企業ITのコンシューマー化は必然 ビジネスモデルは販売から提供へ――Gartner
「Consumerization of IT(ITのコンシューマー化)について7年かけてリサーチしてきた結果いえることは、ここ数年に革新されてきた情報技術は、個人だけでなく、エンタープライズのITに影響を与えつつあるということだ」とプレンティス氏は話す。
事実、職場のIT環境より、自宅のIT環境のほうが、使い勝手が良いというケースも多い。「これは重要な現実だ。エンタープライズにおけるIT部門の役割が破壊されつつあると言っていいからだ」
同氏は当初、 ITのコンシューマー化について、デバイスの進化を中心にリサーチしていたという。だが現在は「デバイスの進化と多様化もさることながら、その使われ方の変化がもたらす社会への影響、人々のビヘイビア(ふるまい)への影響、文化への影響などを観察している。技術のトレンドを追うというより、“社会学”の様相を呈している」
「ビジネスについて考えると」とプレンティス氏。「世界のGDPの3分の1を占める、個人支出をどう回復させるかが重要だ」
同氏によるとITのコンシューマー化については、5つのトレンドや変化があるという。
まず1つめ。それは、個人が知識を得るため行動するようになったことだという。「従来個人は、メディアや広告によってのみ商品知識を得ていたが、今は自ら検索によって知識を得る」ただし得られる検索結果は、サーチエンジンのアルゴリズムという“色めがね”を通したものであることに留意しなければならないと、同氏は指摘する。
次は、ソーシャルテクノロジーの利用の拡大である。個人と個人の間での情報共有が進み、コンシューマー間のソーシャルアクティビティが急拡大している。そもそも人は、信頼する仲間からのレコメンドによって購買行動をとることが多いため、このトレンドは無視し得ない。「既に米国では、ウェブでの検索ヒット数を、ソーシャルストリームの検索ヒット数が上回るケースが多くなっている」
3つめは、個人のビヘイビアの変化だという。これまでは家族や幼なじみなど、狭く深い人間関係を構築するのが一般的だったが、ソーシャルテクノロジーの拡大により人々は「浅く広い人間関係を重視するようになった」という。
浅く広い人間関係においては、地縁や血縁より、各人の関心事によるゆるやかなつながりがクローズアップされる。「そこでは集団を維持するための善よりも、個人の欲望が重視される。これまで、集団行動を重視する社会だとされてきた中国や日本などのアジア各国においても、この傾向が顕著にみられる」
4つめのポイントとして同氏は「人々は機能の豊富さよりも、シンプルで直感的なソリューションを求めるようになった」と指摘する。「だからこそ、iPadに代表されるタブレットが高い支持を得ているのでは」また「ゲームコンピューティングの一般化(ゲームをプレイする層の拡大)により、人々は自然をGUIに慣れてきた」とプレンティス氏は話す。「シンプルで、直観的で、マニュアルを読まなくても自分で操作方法を発見できることが重要だ」
最後に挙げられたのは、リアルとデジタルの融合である。ARやシミュレーションなどを通じ、コンピュータテクノロジーが人々の行動を取り込みつつあるというのが、同氏の指摘だ。「個人が、デジタル空間で達成した行動の報酬として、リアルの報酬を受け取れるようになった。これはしばらく前には考えられなかったことだ」
ビジネスモデルは「販売から提供へ」
プレンティス氏はここまでの指摘について「ビジネスを拡大し、競合優位性を高めるには、この変化を把握しなければならない。そしてこの変化は、組織の外の個人だけでなく、組織内の個人(従業員)にも当てはまるものだということを、理解しなければならない」と話す。
ITのコンシューマー化をたどる取り組みについて、さながら社会学のようだと表現した同氏によると、これまでITベンダーは個人とテクノロジーのインタフェースを提供すればよかったが、これからは個人と個人を結ぶインタフェースを提供しなければならないという。「ベンダーが、自社のテクノロジーでできることを個人に押し付けるのではなく、個人がやりたがっていることを提供するのが重要だ。これができたから、今のAppleは成功している」
「個別のOS、ソフトウェア、プロダクトを購入させるというビジネスモデルも当面続くだろうが、残らないのでは。“販売から(サービスの)提供へ”というのが大きな流れになる」
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