さらにリアルな歌声を手に入れたVOCALOID――Netぼかりすの進化と本家ぼかりすの未来(1/3 ページ)
産総研(産業技術総合研究所)が生み出したぼかりす(VocaListener)は、人が歌った音声ファイルから声の高さと音量を取り出し、歌詞とつきあわせて、VOCALOIDを歌わせるために必要なデータ(VSQ)を推定・生成する技術だ。
人間らしく歌うための時間を短縮する技術として賛美される一方、人間的で生々しすぎる「神調教」と呼ばれるレベルの歌声が簡単に作り出せることに否定的な意見もあった。
それをベースに、4月に一部ユーザー向けに公開したNetぼかりすα版の成果物についてはさらに別の批判も出ていた。
音痴よばわりされて
初期のテスターがNetぼかりすα版を使ってニコニコ動画で公開した作品に対し、「音痴」「泣いているみたい」「気持ち悪い」「不気味の谷」といった批判的なコメントが多く見受けられた。元歌唱は音程もリズムも合っているように思える場合でも、VOCALOID化すると批判を受けるようなことも多かった。「うまく歌ってるのにうまく聞こえない」というのは、Netぼかりすα版テスター共通の悩みだった。
うまくいかないときには元の歌唱がよくないのではないかと疑われてしまうのは、元歌を提供した本人にとってもつらいところだ。「音痴ではないのに……」
テスターもこうした批判への対応には苦しんだ。高価なマイクを使い、コンプをかけて音量の差異を抑える、といったように元歌の収録の時点で工夫をしたり、歌い方を変えたりしている。しかし、安いマイクでボイスレコーダーを使ったようなものでも大差なかったという意見も。トイレの中で歌ったり、練習スタジオを借りて収録したりといった試みもある。
Netぼかりすの成果を明確に出すために、リバーブやピッチ修正などのエフェクトや、VOCALOID Editorでの修正を最小限に抑えたために、こうした批判が多かったということもある。実際、コンプやピッチ調整ソフトをふんだんに使ったり、後処理に手間ひまをかけたりしたNetぼかりす楽曲の場合は「VOCALOIDらしい」と高評価を得ることが多い。
歌い方に関しては、「くせがあるとおかしくなる」「高い音のほうが認識しやすい」「本気で歌えば歌うほど難しい」「シャウト系や感情を込めると認識されにくい」「ささやき系の歌唱、特に無声音と“ん”が認識しづらい」といった意見があった。「仮歌のような、気合いの入っていない歌の場合には無修正でいけた」というテスターの意見が興味深かった。
「初音ミクの場合にはキャラ依存度が高いため、ぼかりす歌唱への批判が強い」という意見もある。
作り手の工夫
初期からのαテスターであるichiさんの場合は作り方を変えてきた。「これまでは一気にワンコーラスを歌っていたが、1小節といった短い区切りにしてみた。短いといい精度が出る」とichiさん。その成果が7月21日に公開されたばかりのこの作品だ。
初期VOCALOIDの1人であるMEIKOを使った作品だが、「こんな軽やかなMEIKOは初めて」「戸川純っぽい」といった肯定的なコメントが多く見られる。実はこの作品、Netぼかりすを使っていることは隠して投稿されたもの。バイアスがかからない状態での反応としては上々といえるだろう。
Netぼかりすα版の2回目の公募から参加したawkさんは「よく調教されたうp主」としても知られる古参のVOCALOID使い。ぼかりすが正体を明かさずに登場したときには、調教による再現を試みるなど、因縁も深い。
Netぼかりす、本家ぼかりすともに使うVSQのパラメータは基本的にDYN(音量)とPIT&PBS(ピッチ)のみだが、彼の場合はGEN(ジェンダー)をも駆使する。基本のGENは35に設定し、「い」段の場合は30、「お」段は50といった具合に独自に分析したGEN設定で最適な発声を出すようにしている。さらにMEIKOの場合にはVOCALOID2にはないResonanceというパラメータをいじるといった工夫も。
そんな技術を駆使した作品が7月25日に投稿されている。もちーべPさんの「Lonesome cat 2」を鏡音リンでカバーしたものだ。
「これ、調教すごすぎるだろう」「パワフルに歌うなあ」「完全に人間」といったコメントが寄せられている。Netぼかりすを使っていることはこの時点では公開していなかったせいか、不自然さはまったく感じとられなかったようだ。「1から歌わせた場合にどう表情をつけたらいいか、感情表現はどうしたらいいか、といったことを自分の武器にしたい」という目的がNetぼかりすαテスター申し込みの動機だったという。
Netぼかりす作品集
実際の声優による歌唱をNetぼかりすの元歌に使うとこうなるという例。
子猫Pによる、日本語VOCALOID全員に同じ歌をうたわせているというすごい試み。元歌は本人。それぞれじっくり聴き入ってしまう完成度。
Netぼかりす作品を精力的に投稿しているmashpodさんによるカバー作品も投稿された。
Netぼかりすα版の作品はぜんぶ聴いてみたい、という人にうってつけのニコニコ動画リストが、実はこっそり公開されている。Netぼかりすを推進するヤマハY2プロジェクトによる公式マイリスト「Netぼかりすα版公開作品」だ。
これが、Netぼかりすα版を使った、現時点での成果物のすべてだ。じっくり聴いて、ぜひコメントを投げてほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
-
2
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
3
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
4
GMO、PCのバックアップと電源オフ呼びかけ VPS利用者に きょう正午の攻撃予告受け
-
5
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
6
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
7
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
8
Apple、「iPad mini」を大幅刷新 8.5インチOLEDとA20 Pro搭載、防水にも対応 11万9800円から
-
9
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
10
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR