言語対応も検討している。
「世界中で知られた日本発のWebサービスはない。米国のサービスに勝ちたい」と片桐社長。上谷さんは、米Appleのスティーブ・ジョブズCEOの言葉を引用して「宇宙に衝撃を与えるサービスにしたい」と話した。
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