Innovative Tech
口の乾燥を検知する首用ウェアラブルデバイス 熱、匂い、圧力、3つの刺激で唾液分泌を促す
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
神戸大学 塚本・寺田研究室が開発した「Wearable System for Promoting Salivation」は、口内の乾燥状態を測定し、それに応じて唾液の分泌を促す、首に装着するウェアラブルデバイスだ。唾液量の減少を検知すると、下顎を暖め、マッサージし、かんきつ系の匂いを噴射して唾液の分泌を促す。
唾液の分泌が減少すると、口の中が乾燥した状態「口腔乾燥症」(ドライマウス)になる。ドライマウスが発生すると、虫歯や歯周病、口臭、口内炎、粘膜の感染症、味覚障害、嚥下障害などを引き起こしやすくなる。原因は、ストレスや薬の副作用もあるが、加齢によるものが大きいとされている。
最も望ましい治療法は、唾液の分泌量を増加させること。唾液の分泌量は、顎を暖める、下顎をマッサージをする、かんきつ系の匂いを嗅がせる方法で増加するとされている。
今回のシステムでは、口内の乾燥状態に応じ、首への3つの刺激(熱、圧力、匂い)を与えて唾液の分泌を促す。
このデバイスは、温熱刺激用のペルチェモジュール、圧力刺激用の2つのリニアサーボモーター、匂い刺激用の匂い出力モジュールで構成。顎の下には唾液腺が多く存在するため、顎の下に装着する。
温熱刺激では、ペルチェモジュールが約40度まで発熱し、下顎を暖める。圧力刺激では、2台のリニアサーボモーターが毎秒3cmずつデバイスを伸縮させ顎下の唾液腺を刺激する。匂い刺激では、匂い成分を含む液体に超音波を照射して匂いを発生させる。
刺激は常に与えるわけではなく、口内が乾燥している場合にのみ実行する。唾液量の測定には、近赤外線分光法(NIRS)を利用し、体を傷つけない。
異なる条件で最も効果的な刺激を調べるために、3つの刺激(熱、圧力、匂い)を用いて、3つの異なる条件(通常状態、起床時、食後)で実験を行い評価した。その結果、全てにおいて匂いの刺激が最も多くの唾液を分泌させると分かった。
この結果を踏まえ、匂い刺激に特化した眼鏡型デバイスのプロトタイプも試作した。口内の唾液量の測定には近赤外分光法を使い、匂い出力モジュールを搭載する。
唾液量とこめかみ周辺のHb(ヘモグロビン)信号には相関関係があるという研究結果が出ていることから、ユーザーの頭蓋外血行動態で口内の乾燥状態を測定した。測定結果に応じて、小型エアポンプでレモンの香りを出力。眼鏡型デバイスは評価実験をしていないため、適切な実装かどうかの判断は今後の課題としている。
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