小寺信良のIT大作戦
終わるようで終わらない「AMラジオ」の世界(3/3 ページ)
「ラジオ」としてあるべき「ラジオ」
2019年頃にAMラジオがなくなるかも、という話を聴いて、当時はradikoもあるし別に構わないのではないかと思った。だがその後、地方に転居してみると、急激にラジオへの接触率が上がった。車に乗ってエンジンをかけると、自動的にラジオの音が流れ出す。自宅で仕事しているので通勤はないのだが、誰かを送っていったりすれば、少なくても30分、長ければ2時間もラジオを聴いている事になる。
昔はパーソナリティのトークはAM、音楽などはFMと決まっていたものだが、昨今のローカルFMはほぼ昔のAMラジオのように、パーソナリティが延々としゃべり続けたり、Xやメールからのおたよりを読み上げたりと、コミュニティ放送に様変わりしている。
ラジオCMもさかんだ。運転中なのでCMを聴いてすぐ何らかのアクションが起こせるわけではないが、ラジオショッピング番組は非常に盛況である。車からの流れで、手仕事中に聴いている人も多いのだろう。
ラジオの良さは、受信器としてのラジオだけで聴けるところである。radikoだとスマートフォンが占有されてしまうし、結局はネット回線からのライブストリームなので、データ通信容量を消費する。屋外で聴くなら、乾電池や内蔵バッテリーだけで長時間再生できるラジオ受信器のほうがいい。
さらに今年に入って大きな地震もあり、避難について考えるようになると、情報源としてのネット1本頼りに危うさを感じるようになった。4G/5G網が大丈夫かという問題と、情報の真偽判断にはある程度のリテラシーが必要になる。ネットとは別に、免許制度である放送事業者からの精査された情報も、放送波直接受信という形で持っておいた方がいい。
そういう意味では、スマホにラジオチューナーを内蔵した「ラジスマ」は、あんまりいいソリューションとは思えなくなってきた。1つのデバイスに情報源が集中するより、分散させた方がいい。
またラジオは目が占有されないので、手作業していても情報が取得できるというメリットがある。避難生活でやらなければならないこと、例えばひたすら穴を掘るとかゴミを集めるといった作業中でも、情報から断絶されない、孤独に苛まれないという良さがある。いちいち操作が必要なら、作業は進められないだろう。
もう1つ直接受信のいいところは、複数箇所でラジオを受信して音を出していても、ズレがないところである。なぜならば、ラジオは未だアナログ放送だからだ。テレビ放送はデジタル化して20年が経過したが、ラジオはそのままである。デジタルラジオ放送は、衛星放送として行なわれている。
災害持ち出しリュックに古いラジオが入りっぱなしという家庭も結構あるはずだ。2028年までには、日本全国でAM放送を停波してFMへ移る局も結構出てくるだろう。お住まいの地域の移行タイミングで、ワイドFM対応のポータブルラジオや、ラジオ内蔵Bluetoothスピーカーなどに買い換えるのはいいかもしれない。乾電池駆動だったり、防水仕様だったり、ワンセグが付いていたりと、様々なタイプがあるはずだ。そのタイミングで新モデルが登場するかもしれない。
AMラジオの深夜放送を聴きながら受験勉強したという人は、いくつぐらいまでが下限だろうか。まあラジオを聴いている間は勉強してないというのがお約束なわけだが、深夜0時過ぎの記憶として、思い出す人も多いだろう。ああした習慣は今の子ども達にはなく、世代を超えてパーソナリティの思い出を共有できるという世界にはもう戻れない。
だが、トークを聴くというAMラジオの文化は、FMに持ち越される。今はAMとサイマル放送だが、放送システムが変わることで、内容や立ち位置も変わるだろうか。AM停波後のラジオの世界もまた、ちょっと楽しみになってきた。
【訂正:2024年2月15日午後2時】放送大学のFM放送について記述に誤りがあったため訂正いたしました
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
4
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
5
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
6
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
7
Anthropic、独自の“創薬活動”に着手 社員1人のバイオ企業を買収、小児難病の治療薬研究を進める
-
8
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
9
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
10
「対策を後回しにしたサーバが軒並み狙われている」 相次ぐ不正アクセスにラックCTOが警鐘
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR