「第2の創刊だ」──有料電子版「朝日デジタル」開始 「紙とデジタルは競合しない」
「第2の創刊という思いだ」──朝日新聞社が5月18日にオープンした有料の電子版「朝日新聞デジタル」は、朝日新聞のほぼ全記事にオリジナルコンテンツや動画を加えて配信し、スマートフォンやタブレット端末で読むことができる。有料化で先行した日本経済新聞をコンテンツ、ビジネスモデルの両面で研究し、「デジタルと紙は競合しない」と紙の販売部門がデジタルの拡販にも取り組む。課金開始から1年程度で10万会員の獲得を目指す。
PC用WebブラウザのほかAndroid端末、iPad向け専用アプリでも閲覧が可能(iPhoneアプリは現在App Storeが審査中)。世界のニュースを24時間速報する「24時刊」、1日200本超のニュースを編集して毎朝配信する「朝刊」、経済やスポーツ、文化人のコラムなど独自コンテンツや暮らし情報を盛り込んだ「You刊」──の3つを、電子端末に最適化した“紙面”に編集して配信していく。
気になる記事は「スクラップブック」に保管して後で読んだり、付せんでメモを残すことも。こうした閲覧情報はユーザーIDとひも付いており、閲覧端末が変わっても共有できるようになっている。
料金メニューは2種類あり、紙の購読者は月額1000円で利用でき、デジタル版のみの場合は月額3800円。独自開発した決済システムを使い、クレジットカードで支払う。創刊記念キャンペーンとして、7月末までは無料で利用できる。
ハリポタ「魔法の新聞」のイメージ
朝日新聞デジタルは、昨年3月にスタートした日経新聞の有料電子版「Web刊」や欧米の例を研究した上で、同社の新聞編集・制作の経験と、1995年から運営してきた「asahi.com」の運営ノウハウを生かした「新しいメディア」だという。デジタル版を担当する同社の佐藤吉雄役員待遇(デジタルビジネス担当)兼コンテンツ事業本部長は「紙の新聞と、生まれたばかりの電子版が相互に補完し合う、新しい時代の新しい『ハイブリッド型メディア』だ」と力を込める。
開発は、課金システムも含めてほぼ内製。早い段階から技術者とデジタル系の編集部門、取材記者・整理記者などが参加し、編集系の意向をくみながら組み版の仕組みなどを構築してきた。
新聞の有料配信では紙面をPDF化して丸ごと配信するケースもあるが、「PDFでは24時間更新できない。ユーザー視点に立つと、新しい組み版を試みたほうがいい」(佐藤事業本部長)。開発時に念頭にあったイメージは、ハリー・ポッターシリーズに登場する魔法の新聞。時間ごとに刻々とニュースが更新されていく、流動的な紙面を目指した。
「朝刊」の目玉の1つは全国各地域のニュース。100本程度の記事を集め、地域ブロックごとに6面で紹介していく。地域面がない沖縄県からは沖縄タイムズが記事を提供する。吉田慎一上席役員待遇(編集担当)は「初めて本当の意味での『全国紙』として提供できるのではないか。これまでは4つの本社(北海道、東京、大阪、西部)が各地域向けに編集した限られた紙面を提供してきたが、デジタル化で全国のニュースがかなりの分量で読めるようになる」。
デジタル版のスタートに向け、記者の意識を「紙も、デジタルもやる」という方向に向かうよう促してきた。「プロフェッショナルジャーナリズムの価値をどう知ってもらうか編集部門は電子版も視野に入れながら努力をしてきたが、デジタルは1つの節目としてとらえている」(吉田上席役員待遇)。
「デジタルが紙を食うという発想はしていない」
料金も日経新聞とほぼ同程度に設定した。宅配システムの維持に欠かせない販売店への配慮が見える点も同じだが、飯田真也取締役(販売担当)は「デジタルが紙を食うという発想はしていない」という。「デジタルは販売店の協力がないと成功しないとつねづね思ってきた。競合させる商品ではないということに気を配った。新聞の部数は減っているが、なるべく新聞という媒体に注目してもらい、新聞媒体へ使ってもらえるお金を増やしていければ」。
日経新聞のケースを研究し、デジタル版の拡販も紙と同じ同社販売局が取り組むことにした。朝日新聞の販売店(ASA)は全国5000カ所あり、一部は日経新聞も取り扱う。課金に対する苦情などをASAで受けるケースもあり、「旅行に出かけるので1週間分の料金を割引してほしい」といった要望が来ることもあったという。「日経300万部のうち4分の1をASAが配っている。日経の販売面で起きたケースを1年かけて研究してきた」(飯田取締役)。
課金が始まる8月から1年程度で目標の10万会員獲得を見込む。本紙との併読契約とデジタル契約のみの読者比率の想定は明らかにしなかったが、「日経よりは併読比率が高くなると思う」(佐藤事業本部長)とみている。基本的には新聞になじみがあり、情報収集意欲が高い30~50代が中心読者になると見ているが、親が紙を読み、子どもがスマートフォンで読むという需要もターゲットにしている。「若い人にデジタルで抵抗なく新聞記事を読んでもらい、もう1回紙の新聞に入ってもらうことも考えている」(佐藤事業本部長)。
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