Apple Siliconがやってくる
Apple Siliconに求められるもの Apple Silicon Macのチップはどのような構成になるか(4/4 ページ)
macOS向けApple Siliconの姿
さて、長々とプロセスの話をした理由はこういうことだ。現在のApple AxxとかAxxX/Zというのは、基本的にはモバイル向けの作り方をしている。つまり高密度・低消費電力向けになっている。これをデスクトップに持ってきても、それほど動作周波数を引き上げる事はできない。図2で、High DensityとHigh Performanceのグラフが途中で交わっているのが分かるかと思う。
この交点がだいたいの境目であって、これを超える動作周波数に引き上げると効率が悪い。そしてある限界を超えると、チップが壊れるとか燃えるといったことになりかねない。
水道に例えれば、モバイル向けというのは細いホースで配管をしているもので、水の量が少ない間は効率が良いが、ここに大量の水を流そうとすると無理がかかってホースが外れたり、バルブから水漏れしたりする。クライアント向けはいわば太いホースであって、大量の水も無理なく流せるが、その代わり蛇口を締めてもちょろちょろ水漏れするような感じである。というわけで、アーキテクチャ的には現在のApple Axx(最新だとA14)をそのままデスクトップに持ち込んでも問題はないだろうが、回路自体はデスクトップ/モバイルに合わせて作り直す必要がある。これそのものの難易度は高くないが、時間がかかるという問題がある。
CPUの場合、大別すると2つの設計図が必要である。一つが論理的な設計図であり、もう一つが物理的な設計図である。電子回路の工作で、回路図と実体配線図にそれぞれ相当すると思えばよい。Apple Siliconに関していえば、アーキテクチャが基本的に同じというのは論理的な設計図はほぼそのまま使いまわせるという話であるが、その一方で物理的な設計図は新規に作り直す必要がある。これが実は結構な手間で、シミュレーションなどを駆使しながら、早くても半年。大規模なものだと1年近くを要したりする。
仮にA14をベースに最初のApple Siliconを作るとすれば(Appleが同時に複数の物理実装チームを走らせている、というのでない限り)、A14の物理実装が一段落した段階で最初のApple Siliconに取り掛かることになる。
A14そのものは今年前半にTSMCの量産がスタートしていることを考えると、最初のプロトタイプが今年初頭にリリースされ、これの検証と修正を行って、物理設計が完了したのが3~4月頃と思われる。となると、Apple Siliconが出てくるのは早くて今年末。現実的には来年頭にプロトタイプが出てくるという辺りだろう。これは2020年中にリリースされるという、最初のArm搭載Mac向けではないだろう。最初のArm搭載Macは、恐らくA14をそのまま載せた、MacBook Airに近いフォームファクターのものと思われる。Apple Silicon搭載のMacの発表は2021年以降になると考えられる。
このApple Siliconの構成は、A14をベースにしているとはいえ、だいぶ変わるはずだ。最初のターゲットはMac mini辺りだと思うが、現行のMac miniですらCore i3-8100(4コア/3.6GHz)とかCore i5-8500(6コア/3GHz)を搭載していることを考えると、少なくともFirestormコアが6コアは必要と思われる。Core i5-8500は、定格こそ3GHz動作だが、Turbo Boost時には4.1GHzまで動作周波数が上がるから、4GHz辺りまでのサポートは必要だろう。Icestormコアは、上で書いた理由により今回は搭載されないように思う。
GPUそのものはどうせMetalで動作するから、A14のGPUコアそのままで行けると思う(コア数がいくつ必要か、はちょっと判断がつかないが)。その一方でメモリインタフェースにはDDR4のサポートが必要だし、ストレージも現在のA14とは異なり、SATAおよびPCIe M.2 NVMeのサポートが必要になる(A14はeMMCベース)。また周辺回路の接続にUSBとかSPI/I2Cなどだけでは足りず、PCI Expressが必要になるだろう。多分第1世代はこんなところで、さらなるCPUの強化などは第2世代のApple Silicon待ちになるのではないかと筆者は予想している。
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Apple Siliconがやってくる
2020年末からAppleが投入するApple Silicon Mac。今、最も熱いRISCプロセッサを、大原雄介さんが解説する。
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