Innovative Tech
食べている“味”を無線送信→遠くにいる人の口腔内で“同じ味”復元 ケーキや目玉焼きで成功 米国チームが発表
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
X: @shiropen2
米オハイオ州立大学などに所属する研究者らが発表した論文「A sensor-actuator?coupled gustatory interface chemically connecting virtual and real environments for remote tasting」は、物理的に離れた場所にいる人と味を共有するシステムを提案した研究報告だ。一方が食べている味を別の場所にいる一方に無線伝送し、同じ味を再現するアプローチだ。
システムは「e-Taste」と呼ばれ、味を感知する「電子舌センサー」と、その情報に基づいて味を再現する「アクチュエーター」の2つの主要部分で構成している。
まず、電子舌センサーが食べ物や飲み物の化学物質を検出する。検出対象は5つの基本的な味を代表する化学物質で、甘味(グルコース)、酸味(クエン酸)、塩味(塩化ナトリウム)、苦味(塩化マグネシウム)、うま味(グルタミン酸)である。センサーはこれらの化学物質の濃度を測定し、その情報を無線通信で遠隔地にあるアクチュエーターに送信する。
送信先であるアクチュエーターシステムは、受信した情報に基づいて遠隔地の味覚情報を再現する装置だ。システムの中心は電磁ミニポンプで、コイルに電流が流れると磁場が発生し、それによって磁石が振動。この振動が薄膜を変形させ、水などの基本液体をマイクロ流体チャネルへと押し出すことで口腔内に届けられる。
チャネル内には味覚物質(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を含んだヒドロゲルが埋め込まれており、液体がこのチャネルを通過する際に味覚物質が液体に溶け出す。これらのチャネルからの液体が混合ゾーンで合流することで、複雑な味の組み合わせを生成できる。液体の流れを制御し、チャネル内での停止時間が長いほど、より多くの味覚物質が液体に溶け込み、濃度が高くなる。
この仕組みにより、さまざまな味を混合して複雑な味の組み合わせを作り出すことが可能となる。研究チームは実験において、レモネードやケーキ、目玉焼き、魚のスープ、コーヒーなど、異なる食品の特徴的な味をデジタルに再現し、参加者による識別テストを実施した。その結果、参加者たちは86.7%という高い確率で、システムが生成した味から正しく食品の種類を識別することに成功した。
この研究成果は、科学雑誌「Science Advances」に2月28日付で掲載された。
Source and Image Credits: Shulin Chen et al. ,A sensor-actuator-coupled gustatory interface chemically connecting virtual and real environments for remote tasting.Sci. Adv.11,eadr4797(2025).DOI:10.1126/sciadv.adr4797
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
7
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
10
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR