Innovative Tech
アバターの“指の動き”からパスワードを盗む攻撃 VR内で働く人のキーボード操作に着目
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
米シカゴ大学に所属する研究者らが発表した論文「Can Virtual Reality Protect Users from Keystroke Inference Attacks?」は、同じVR空間で作業をしているアバターの指の動きから入力内容を復元する攻撃を提案した研究報告である。
この研究は、米Metaが提供するバーチャルオフィスプラットフォーム「Meta Horizon Workrooms」におけるキーストローク推測攻撃の可能性を調査している。攻撃では、同じ空間にいる1人のVRユーザーが、別のユーザーのアバターの手の動きを分析し、タイプされた内容を推測するものである。
タイピングは重要な情報の入力手段であるため、この攻撃が成功すると、機密情報の漏えいやプライバシーの侵害、財務上の損失など、深刻な影響を及ぼす可能性がある。物理的な攻撃と比較して、VR上でのキーストローク推測攻撃はより強力であり、攻撃者は物理的な制約なく多くの遠隔の被害者を狙うことができる。
この研究では、VR空間におけるキーストローク推測攻撃のためのコンポーネント化された自己教師あり学習パイプラインを開発している。訓練されたモデルは、ターゲットのアバターが表示する手の動きのノイズの多いデジタル表現を収集し、キーボードのレイアウトを知らなくても、それを使用してタイプされたデータを再構築する。
モデルは、キーストロークのイベント検出、使用された指の特定、キーの認識の3つの段階に分けられている。まず、簡素化されたテレメトリーデータに統計分析を行い、初期推測結果を得る。次に、これらの結果を使用して訓練データを作成し、分類器であるトランスフォーマーを訓練する。これにより、キーストロークとテレメトリーデータの関係を学ぶ。
最後に、この分類器の出力を最終コンポーネントに供給する。この方法により、ノイズの多いテレメトリーデータから重要なキーストローク情報を段階的に抽出し、エラーを最小限に抑える。
ユーザースタディーを実施し、さまざまなVRシナリオと設定の下で提案された攻撃を評価する。これにはアバターの距離と配置、キーボードデバイス、タイピング内容が含まれる。15人中13人の参加者に対して、攻撃はタイプされたキーの86~98%を正確に認識し、回復されたテキストは元の内容の意味の50~98%を保持していたことを示した。
Source and Image Credits: Yang, Zhuolin, et al. “Can Virtual Reality Protect Users from Keystroke Inference Attacks?.” arXiv preprint arXiv:2310.16191(2023).
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
6
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
7
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
IPO目論見書に「AIは人類の存亡リスク」「コードの9割はClaude製」 Anthropicが示した規格外の見立て
-
10
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR