Apple Siliconがやってくる
最終回:Apple Siliconがやってきた そのさらに先、「Apple ISA」への遠い道のり(2/3 ページ)
ヘテロジニアス環境の課題
問題なのは、Acceleratorもそうだが、Processorに関しては全部命令がバラバラであり、しかもプロセッサ間の同期を取るメカニズムがまちまちであることだ。
例えばGPU。Appleは2014年にOpenGLやOpenCLに代わるものとしてMetalを導入した。使い方はというと(語弊を覚悟でいえば)、よくあるAPIベースの呼び出しであって、プログラムから見ればデバイスのオブジェクトを作り、そのオブジェクトに対して操作を行うという形になる。これ、内部的にはおそらくPCI Expressのデバイスドライバの形を取ってGPUに対して基本的な操作を行う(GPUとCPUの間にCache Coherencyがあるかどうかは不明)形になっていると思われるのだが、これがオーバーヘッドを生んでいるのは疑う余地もない。Neural Processorもそうだし、ISPやVideo Processorなども当然同じであろう
ヘテロジニアス環境の理想で言えば、CPUとGPU、NPUその他が並列に並び、1つのメモリをCache CoherencyにUnified Accessできることが望ましいし、長期的には命令セットが共通化きれればより好ましい。加えて、とりあえず同期のメカニズムそのものを何とかしないといけない。現状の実装方法はいろいろだが、ポピュラーなのは、
- GPUやNPUが処理が終わったら、CPUに対して割り込みを掛ける
- 割り込みを受け取ったCPUは現在の処理を一端棚上げにして、割り込み処理ルーティン(ISR:Interrupt Service Routine)を起動する
- ISR内部では割り込みの内容を判断し、関係するThreadに対して通知を行う処理を行い(この時点ではまだ処理を積んだだけで通知そのものは行われない)、ISRを抜ける。
- CPUは先ほど棚上げにした処理を再開する。
- そのうちに関係するThreadが実行可能になると、先にISRで積んだ「通知を行う処理」が実行され、そのThreadにGPUやNPUが処理を完了したことが通知される。
という気の長い方式である。
実は外部デバイスを利用すると、大体が割り込みを使って同期を取る必要があり、この割り込みのハンドリングが非常に大きなオーバーヘッドであるために、煩雑に同期を取るようなケースではどんどん性能が落ちていくという欠点がある。ヘテロジニアス環境の最大のネックがここにある。
こうした課題への対応を、実はArmは既に始めている。MONOistに書いた記事、Arm「Custom Instruction」の衝撃、RISC-Vへの徹底抗戦を貫くのタイトルにも入っているCustom Instructionがそれだ。もちろん現状はCortex-Mベースの製品のみの対応だし、あくまでMCUのダイに収まる範囲のAccelerator/Coprocessorが対応であるが、理屈上はこれを拡張すればCortex-Aに適応することは難しくないし、専用ポートを用意して外部のGPUやNPUを同期させることも不可能ではない(Cortex-AのDynamIQには、このためのACPというポートもある)。RISC-Vは既にこれを実現しているし、MIPSやPowerPCでもこうしたCustom Instructionのサポートがあった。ただArmはCortex-Aグレードへの適用時期はまだ公開していない。
ではAppleは、ArmがこうしたCustom Instructionsに対応するのを待つのか? とりあえずは待たざるを得ない(というか、水面下でガンガンリクエストを出しているはず)だろうが、あまりそれが遅い or Appleの望むような仕様にならなかった場合に備えて「Plan B」を用意するというのは別に不思議ではない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Apple Siliconがやってくる
2020年末からAppleが投入するApple Silicon Mac。今、最も熱いRISCプロセッサを、大原雄介さんが解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR