アニメに潜むサイバー攻撃
「笑い男」事件は実現可能か 「攻殻機動隊 S.A.C.」好きの官僚が解説(7/12 ページ)
F: 最近は見なくなりましたが、昔はメールで添付ファイルを送ると、サーバの送信可能なサイズを超えたら添付ファイルが分割して送られることがありました。分割して送られると、古いウイルス対策ソフトでは検知できなくなったり、さらに暗号化されていたりするとなおさら検知が難しかったのです。S.A.C.ではこういったレトロな手が時々使われていて、シリーズ3作目の「Solid State Society」でも、音響カプラーのような低転送レートの音響による耳経由の攻撃が行われていました。「ピーガー」というやつですね。
K: 最近では音響カプラーを知らない人も多いのでは……。
F: うちにはまだありますよ、音響カプラー。もう対応する電話機がありませんが(笑)。さて、この時の攻撃を読み解く手かがりは、草薙少佐のこのせりふにあります。
「定時連絡に乗せた遅効性であるところを見ると、可能性は2つ。暗号変換キーを持っている指揮官クラスか、それ以外の全員だ!」
SPの通信に入り込んでいるところを見ると、ナナオ=Aが送信したメールはどこかの、おそらく警察内部が意図的に作ったバックドアを経由してVPNのような機密回線に入り込んでいます。その回線の中では写真や音声などの捜査情報がやりとりされ、一般の捜査員を含む全員向けには速度優先で暗号化せず送信、指揮官クラスのみが機密性が高い情報をやりとりするためには専用の暗号キー(秘密鍵と公開鍵)を使った方式で送信し、いずれも受信すると自動再生されると想定しましょう。
ナナオ=Aは警察内部から入手したSP指揮官の公開鍵を使って暗号化したウイルスをSP全体に無差別に送り付け、SPの電脳の中では分割メールがそろったら添付ファイルが自動的に再構築される。その上で指揮官用の秘密鍵(暗号変換キー)を持っている者だけが、この暗号化を解除でき自動的にウイルスを含んだ資料が再生されることで、感染したのではないでしょうか。いくら機密回線とはいえ、警察内部からの手引きが絡んでいるので、もうやりたい放題ですね。ハッキングというよりは機密性の高いネットワークには攻撃者が侵入しない前提という、想定の甘い仕様を突いた攻撃ですね。
K: SPたちは油断しすぎでは……。
F: まぁ大抵の組織は内部からの攻撃に弱いですからね。
次に、殺害予告時の笑い男マークですが、Kさんに質問があります。この殺害予告をした者とは誰でしょう? 街頭生放送に現れた人物でしょうか?
K: え? なんでそんな当たり前のことを聞くんですか?
F: ……。この2つの笑い男マーク登場シーン、実はつぶさに見ると、ある大きな点が異なります。
K: ええ?
F: 気付いてないですね。じゃあこれも後回しにしましょう。
続 第2幕・多数の笑い男はどのように生まれたのか
F: 次の要素、「次々と現れた笑い男たち」です。
K: これは劇中にもありますが、サイバー攻撃ではありませんよね。
F: Kさん、電脳もない現代、直接的に相手に関与せず、洗脳も薬物を使用せず、たった数分以下の放送もしくは同等の出来事を通じて、誰かを銃をぶっ放すレベルの物理的なテロに走らせることはできると思いますか? 長い時間を掛ければ、ISISなどのテロリストの勧誘はありますが、あれだってリクルーターが直接関与していることが多い。ですからそういった例を除いてです。
K: いやぁ、さすがに無理でしょう。
F: でも実例はありますよ。しかも最近。
K: えええ!?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
アニメに潜むサイバー攻撃
サイバー攻撃は、時代に合わせ、攻撃の対象や手口が変化してきました。しかし近未来の世界、最新技術へのセキュリティ対策はイメージしにくい部分もあります。そこで、そう遠くない未来、現実化しそうなアニメのワンシーンをヒントに、セキュリティにもアニメにも詳しい内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の文月涼さん(上席サイバーセキュリティ分析官)が対策を解説します。
この記事の著者
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
4
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
7
TSMC熊本工場、段階的に通常操業へ 熊本の地震で一時中断、従業員の無事確認 台湾報道
-
8
熊本「通れた道」マップ、トヨタが公開 ホンダも「通行実績情報マップ」
-
9
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
10
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR