Innovative Tech
他人がGPT-4とやりとりしたテキストを盗む攻撃 成功率50%以上 イスラエルの研究者らが発表
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
イスラエルのネゲヴ・ベン・グリオン大学に所属する研究者らが発表した論文「What Was Your Prompt? A Remote Keylogging Attack on AI Assistants」は、大規模言語モデル(LLM)を活用したAIチャットbotが生成するテキスト回答を復元するサイドチャネル攻撃を提案した研究報告である。攻撃者は、AIチャットbotが応答する際の通信データを傍受することで内容を復元して他人のやりとりを盗み出すことができる。
攻撃方法としては、まずユーザーとLLMの間の暗号化されたパケット通信を傍受するところから始まる。次に、傍受したトラフィックから、LLMの応答メッセージの位置を特定する。応答メッセージが特定できたら、次に各メッセージサイズの変化を分析することで、応答に含まれるトークンの長さを推測する。
その後、抽出したトークン長シーケンスを、文章などの意味のあるまとまりに分割(セグメント化)する。分割したシーケンスを、2つの専用LLMからなるモデルに渡して、応答のテキストを推論する。
1つ目のLLM(LLM A)は、最初のセグメントをトークン長から復元するように設計している。2つ目のLLM(LLM B)は、前のセグメントの推論結果をコンテキストとして用いながら、残りのセグメントを順次復元するように設計している。選ばれたセグメントを順につなげることで、完全な応答の推論結果を得る。また、攻撃対象のAIチャットbotが生成した大量の応答例を学習データに加えることで、推論モデルの精度をさらに高められる。
有効性を評価するため、米OpenAIや米Microsoft、米Googleなどの主要ベンダーが提供するサービスを対象に実験を行った。まず、GPT-4で生成した1万件の応答を用いてテストを行った結果、最初のセグメントについて、54.5%の攻撃成功率を達成。さらに、最初のセグメントの28.9%を非常に高い精度で復元できた。応答全体での攻撃成功率は平均37.96%であった。
次に、提案した攻撃手法がノイズが多い現実世界でも通用するかを確かめるため、OpenAIのChatGPT(GPT-4)とMicrosoftのCopilotの2つを対象に実験を行った。これらのサービスは、ブラウザアプリ、マーケットプレース、APIなど複数の形態で提供している。
結果、応答内容を推論できることが分かった。ブラウザアプリとマーケットプレースでは30~53%の攻撃成功率を達成し、APIでは17.7%の攻撃成功率を記録した。
Source and Image Credits: Roy Weiss, Daniel Ayzenshteyn, Guy Amit, Yisroel Mirsky. What Was Your Prompt? A Remote Keylogging Attack on AI Assistants
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
8
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
9
有識者はGoogleやX、Meta、ドワンゴを名指しで批判……総務省、偽広告や誹謗中傷に発信・拡散前の対策求める
-
10
「痺れるほどにミスを繰り返す」Gemini 3.6 Flashは変わった? 公開から1週間、当初のおバカ回答を今検証する
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR