子どもとケータイめぐる議論は「間違いだらけ」 何が危険で何が必要か
「子どもと携帯電話をめぐる議論は間違いだらけだ」――千葉大学教育学部の藤川大祐准教授は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)がこのほど開いた、子どもと携帯電話をめぐる問題を考える公開イベントでこう指摘した。
新聞やテレビなどマスメディアでは、携帯電話の利用は子どもにとって危険でマイナスだという論調が優勢で、中学生以下では学校への持ち込みを禁止しようという話題も盛り上がった。
だが「マスメディアの報道がポイントを外している」ことで、携帯をめぐる誤解が広がっていると藤川准教授は指摘。(1)学校への持ち込みを禁止することが重要、(2)中学生以下には携帯電話を持たせない、(3)家庭でしっかりしつけをすればいい、(4)出会い系サイトが問題、(5)「学校裏サイト」が危ない――といった議論は、すべてどこかズレていると話す。
携帯電話の学校への持ち込みは以前から、多くの小中学校で禁止されていたという。たとえ禁止しても、携帯をめぐる問題は主に学校外で起きているためあまり意味がない上、小さな携帯を持ち物検査で見つけ出すのは困難で、完全に禁止するのは現実的には難しい。
携帯を持つことそのものを禁止すると今度は、表現の自由や通信の自由の制約につながる。持たせないことで安心してしまい、思考停止に陥りがちなのも問題。高校生は9割所持しているという現実もあり、中学までに使い方を学ばないまま、高校生になって初めて持つのは危険という考え方もある。
子どもの携帯利用は親が監視し、家庭でのリテラシー教育を徹底すべきという議論もあるが、「崩壊家庭も多い中、家庭にばかり責任を押し付けるにも限界がある」と藤川准教授は指摘する。
学校現場が最も問題視しているのは「プロフ」
現在、学校現場で最も問題になっているのは、法規制が強化された出会い系サイトではなく、法の網がかからない一般コミュニケーションサイトで、特に、「前略プロフィール」など「プロフ」と呼ばれるがトラブルの原因になっているという。
プロフは、友人だけに見せるつもりで、顔写真や学校名、クラスなどを無防備にアップしている子どもが多い。ほかの大手コミュニケーションサービスより事業者側の監視がゆるく、問題のある書き込みが放置されがちという。
昨年7月、群馬県で高校1年生男子がプロフに「ギターをやっている奴にろくな奴はいない」などと書き込んだことから、バンド活動をしていた少年とトラブルとなり、暴行を受けて死亡するなど、プロフが絡む事件も起きている。
藤川准教授によると、ある中学生が「うちの学校はケンカが強い」などと書き込んで他校生の反感を買い、学校間抗争の引き金になったり、転校生の情報をプロフで検索し、うわさするといったこともあり、「中学の生徒指導担当は、ひんぱんにプロフをチェックしている」そうだ。
その一方で、「プロフサイトが悪いとはいえない」とも話す。「プロフには、自分のことを知ってほしいという欲求が強く現れている」――最近の子どもたちは、近所の人から声を掛けられたりほめられるような機会が減っているため、その分の承認をネット上に求めているのではないかと推測。地域ぐるみで子どもを見守っていく必要性があると説く。
マスメディアは、「学校裏サイト」も問題視してきたが、「裏サイトという呼び方が悪い」と藤川准教授は指摘。掲示板やSNSなど学校が公式に開設していないコミュニケーションサイトがすべてを「裏サイト」とひとくくりにしているため、どこまで裏サイトかというはっきりしたラインもなく、裏サイトという定義そのものにあまり意味がないと話す。
必要なのは出張事業ではなく「指導案」
最近は多くの小中高校でネットリテラシーや情報モラルに関する教育が行われており、携帯電話事業者やネット事業者が無料で教材や授業を提供するという動きも進んでいる。
ただ、企業などに丸投げした一方的な授業は継続性がなく「意味がない」と藤川准教授は指摘。学校ではやはり教員が指導すべきだと話す。
教員は携帯やネットにうとく、指導できないのではという声もあるが、「教材と指導案さえあれば大丈夫」という。教員がGoogleで「情報モラル 指導案」で検索した際に見付けられるような教材と指導案をネット上で提供してもらいたいと、藤川准教授は話していた。
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