「体験型展示はもう古い」――日本科学未来館、開館以来初の大幅リニューアルがすごかった

 日本科学未来館は、開館以来初めてという常設展の大幅リニューアルを実施し、4月20日に公開した。リニューアルで大きく変更した点は「展示」の在り方。これまで情報展示や体験型が主流だった「展示会」そのもののコンセプトを見直し、「経験・思考型の展示」に切り替えたという。どのような常設展示が行われるのか、内覧会の様子をレポートする。

 「体験型展示はもう古い」――リニューアルで特に重視したのは「来場者が未来の行動に移すための“促し”を、いかに設計するか」ということ。各展示が「問い→考え→行動に移す」という導線の上で設置されている。

 今回、新たに8つのエリアを追加。実演やトークショーなどを行う「コ・スタジオ」やドーム型シアターのほか、6つの展示を新設している。中でも、同館の館長を務める宇宙飛行士の毛利衛さんが注目するのは「100億人でサバイバル」の展示だ。

 同エリアのテーマは、天災やテロなど地球上のさまざまな危機から身を守り、100億人で生きるにはどうしたらいいのかを考えること。実際に起きた災害などの映像を見たり、“ピタゴラ装置”などを用い、自分たちが置かれている命の状況を考える機会が得られる。

 この展示は、東日本大震災を機に考えられたものだという。「私はNASAで『危機感』というものを徹底的に叩き込まれた。それは、自分がどういう状況にあるのか、これからどうなっていくのか。先へ先へ考えること」(毛利さん)。

日本科学未来館リニューアル 「100億人でサバイバル」展示
日本科学未来館リニューアル 壁に開けられた穴をのぞくと、リアルな映像が流れている
銀の玉が二酸化炭素、金の玉が熱。銀の玉(二酸化炭素)が多く排出されると金の玉(熱)が溜まり、台風を表す赤い玉(台風)の動きが早くなる
日本科学未来館リニューアル アクティビティ・スペース「コ・スタジオ」

 このほか、未来の地球の理想像から今取り組むべきことを考える展示「未来逆算思考」や、日本科学未来館のシンボルにもなっている“地球ディスプレイ”「ジオ・コスモス」をプログラムを組んで操作できる「ジオ・プリズム」、ジオ・コスモスのコントロールルーム「ジオ・コックピット」、ノーベル賞受賞者たちのメッセージを展示する「ノーベルQ」、宇宙開発や海洋探査など現在進行中の研究を紹介する「フロンティアラボ」を常設展として新設している。

 筆者のおすすめは、ドームシアターで上映される新コンテンツ「9次元からきた男」。これは、記憶に残る映像体験を目指して「トラウマ体験をさせる」ことをテーマに作られた3Dドーム映像作品。自然界に存在する全ての力を統一的に記述する「万物の理論」への試みをテーマに、現在有力視されている仮説「超弦理論」を親しみやすく紹介している。

 演出を手掛けるのは、映画「呪怨」「魔女の宅急便(実写版)」などで知られる映画監督・清水崇さん。他の展示内容との関連性を持たせ、映像の見せ方にもこだわった作品に仕上げている。

日本科学未来館リニューアル ドームシアターで上映される新コンテンツ「9次元からきた男」

 他に興味深かったのは、iPS細胞に関する進行中の研究や、新しい細胞との付き合い方について考える展示「細胞たち研究開発中」と、ロボットやVRを用いた手術体験ができる展示「ともに進める医療」。ロボット手術体験では、目の前にいない患者の腫瘍(しゅよう)をディスプレイ越しに見ながら、手元のコントローラーでロボットを操作して手術する――といった体験ができる。

日本科学未来館リニューアル 「細胞」について考える「細胞たち研究開発中」
日本科学未来館リニューアル ロボット手術体験
日本科学未来館リニューアル 映像に映った腫瘍を時間内に取り除けたら手術成功
日本科学未来館リニューアル VR手術体験
「ロボットと暮らし」で実演するASIMO

 「新しくなった日本科学未来館が、科学技術外交の場・科学コミュニケーションの場になればいい」(毛利さん)

太田智美

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この記事の著者

太田智美
太田智美

小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入し、小・中・高とピアノを専攻。大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業する。 その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し、「おところりん:ソーシャルネットワークにおける偶然性を用いた音楽生成(Otocororin: a chance music for social network systems) (http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/KO40001001-00002010-0075.pdf?file_id=44931) 」を修士論文として提出。同研究は、情報処理学会 第12回「Internet and Operation Technology(IOT)」研究会において学生奨励賞を受賞。 同大学院を修了後、2011年にアイティメディア株式会社に入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営、記事執筆などに携わる。2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属。2016年4月よりITmedia ニュースに配属される。これまでの代表作は「世の中やっぱり金でした 71万円の大金を積んで誰よりも早く『iPhone 6 Plus』の使い勝手を検証してみた (http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1409/10/news139.html) 」「スケスケでまるみえじゃないですか! 人によっては透明に見えるドレスを作ってみた (http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1502/27/news152.html) 」「あの日、Twitterのくじらが出なかったもう1つの理由 (http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1401/08/news082.html) 」「ゆとり世代が問う『好きなことをやって何が悪い!』(シリーズ) (http://www.itmedia.co.jp/keywords/yutori_generation.html) 」「はじめてのAI(連載) (http://www.itmedia.co.jp/news/series/5264/) 」など。 Twitter:@tb_bot (https://twitter.com/tb_bot)

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