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» 2008年03月14日 14時14分 UPDATE

おもしろさは誰のものか:ニコ動に同人作品無断アップ みんなが作る時代の“削除対応”は

同人作品が、ニコニコ動画に無断でアップロードされた。作者は削除を依頼したが、権利者と認めてもらえない――誰でも作品を作り、公開できる時代。個人の権利を置き去りに、先には進めない。

[岡田有花,ITmedia]

 クオリティーの高い同人作品が、権利者に無断で「ニコニコ動画」にアップロードされた。権利者は「削除依頼フォーム」を通じ、運営元のドワンゴに削除を依頼。だが「権利者であるという確認が取れない」と返答があり、削除してもらえなかった。

 プロの作品に近い品質の作品を作る個人がいる。そんな作品をコピーし、動画共有サイトにアップする個人もいる。共有サイト側は法人権利者への対応に精一杯。個人権利者は本人確認も難しく、対応も後手に回る。

 みんなが作る時代。みんなの作品を、どう守るか。

権利者は自分なのに

 今年2月。ある同人サークルが作ったサウンド作品がニコニコ動画にアップロードされた。お金をかけ、プロの協力も得て、クオリティーを追求した作品。同人流通で販売し、コストを回収した後は、無償で公開する予定だったが、権利者ではない誰かが、勝手に無償公開した。

 同人サークル代表者は、ドワンゴに対して電話で権利を主張したところ「削除依頼はWebのフォームで受け付ける」との回答。フォームに住所や氏名、権利の内容を明記して削除を依頼したが、運営側から返ってきたのはつれない答えだった。

 「お客様より動画削除のお問い合わせを頂きましたが、申立は権利を侵害された権利者に限るものとしております。本件のような著作権の侵害の疑いがある動画の場合、権利者様からの申告を元に調査、確認を行っております。ご理解の程、よろしくお願いいたします」

 権利者は確かに自分なのに――

 その後、作品を作る際に交わした契約書をメールで提出し、やっと権利を認めてもらえたという。

「削除申請画面だけでは不十分」?

画像 ニコニコ動画の削除申請フォーム

 「現行の削除申請フォームの必須項目をすべて記入したとしても、権利者確認のための情報としては不十分」――問い合わせた同人サークルに対して、ドワンゴはこう話したという。

 ニコニコ動画の権利者削除についてドワンゴは(1)申出者の本人性、(2)申出者が権利者であること、(3)権利侵害の事実があること、(4)権利侵害情報が特定されていること――が確認できれば削除するとしている。

 だが、削除申請フォームの必須記入事項は、侵害された権利の種類、個人・法人の別と名称、メールアドレス、連絡先電話番号、住所のみで、それぞれ自己申告。権利者をかたることも簡単だ。

 ドワンゴと共同でニコニコ動画を運営するニワンゴ取締役の西村博之(ひろゆき)氏によると「今回のケースは、権利者と確認するために十分な情報がなかった」ため「権利者ではない」と間違った判断をしてしまったという。

個人権利者が法人の“犠牲”にも

 ドワンゴは、法人権利者の著作権侵害対策には積極的だ。自社が権利を持つ動画が無断でアップロードされた場合、企業が直接削除できるツールを「SMILEVIDEO権利侵害対応プログラム」で提供。テレビ局に対して「『ニコニコ動画』に無断投稿されたテレビ番組を全て削除する」という内容の申し入れ書も提出した

 個人はどうか。ひろゆき氏は「削除申請の対応は、法人・個人の別なくやっている」と話すが、個人権利者は削除ツールを利用できないし、ドワンゴも「個人が権利を持つ動画がニコニコ動画に無断投稿された場合、全て削除する」とは宣言していない。

 ニコニコ動画は「埋もれた職人に光を当てたい」とし、個人のオリジナル作品に賞を与える「国際ニコニコ映画祭」を開いたり、初心者向け動画制作ツールを無償提供するなど、個人の創作を奨励している。だが、個人権利者を“守る”仕組み作りは、後手に回る。

 法人権利者の権利を守るために、個人権利者の動画が“犠牲”になったケースもある。「当社の動画とみられるものは、ニワンゴの判断で消してほしい」――音楽関連の権利を持つ企業からそう任され「メジャーアーティストっぽいものはどんどん消そう」と作業していたところ、個人権利者が投稿したアマチュアバンドの動画まで誤って消してしまい、騒動になったこともあった。

 テレビ番組などと異なり、個人の作品はあまりに多様で数も多い。権利者は誰か、権利侵害動画はどれか、この動画のどの部分が、誰の権利を侵害しているのか。削除申請してきた「権利者」は、本当にその権利を持っているのか。100%正しく判定するのは、容易ではない。

 「みんなが納得できる1つの落とし所というのは、ないのかもしれない」――ひろゆき氏は昨年のインタビューでこう話していた。

 無劣化のデジタルコピーが容易になり、ネットを使って誰でも発信できる時代。企業も個人も創作・発表する中で、旧来の著作権の仕組みがひずみを起こし始めています。

 創作のあり方はどう変わるのか。今、求められる著作権の仕組みとは――著作権の現場から考える連載「おもしろさは誰のものか」を、講談社のオンラインマガジン「MouRa」と共同で展開していきます。

 次回はMouRaで、永井豪さんの制作プロダクション「ダイナミックプロ」へのインタビューを掲載します。1969年に設立された、コンテンツビジネス先駆者であるダイナミックプロは、ネットメディアをどう見、どう取り組もうとしているかを伝えます。3月19日(水)に「ザ・ビッグ・バチェラーズ・ニュース」上に掲載予定。


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