Innovative Tech

“認知症”リスクが20%減──「帯状疱疹ワクチン」接種が認知症発症に与える影響 28万人以上を調査

Innovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

X: @shiropen2

 米スタンフォード大学などに所属する研究者らが発表した論文「A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia」は、帯状疱疹ワクチン接種が認知症発症に与える影響に関する新たな研究報告だ。研究チームは、帯状疱疹ワクチン接種が認知症の発症リスクを有意に低減させることを示す証拠を提示した。

論文ページの一部

 ウェールズでは2013年9月1日から帯状疱疹ワクチン接種プログラムを始めた。1933年9月2日以降に生まれた人々が接種対象となり、それ以前に生まれた人々は生涯にわたって接種対象外とされた。この明確な誕生日による区分を利用し、研究チームは回帰不連続デザインという統計手法を用いて、大規模な電子健康記録を分析。28万2541人の成人を対象に実施した。

 研究チームはまず、資格基準日のわずか1週間の違いによってワクチン接種率が0.01%から47.2%へと劇的に上昇することを確認した。この接種率の違い以外に、誕生日がわずか1週間違うだけの集団間に系統的な差異は存在しないと考えられる。この状況を利用して研究チームは、帯状疱疹ワクチン接種と認知症発症の間の因果関係を探った。

 分析の結果、帯状疱疹ワクチンを接種した人々は、7年間の追跡期間において新たに認知症と診断される確率が3.5%ポイント減少したことが明らかになった。これは接種していない人に比べて相対的には20.0%の減少に相当する。

帯状疱疹ワクチン接種が認知症発症率に与える影響 7年間の追跡では約3.5%ポイント(三角形のマーク)の有意な減少効果を確認

 特筆すべきは、この効果が男性よりも女性において顕著であったことだ。研究チームはイングランドとウェールズの死亡証明書データを用いた別の分析でもこの結果を確認している。

 研究チームは帯状疱疹ワクチン接種が認知症リスクを低減させるメカニズムについても探索的な分析を行った。考えられるメカニズムとしては、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化の減少を通じた経路と、ウイルスとは独立した免疫調節効果を通じた経路の両方を示唆した。

Source and Image Credits: Eyting, M., Xie, M., Michalik, F. et al. A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia. Nature(2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08800-x

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

Innovative Tech

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

山下裕毅
山下裕毅

2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR