IT業界を占う4大トレンドと2012年の10大技術(1/2 ページ)

IT調査会社のGartnerは、今後のIT業界で注目すべきという4つのトレンドと2012年の10大技術を発表した。これらに対応した取り組みが企業に求められると解説する。

» 2011年10月04日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 IT調査会社のガートナー ジャパンは、10月3日から3日間の日程で年次カンファレンス「Gartner SYMPOSIUM ITxpo 2011」を都内で開催している。初日の3日、米Gartnerの首脳陣がIT業界予測として、4つのトレンドと2012年に注目される10大技術を発表した。

「日本企業はIT活用の考え方を変えるべき」

 まず登壇したシニア バイス プレジデント リサーチ部門最高責任者のピーター・ソンダーガード氏は、2011年のIT市場動向を紹介した。世界全体では3.6%の成長が見込まれ、エンタープライズ分野では4%の成長を見込む。日本は2011年に1.8%減少するが、2012年は1.4%の成長に回復するとした。

 特に2011年については、東日本大震災を契機にした事業継続性強化に対するIT需要として、BCP関連の製品・サービスの31%成長を見込む。しかし、それ以外の分野は総じてマイナスに転じるため、全体でもマイナス成長になるという。

 同氏は日本企業のIT投資について、日本と同様に輸出産業を主力とする中国や韓国、米国、ドイツに比べると、その規模が小さいと指摘。「他国はITをビジネス拡大につなげるツールと位置付けているが、日本はコスト削減の手段になっている。他国のように意識を変えるべきだ」と提起した。

IT戦略で意識すべき4大トレンド

 ソンダーガード氏は、今後の企業のIT戦略で考慮すべき4つのトレンド――「クラウドコンピューティング」「コンテクスト アウェアネス コンピューティング」「ソーシャルからのビジネス」「パターン型戦略」――を発表した。これらは日本だけでなく、世界中の企業が考慮すべきものだという。

 クラウドコンピューティングは、2010年のパブリッククラウド市場が企業IT市場全体(約270億ドル)に占める割合で3%しかなかったものの、2015年には19%になると見込む。この間、企業IT市場全体の成長は年率3.8%前後だが、パブリッククラウドはその5倍という成長ぶりを予想。今後は、プライベートクラウドや両者を組み合わせたハイブリット型も台頭し、クラウドコンピューティングの勢いが加速するとしている。

 コンテクスト アウェアネス コンピューティングとは、同紙によれば、ユーザーがITをどのような目的や意識で、どのように利用しているかという情報を知るアーキテクチャに当たるものだとしている。これを後押しするのが、モバイル端末の急速な普及であり、2010年にはモバイルPCやスマートフォンなどの出荷がデスクトップ型を上回った。OS別でも2015年には、モバイル向けOSがPC向けOSをインストール数ベースで追い抜くと予想。ユーザーの“ふるまい”をモバイル端末から得る機会が増えていくとみている。

 ソーシャルからのビジネス、パターン型戦略は、上述したクラウド化やモバイル化がもたらすソーシャルの波を戦略やシステムに反映し、実行していくものだという。ソーシャルには“公的”あるいは“個人的”な要素が包含されるため、今後の企業ITには、さまざまな人間がより深く関わっていける柔軟さが求められるとの見方である。

 ただし、企業はこれらのトレンドに乗るばかりではなく、マイナスにつながる点にも目を向け、これをリスク指標化して、適切に管理していくことが求められるとソンダーガード氏はアドバイスする。「IT業界はまさにこのトレンドの真っただ中にあり、10年後の企業の成長に大きな違いをもたらすだろう」と述べた。

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