AIでスパム広告に対抗 Googleが考える「完璧な広告」の条件
「スパム広告の排除は最優先でやるべきこと」――4月12日に開催された、アジア太平洋地域での取り組みに関する報道関係者向けイベント「Google APAC Press Event」(シンガポール)で、米Googleのアルジュン・ナラヤン氏(Head of Trust and Safety)はこう話す。
米Facebookに続き、Googleが2018年3月に仮想通貨関連の広告配信を禁止すると発表したことは記憶に新しい。
同社は広告に関するポリシーをWebサイトで公開しており、17年にはチケット転売関連のルール強化などを含む28の広告掲載ポリシーと、20のサイト運営者向けポリシーをそれぞれ追加している。
「悪質な広告の排除は最優先でやるべきこと。そのために数十億ドルを投資し、数千人という人材を投入してきた。AIなどテクノロジーを駆使して悪質な広告をいち早く検出すると共に、18年には広告レビューを担当する人材を1万人以上にする」(ナラヤン氏)
不適切かつ悪質な広告に危機感を持つ同社だが、17年に削除したこれらの広告の数は32億に上り、毎秒100件の悪質な広告が削除されている計算という。また、17年に広告ネットワークから削除した不適切なサイト運営者の数は32万以上で、約9万のWebサイトと70万のモバイルアプリをポリシー違反でブロックした。ソース単位で違反行為を処理できる「page level enforcement」という技術を導入し、月間200万件以上のURLから広告を削除するなどしてきた。
「悪質な広告の排除」は最優先 AIと人力の両立
これらの膨大な問題に対し、ナラヤン氏は「スパム、マルウェアなども洗練されてきており、スパマーからの攻撃は絶えない。AIで早期に検知するのは有効だが、そのニュアンスや新しいタイプの違反広告は人間でないと正当にレビューできない」とし、AIと人力の両輪でやっていくと説明。特定の広告をポリシー違反と判断する審査基準については「ポリシーを作るときは透明性が重要で、マーケットに特化した分析をする。例えば仮想通貨のときは、誇張広告だというフィードバックが多く、ユーザーを守る必要があると感じた」と振り返る。
「経済的インセンティブがあるので広告が悪用される。インセンティブが働かないよう工夫することで数が減っていく」(ナラヤン氏)
Googleが考える「完璧な広告」
広告は、同社の根幹を支える要でもある。検索連動型広告Google AdWordsは今でこそ数百万の出稿企業を抱えているが、その世界初となる広告は2000年に掲載された、米東海岸にある小さなロブスター通販業者「Lively Lobsters」によるものだった。
Googleのメル・シルバマネージングディレクター(アジア太平洋地域担当 Go-To-Market Strategy and Operations)は、「Googleはさまざまなサービスを提供するプラットフォームだが、そのエコシステムを動かすのに大事なのが広告。最初は新鮮なロブスターと消費者を結び付けることから始まったが、検索連動型広告はシンプルなパワーがある」と話す。
シルバマネージングディレクターによると、“完璧な広告”にはいくつか条件がある。それは、消費者にとっては(1)信頼できる有益な情報であること、(2)必要なときにのみ表示され、何らかの手助けになること、(3)プライバシーが守られていること。広告主にとっては、最低限のコストで売上向上を図れること。「テクノロジーは変わったが、何が良い広告かの基準は変わっていない」と強調する。
最初の広告主は小さなロブスター通販業者だったが、同社は「誰にでもオープンに使えるのがネットの良い所」とし、アジア企業の98%を占めるスモールビジネス(中小企業)を今後も意欲的に支援していく考えだ。
【訂正:2018年9月3日11時20分更新 ※初出時に、Google初の広告は2010年掲載とありましたが、2000年の間違いでした。お詫びして訂正致します。】
モバイルが変えた広告の在り方
ユーザーにとっては、検索連動型広告や、Webページの内容を判断して関連する広告を表示するディスプレイ広告、YouTubeの動画広告などが身近だろう。今人気があるのは動画広告で、視聴者が任意にスキップできるTrueView広告について、シルバマネージングディレクターは「(スキップできる広告について)最初はクレイジーに思われた」が、「広告主から見れば、誰が積極的にその広告を見ようとしてくれたのか分かるので、フォーマットとしての価値は高い」と話す。
最近はスマートフォンやタブレットなどモバイル環境で視聴するユーザーが多く、それを念頭に置いて開発されたのが、6秒間の広告を配信する「バンパー広告」だ。モバイル端末では15~20秒の広告は長すぎるため、6秒で全てを伝えるコンパクトさが必要という。17年9月にバンパー広告で人気のあった上位20個のうち、9個がアジア地域の広告だったとしている。
同社は、モバイル市場のポテンシャルが高いアジア地域を「Next billion users」(10億人の潜在的なユーザー)を獲得するための大切な市場と位置付ける。シンガポールと韓国では、モバイル所有者がテレビの所有者を上回り、インドネシアではスマートフォンの所有者が14%(13年)から60%(17年)へ急増しているという。動画広告のコンパクト化はますます進むのだろうか。
「新聞、ラジオ、テレビ、そしてネットへのプラットフォームが変わることで広告の在り方も変化してきた。今はモバイル向けに短時間な広告も増えているが、単純に広告の数が多いからトレンドのように見えているだけかもしれない。大事なのはユーザーとのエンゲージメント(貢献しあう関係)で、関心があれば長い広告でも見てもらえる」(シルバマネージングディレクター)
(取材協力:Google)
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