小寺信良のIT大作戦
AIで調べものを済ます「ゼロクリック検索」は、Webメディアを“破壊”するのか(3/3 ページ)
人間による「報道行為」はどこまで必要か
もう少し、メディアの先を考えてみよう。
現時点ではまだ動画や音声の情報は、AI検索できない。ただこれももう、時間の問題だろう。AIがテキスト情報を食い尽くしてしまったあとは、YouTubeやTikTokといった動画系サービスにある、誰でも見ていい動画が格好の情報源となる。テレビやラジオ番組も、無事では済まないだろう。
ニュースの現場、という視点で考えると、ニュースが発生する現場は常にリアルの現実世界である。そこに取材者が行って、現場を写真や動画に収めたり、話を聞いて録音したりする。それを編集したりテキスト化したりして、ニュースという形になる。
それなら、このニュースの現場情報をAIが直接食えばいいのではないか。取材した動画や音声などから、AIがニュースを生成するという未来もあり得る。取材者は、本当に取材するだけだ。
すでに世の中には、多くのカメラやセンサーが張り巡らされている。個人が持つスマートフォンもそうだし、監視カメラやドライブレコーダ、ロボット掃除機まで合わせれば、相当な数になる。自動運転が普及していけば、多くの自動車が有力な情報ソースとなる。映像や音声、温度、移動速度、これらの情報をAIに食わせれば、人間の取材では不可能なタイプのニュースが生成できるだろう。
ただニュースは、客観的事実だけをまとめればいいというものではない。実は見落とされがちなポイントは、主観である。膨大な取材データのうち、どこをどれぐらいの比重で切り取ったのか、だ。ここが、全部をまんべんなく取り入れて短くまとめればいいという、AIサマリー的なものとは根本的に異なるところである。
したがって、AIが直接ニュースを生成するようになっても、人間の主観的な意見というのは、AIにはできないニュースとなる。さらに突き詰めれば、誰が切り取ったのか、が重視されるようになる。人間に影響力を持つ人間、すなわちインフルエンサーは、AIがとって変わることはできない。AIにいくら個性やキャラ付けを行っても、正体は常に“anonymous”でしかない。
最終的には、客観的なニュースはAIが、主観的なニュースは人間が、と分かれることになるだろう。問題は、その主観的なニュースをAIがまとめてしまうと、主観が落ちてしまうことである。そこがAIの限界ということになるだろう。
AI検索が主流になれば、メディアの形やあり方は変わるかもしれない。だが情報を発掘してAIに食わせる役割は人間が行うことになるだろうし、人間の意見というものがニュースバリューを失うということもないだろう。情報を見るのは人間であるということが、変わらない限りは。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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